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“会社勤めのアニメーター”がSNSでアニメを発信する理由―コマ撮り動画職人・篠原健太【インタビュー】

「2Dのアニメと、3Dのストップモーション・アニメをつなぐ架け橋になれると嬉しいです」

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“会社勤めのアニメーター”がSNSでアニメを発信する理由―コマ撮り動画職人・篠原健太【インタビュー】
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■さまざまなSNSを活用して仲間と出会う


――実制作だけでなく「発信」も意識されているように感じます。ツイッター以外にも多くのSNSで投稿されていますね。

篠原:InstagramやTikTok、note、Facebook、LINEを使っていますが、最も力を入れているのはツイッターとnoteですね。

――各メディアで、投稿するコンテンツに違いはありますか?

篠原:そこまで意識しているわけではないのですが、Tik Tokは音声を使う前提なので、レムとラムが音に合わせて会話する動画を撮ったりしています。

「レムラムの喧嘩?」



あと、ファンとより深く交流したくてLINE公式アカウントを作ってみました。190人くらいが友達登録をしてくれました。

――文章主体のnoteはどういう目的で使われていますか? アニメーターはビジュアルで表現することがメインだと思いますが。

>篠原さんのnote

篠原:コマ撮りのメイキングや解説を発信したくて、最初はYouTubeなど動画にするのが一番いいと思っていたんです。
ところが、喋りながら制作風景を撮影するとなると、機材も必要ですし、自分も「出演」しないといけないので、けっこうハードルが高いなと。

そんな時、たまたまnoteというブログサイトのことを知りまして、これまでやってきた「コマ撮りアニメーション」について、多くの人に知ってもらいたいと、noteに文章を書き始めました。

人に伝えることは自分の勉強にもなりますし、たとえば「ボコボコにしたレッドブルさんから、お仕事が来たよ」といった近況報告の記事を出すと、みなさん面白がって読んでいただける。
そういった「ストーリー」をみんなで共有して楽しんでもらうのも大事だなと思っています。

――作る過程も含めてエンタメというのは、今の時代のクリエイターに合った表現方法ですね。

篠原:はい。今は誰もが発信できる時代ですし、何かを作りたい人が増えていると感じます。
そういうクリエイター同士が繋がっていく必要があるんじゃないかと思っています。

――篠原さんの作品を見て、「アクション・フィギュアでアニメが作れるんだ」と多くの人が気づき、「自分もやってみよう」という人が増えたのではないでしょうか。

篠原:よく「コマ撮りをやりたくなった」とか「作ってみました」というメッセージをいただくようになりました。
もちろん、僕以前にも市販のフィギュアでコマ撮りアニメを作っていた人はいましたが、現役アニメーターが創り方やメイキングを発信することは、あまりなかったのかもしれません。SNSで気軽にやりとりできるようになったとき、たまたま僕がそういうことを始めたということだと思います。

――アニメのキャラが、そのままの姿で立体として動くというのは、ある意味本当の2.5次元ですね。

「鉄腕アトムのガッツポーズ」


篠原:「コマ撮りアニメ」は2Dのアニメと比べて、一般の人には馴染みがないと思いますが、アニメキャラクターがそのまま立体になったフィギュアをアニメーションとして動かすのって、すごく面白いことだと思うんですよね。
僕の作ったフィギュアのコマ撮りアニメが、2Dアニメから3Dのコマ撮りアニメへの架け橋になればいいと思っています。

■コマ撮りアニメの「大道芸人」になりたい


――話はさかのぼりますが、そもそも篠原さんが「コマ撮りアニメ」自体に興味を持ったきっかけは?

篠原:もともとジブリアニメが好きで、絵の方の「アニメ」を志望していましたが、専門学校に入ると、周りは絵が上手い人ばかりでした。
「こんな人たちの中では、自分は埋もれてしまうな」と思っていた時、授業でユーリ・ノルシュテインの切り絵のストップモーション・アニメと出会いまして、「こういうアニメもあるんだ」と思ったんです。
作画のアニメだと、何十人ものスタッフで制作しますが、これだったら1人でも作れるかな、と作り始めたのが最初です。

――ドワーフさんに入って、コマ撮りアニメを始めた時の感想は?

篠原:絵を描いて動かすのと、物を動かすストップモーション・アニメーションは全く違う別の職業だと感じました。
たとえば、絵のアニメだと、手が伸びたりといった変形もできますが、立体になると、それが「固物(かたもの)」なので変形できない。やはり絵のアニメと比べて自由度が違うなと思いました。

――「コマ撮り大道芸人」と名乗られておられますが、これはどういう想いがあるのでしょうか?

篠原:僕の師匠である先輩アニメーターの峰岸裕和さんは、もう40年くらいストップモーション・アニメーターをされている方なんですが、その峰岸さんの印象が「大道芸人」みたいだなあと思いました。アニメーターは、お客さんを喜ばせるエンターテイナ―性を大事にしようという感じです。

僕もエンターテイナーを目指しているので、肩書は「大道芸人」にしようと思って名乗っています。でも、キャッチフレーズはコロコロ変えているので、また変えるかもしれません(笑)。

■会社員アニメーターがSNSでアニメを発信する理由


――会社の仕事と並行しながら、個人のコマ撮りも発表し続けるのは大変だと思いますが、篠原さんを動かしているモチベーション、原動力はどこにあるのでしょうか?

篠原:「アニメーター人生を面白いものにするために何をしたらいいか」というのがモチベーションのひとつ。次に、SNSに出した時に、喜んでくれる人がいることが原動力ですね。

お客さんのリアクションを直接もらえるって、クリエイターにとってすごくモチベーションが上がることで、それは僕のような「コマ撮りアニメーター」に限らず、2Dのアニメのアニメーターにも、あるいはクリエイター全般にもいえると思います。

クリエイターと一般の方が交流できる仕組みがもっとあれば、クリエイターにとって、よりよい環境になるんじゃないかと思います。


――なるほど。ちなみに同じ世代でライバルとして意識しているクリエイターはいらっしゃいますか?

篠原:あまりいないんですが……実は米津玄師さんって、同じ専門学校(大阪美術専門学校)の後輩なんです。
多分会ったことはあるんです。全然記憶がなくて、後に友だちから教えられて知ったんですが、同じ学校だっただけに、そういう人が大活躍していると、刺激されたりしますね。

――共演してみたいですか?

篠原:ぜひ、PVとか参加させていただきたいです(笑)。

■ファンとの出会いを大切にして、面白いことができる新しい枠組みを作りたい


――今後、力を入れたいこと、こだわっていきたいことはありますか?

篠原:たとえば、NHKの「どーもくん」やNETFLIXオリジナルシリーズの『リラックマとカオルさん』ではアニメーションをドワーフが担当させていただいていますが、もちろん「どーもくん」はNHKのキャラクター、「リラックマ」はサンエックスさんのキャラクターですから、それを見てドワーフという会社や、そこに属するクリエイターに対するファンになる方は、あまり多くない。

そういう意味では、やっぱりオリジナルのストップモーション・アニメを作れるようになりたいですね。
オリジナルキャラクターなら、もっと情報を自由に発信できて、臨機応変に対応できますし。
そのためには、やはりドワーフという会社のファン、そして我々クリエイターのファンを増やした方がいいんじゃないかなと思っています。

今はファンとの出会い、仲間づくりから始めている段階ですが、そういう面白いことができる新しい枠組みをつくっていきたいと思っています。
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《山科清春》

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