『電脳コイル』と長く付き合う 「ROMAN ALBUM 電脳コイル」
アニメは本来作品のみで語られるもの。作品の価値は、作品の存在によってのみ評価されるべき、しばしばそんなことを考える。作品に余計な説明は不要、というわけである。
昨年、そんなことを考えさせた最大の作品が、『電脳コイル』だ。物語の大きなポイントに謎解
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昨年、そんなことを考えさせた最大の作品が、『電脳コイル』だ。物語の大きなポイントに謎解きが据えられているし、キャラクターの微妙な変化も出来れば事前情報なしで楽しみたい、そんな気にさせる作品だった。
一方で、作品があまりにも魅力的なため、同時に作品のさらに深い設定やクリエイターの考え方を知りたくもなる。
そんな矛盾した気持ちも呼び起させる。
番組放映後に発売されるアニメのムック本は、通常そんな視聴者のニーズに応える役割を担っている。テレビでは語りきれない情報を伝えることで、番組終了後、もう一度作品を楽しむためのものである。
3月3日に徳間書店から発売された「ROMAN ALBUM 電脳コイル」も、そうした番組を見終わった視聴者の要求をまさに満たす本である。
しかし、「ROMAN ALBUM 電脳コイル」は、その丁寧な作りと内容の深さで、これまでのムック本から一線を画している。ビジュアルと設定、スタッフへのインタビューというムック本の通常の体裁を持ちながらプラスαが存在する。
それは作品に対するこだわりと言えばいいのだろうか。例えばインタビュー、あるいは小さなはみ出し、それぞれが入念に考え抜かれた気配が濃厚なのだ。それだけに、実際のページ数以上に内容に厚みが感じられる。
個人的には、鉛筆で描かれた「大黒市全景」の地図が楽しかった。作品は作品で楽しめるのだが、それぞれの場面、場面の位置関係が判ると、今になって合点が至ったりするわけだ。
こうした小さな設定が随所に溢れており、本を読むともう一度作品を観たくなること請け合いだ。これは『電脳コイル』の作品自体の魅力もあるだけでなく、作品に携わった多くのスタッフ、クリエイターの思い入れがそこから伝わってくるためでもある。
『電脳コイル』は何度観ても面白い作品、この先10年、20年先に残っていく作品に違いない。そして、そうした長い期間ひとつの作品に付き合って行くには、作品だけではやや物足らない。
そんな時に「ROMAN ALBUM 電脳コイル」を読むと、また別の視点からもう一度『電脳コイル』観ることが出来るだろう。そして、さらにもう一度本を読み、さらにもう一度テレビを・・・作品と作品の情報のインタラクティブを繰り返すことが可能になる。
『電脳コイル』と長く付き合うために「ROMAN ALBUM 電脳コイル」は手元において置きたい、そう思わせる本だ。
電脳コイル公式サイト /http://www.tokuma.co.jp/coil/
『ROMAN ALBUM電脳コイル』
3月3日発売
定価2000円(税込)
A4版/本文144P
徳間書店
《animeanime》