マッドハウスの作品はなぜ海外からも人気? 「よりもい」いしづか監督&中本Pに聞く【インタビュー】 4ページ目 | アニメ!アニメ!

マッドハウスの作品はなぜ海外からも人気? 「よりもい」いしづか監督&中本Pに聞く【インタビュー】

国内のみならず、世界に通用する作品を作り続けてきた制作スタジオ、マッドハウス。その魅力と活力の源はどこにあるのか。2018年に話題となり大ヒットした『宇宙(そら)よりも遠い場所』を送り出した中本健二プロデューサーといしづかあつこ監督に話を聞いた。

インタビュー スタッフ
マッドハウスの作品はなぜ海外からも人気? 「よりもい」いしづか監督&中本Pに聞く【インタビュー】
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――ファンの方からは「素晴らしいアイディアはどのように生まれるのですか?」という質問も届いていますが、そういう打合せの積み重ねがアイディアに結実するという感じでしょうか。

中本
アイディアの原点とは常に誰かの思いつきや思いこみから始まるものだと思います。それをいい形に結びつけることができるかどうかは、そのあと皆で意見を言っていくうちに見えてくるものですね。

いしづか
皆で話をするといいところは、ひとりだと出てこないアイディアも、何人かで話していると思わぬところから出てきたりするところですね。

――中本さんはプロデューサーとして、良い打合せになるように心がけているところはありますか。

中本
打合せって詰まる時は詰まって、シーンとなる時があるんです。そういう時は何か言ったほうがいいんだろうなと思いつつ、むしろ置いてあるお菓子をボリボリ食べちゃったりして(苦笑)。

まあでも場の雰囲気とかはやっぱり大事ですよね。自己主張の激しい人たちばかりで打ち合せなんかしていると、ただギスギスしてしまうだけで良い方に転がらなかったりするのはよくあることなので、そういうのは気にはしますね。

いしづか
めちゃくちゃ食べてますよね(笑)。面白くなってつい噴き出してしまいます。
私や花田さんが黙り込むと、突然横でボリボリ音を立て始めるんですよ。無言の時間が長いので、妙な緊張感が生まれてしまっていたのかもしれませんね。

でも、黙っているのはただ行き詰まったからではなくて、そのアイディアがうまくいくかどうかを頭の中で組み立てている時でもあるんです。
だからこちらとしては10分でも長くはないような気持ちだったりして。

――そういう打合せはどれぐらいの間隔で、どれぐらいの時間やるのでしょうか?

中本
オリジナル企画の最初の頃だと月1回ぐらいのペースから始まりますね。それがだんだん近づくにつれて週1ペースになっていく感じです。
1回の時間は決まっているわけではなく、早い時は1時間くらいで終わることもあれば、5、6時間かかってしまうこともあります。何について話し合っているのかに大きく左右される感じですね。

――オリジナル企画の面白さはどこにありますか?

いしづか
縛りがない状態でのスタートになるので、「自分たちが本当にチャレンジしたかったもの」とか「現時点で模索しているもの」とか、そういうことに積極的に挑戦させてもらえるのが、一番の面白みかなとは思いますけどね。
ただ、当然ですけれど、その分の怖さもあります。

――怖さですか。


いしづか
やっぱり白紙の状態から生み出すので、産みの苦しみもそれだけ大きくて、一生懸命にならざるを得ないんです。
そこには本当に人生かけてやるぐらいの一生懸命さが必要で、一生懸命になればなるほど、得られる結果が怖くなるんです。

求める結果が得られなかった場合、もっと言えば大失敗に終わった場合、そこに懸けてきたもの全てが否定されてしまうんです。「本気を出していないのだから仕方ない」というずるい言い訳が一切利かない状況に、自ら飛び込んで行くんですね。

その恐怖と戦いながら作っていくのがオリジナルなので、その戦いは“濃い”んです。
そうして戦い抜いた先で、『よりもい』のように、「感動した」という感想が返ってきた時の喜びは、もう本当に凄まじいものがあります。賭けたものが大きいからこそ得られるものも大きくて。

だから、その“濃さ”こそがオリジナル企画の中で挑戦していくことの醍醐味でもあるのかなと思いますね。

中本
作っている僕ら自身が、登場人物たちがどういう最後を迎えるかわからない状態で、手探りしながら作っていくのがオリジナルなんです。
その見えない結論に向けて、作り手もキャラクターも視聴者も一緒に旅をしていく感覚がオリジナルの面白いところだと思います。

原作ものと大きく違うのが、この先の展開を知っている人がいない、いろいろと先を想像することが出来ても、実際にどうなるかは見てみないと誰もわからないというところですね。
そんなふうにみんな等しく一緒に楽しめるというのもオリジナルならではの楽しみ方だと思います。

――アニメ業界で働くには何が必要でしょうか。もちろん職種によっても違うと思いますが。

中本
どの職種に関わるかもありますが、やっぱり、よく周りが見えているとか、気が利くとか、頭の回転がいいとかそういうのを持っているかいないかは非常に大事なことですね。
特に制作に関して言えばそこは必須だと思います。

演出に関して言えば、才能ということになるんでしょうが、それって周囲から見ていると実際やってもらう前からある程度わかるものなんです。
なりたいと言っているだけでやってはいけない仕事だと思いますので、周りの人に認めてもらえるだけの才能と、もちろんそのためにちゃんと努力し続ける人が立派にやっていける方なのだと思います。

――いしづかさんは、演出家に求められるものって何だと考えていますか?


いしづか
単純に演出の仕事をやるのであれば、身につけた基本的なスキルがあればできると思うんですね。
ただそこから先、本当に人を感動させることのできるクリエイターを目指すとなると、それだけじゃ全然足りないんです。

そこから先に行くには、「いかに自分を敵にできるか」とか「世の中のことをどれだけ普段から見ているか」「人を喜ばせるためにはどうしたらいいのか」、そういうことが四六時中頭の中にあるようでないとダメなんです。

さらに、演出家として集団の中で活躍していくためには、自分と戦う強さと、組織として人を動かしていく柔軟さ、両方が必要になってくるのかなと。

―― 自分を敵にするというのは、どういうことなんでしょうか?

いしづか
自分にはできないことだらけなんだというのを自覚しないと、他者が見て感動するものは作れないんじゃないかと思うんです。
例えば自分ひとりで机に向かって、何かアイディアを考え出したとします。その時はよくできたと感じてもすぐに客観的になって、自分が考えたことなんてそんなに面白くないんじゃないかと疑えるかどうかが大事なんです。

人にアイディアの感想を聞いて、その人が「面白いね」と言ってくれたときに、自分を励ますためにそう言っているのか? 本当に面白いと思っているのか? としっかり考えたほうがいい。

まずは自分で自分にダメ出しをして、「これは励まされているんだな」とその気持ちを受け止めるか、もしくは自分を一切疑わずに「このアイディアはイケる」と思っちゃうのか、そこには大きな違いがあって。

そこをちゃんと嗅ぎ分けられるように、自分の考えを一番否定するのが自分である、という精神的なタフさが必要なんです。
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《藤津亮太》

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