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“会社勤めのアニメーター”がSNSでアニメを発信する理由―コマ撮り動画職人・篠原健太【インタビュー】

「2Dのアニメと、3Dのストップモーション・アニメをつなぐ架け橋になれると嬉しいです」

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“会社勤めのアニメーター”がSNSでアニメを発信する理由―コマ撮り動画職人・篠原健太【インタビュー】
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■フィギュアによるアニメーションが大反響


――発信していく中で、一般のファンの方だけでなく、メーカーさんと交流が生まれていくことも面白い動きですね。

篠原『ストリートファイター』のリュウが「レッドブル」の缶をボコボコにするアニメーションを公開したところ、世界中で拡散されまして、カプコンさんのストリートファイター統括プロデューサーの小野義徳さんからもリアクションをいただきました。

「リュウVSレッドブル」



さらに、レッドブルさんにも喜んでいただき、大量の商品を送っていただいただけでなく、この動画をきっかけに「何か作ってください」とお仕事の依頼までいただきました。
レッドブルさんとのコラボレーションは配信中で、こちらも多くの人に反響をいただきました。




『仮面ライダーウィザード』がポテトチップスを食べるというアニメーションでも、販売元のカルビーさんがツイッターで反応してくださいました。
『ウィザード』のファンに「布教ありがとう」って感謝されたり、出演者の奥仲麻琴さんにコメントをいただいたり。

「仮面ライダーウィザードがポテチ食べる」


フィギュアメーカーのバンダイスピリッツさんにも喜んでいただけたので、今後何か新しいことをご一緒させていただけたらいいなと思っています。


他にも、『ソードアート・オンライン・オルタナティブ・ガンゲイル・オンライン』のレンというキャラクターのアニメーションに、原作者の時雨沢恵一先生にお褒めいただきました。

レンの射撃訓練


こうやって、メーカーさんや作者の方に褒めていただいたのは、僕自身もすごく嬉しかったのですが、フォロワーさんも一緒に喜んでくれたのがもっと嬉しかったですね。

――たとえば、企業から「このフィギュアを使ってくれ」というようなことはありますか?

篠原:もちろん、自由にアニメーションを作らせていただいたり、面白い企画でしたら喜んで受けいたしますが、「お仕事」になってくると、好きなように作れないという難しいところも出てきます。

自分に嘘をつかないといけないとなると辛いので、そこは今まで通り「自分に正直に」を守って発信していきたい。そこはやっぱり貫いていきたいですね。
そういった時にファンの方がいてくださることで、強くなれるし、場合によっては仕事を選べるようになるかと思います。

――そういえば、同姓同名の『彼方のアストラ』『SKET DANCE』のマンガ家の篠原健太先生もツイッターで称賛されていいましたね。

篠原:篠原先生のことは同姓同名――正確には僕の方は「原」の字の点がないんですが――ということでずっと意識していました。その篠原先生にお褒めのコメントをいただき、すごく嬉しかったです。
もしご縁があれば『SKET DANCE』や『彼方のアストラ』のフィギュアでアニメーションを作ってみたいですね。

■「コマ撮りフィギュアアニメ」実践編


――市販のアクション・フィギュアでも、プロの手にかかるとこれだけのものが出来るんだと新しい可能性を感じました。作り方を簡単に教えていただけますか?

篠原:ストップモーション・アニメを始めるときに、最初のハードルはやはり機材だと感じるかもしれませんが、現代では高性能カメラが比較的安価に入手できるようになりましたし、実はスマホが1台あれば撮れるんです。敷居はそんなに高くないと思います。

フィギュアを支えるのに「タンク」という道具を使っています。

タンク
これは市販されてないんで、自分たちで作ります。このタンクのアームの先に強力な両面テープでフィギュアを貼りつけて撮ります。

「タンクの使い方!」


撮った映像から、タンクを消すのはAdobeの「アフターエフェクト」というソフトで消しています。


――1コマずつ動かしていくのは、途方も無い作業ですね。秒数などを計測しながら撮影していくのでしょうか?

篠原:撮影はパソコンで動きを確認しながら行います。僕は「ドラゴンフレーム」というストップモーション・アニメ用のソフトを使っています。
趣味でアニメを撮る場合は、頭の中で動きを考えて、厳密に何コマと考えず、その時その時で、気持ちいい動きを探っていくことが多いですね。

――たとえば「歩く」「ジャンプする」といっても、すごく複雑な全身の関節の動きがありますね。

篠原:ええ。頭の中で考えただけでは全然うまくいきません。「コマ撮りアニメ」をするようになって、人間の身体のリアルな動きをより深く観察するようになりました。

「ホームズが歩く!?」


――鎖を回す軌道とか、物が落ちるといった物理法則とかもリアルですね。

「ガンダムハンマー」


「モーニングスターを回す鬼化レム」


篠原:撮影中もわからなくなったら「こうかな」と自分の身体でやってみたり、動画で撮ってそれを参考にしたりもします。

――キャラクターのクセ、性格のようなものもよく再現されていますね。

篠原:あまりキャラの性格付けに合わないような変なことをさせないように気をつけています。
でも『仮面ライダーウィザード』がポテチを食べるとかは、みんな面白がってくれましたね。あれは元のキャラの性格とは無関係ですが、カッコいいライダーがリラックスしてポテチを食べてるという「ギャップ萌え」みたいな面白さもあるかなと。

――動画のストーリーを考えるうえで意識しているのは?

篠原:「1.短い尺でわかりやすい」「2.オチがある」「3.下品ではない」……この3点は気をつけています。

――たとえば、『名探偵コナン』がオーバーヘッドキックをする動画は、どのように撮影されたんですか?

「江戸川コナン」


篠原:オーバーヘッドキックの時には、本当はもっと足を上げたいのですが、フィギュアの仕組み上、ここまでしか曲がらないので、身体の動きでカバーしました。
フィギュアの可動範囲によって、できるポージングが変わってきますので、そのフィギュアが出来ない動きや姿勢は、ストーリーの中に入れないようしています。


宙に浮くオーバーヘッドキックは、タンクを駆使して表現
関節がラチェットのようになっていて、カチカチカチと動くタイプは、実は動きの段階が細かく表現できないんで、関節がスムースに動くものが使いやすいですね。

――コマ撮りで使うキャラクターのフィギュアはどのように選んでいますか?

篠原:基本的には僕が知っているキャラクター、好きなキャラクターを選んでいます。
フィギュアショップで実際に商品を見て、関節の可動範囲や付属パーツはどれくらいあるかなどを確認しながら、「この表情だったら、こんなお話ができるかな」とか、その場で考えながら選んでいます。

――これから使ってみたいキャラクターはありますか?

篠原:いろいろやりたいキャラクターはあります。「ダウンタウン」のフィギュアとかもやってみたいですね。リアルな人間って面白いなと思います。


→次のページ:さまざまなSNSを活用して仲間と出会う
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《山科清春》

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