――作品全体の中で、宮野さんが個人的に印象深いシーンはどこでしょう。
宮野
バスターとエディが洗車をするシーンがあるんですが、エディにとっても重要であり、僕がとても気に入っているシーンです。二人のつながりが感じられるやり取りなんですが、あのセリフは強く言ってもいけないし、でも優しすぎてもいけない。一緒に向かっていこうという、親友としての語りかけでなくてはいけない。実は何回もテイクを重ねた、こだわったシーンなんです。あのシーンでエディがジッパーを下ろすんですが、僕もよくライブでジッパーを下ろすので、そこは僕との共通点かな?(笑)
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――エディはバスターのどんなところが一番好きなのだと思いますか。
宮野
バスターってすごく前向きで自信があって、時々いろんなことをごまかしながら(笑)、うまくいかなくても怖がらずに向かっていた。ちょっとずるいところもあるんですけど、そういう頼もしいところはエディにはないところだから、エディはすごく好きなんだと思います。自分はそうできないから、バスターにこっそり勇気をもらっていたんじゃないかなって。でもそんなバスターが落ち込んだ時に勇気を与えたのは、エディなんですよね。お互いのいいところ、欠けているところをわかっている二人なんだと思います。
――バスターは子供の頃に歌ステージを見て人生が変わります。宮野さんは、歌で気持ちや人生が変わったというような経験はありますか?
宮野
歌は常に僕らの周りに、いろんな形で影響を与えてくれているものだと思います。僕もみなさんと同じように子供の頃からいろんなアーティストの曲を聴いてきました。その中には、自分の人生の中での浮き沈みがあった時に聴いて、そのことがあって覚えている歌もあって。過去にちょっと切ないことがあった時、MISIAさんの『キスして抱きしめて』を聴いて、ずっと印象に残っていたんです。それがまさか、そのMISIAさんとこの作品で共演できるなんて! 僕はカタツムリとしてですけど、最後のシーンでMISIAさん演じるミーナと一緒に歌っているんですよ(笑)。一緒に歌う日が来るなんて、と感激しました。
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――バスター役の内村さんとの共演も嬉しかったそうですね。
宮野
内村さんが演じられたバスターの声を聞いたとき、「これ本当に内村さん?」って思うぐらい、バスターそのものだったので、びっくりしましたね。お笑いのレジェンドで、アクションもできて、映画監督でもあり、俳優として出演もして、さらに声優もあれだけこなせる。すごいなぁって思いながら内村さんのお芝居を聴かせていただきました。
僕は『やるやら』(テレビ番組『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』)世代なので、“マモー・ミモー”で育ちましたから(笑)。あだ名がマモなので、やはり内村さんがやっていたマモーというキャラクターはすごく印象に残っているんです。僕は子供の頃からお笑い番組が大好きなんですが、イルミネーション・エンターテインメント作品のお仕事で、お笑いの方たちに会える機会が多いんですよ。『ロラックスおじさんの秘密の種』で志村けんさん、『怪盗グル―』シリーズで笑福亭鶴瓶さんにお会いできた。その後も『ペット』でバナナマンさん、そしてこの『SING/シング』で内村さんですから。子供の頃は志村さんの番組をほぼ全部見ていたような子供でしたから、夢のようですね。
――最後に、日本語吹き替え版『SING/シング』の見どころを教えてください。
宮野
素晴らしいオリジナル版があるうえで、同じ役なのに演者が変わるとこんなにも変わるんだ、日本語吹替版ならではの良さが出てくるんだなってことをすごく感じてもらえる作品だと思います。歌まで日本のキャストで吹き替えるって、かなり攻めた企画ですからね。吹き替えでも最高のエンターテインメントを作れたのはすごく嬉しいことですし、絶対に面白いという自負があります。字幕版でも吹替版でも、何度でも見ていただきたいですね。
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