アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2026年7月号には、フルアルバム『RI PATHOS』をリリースした佐々木李子が登場。
佐々木李子の道をまとめたアルバム
――まず、どんなテーマでアルバムを作りたいと考えましたか?
歌手・声優として活動を始めてから10年が経ち、自分自身と向き合うことが増えてきたんです。そこで、改めて自分を構成する「佐々木李子の道」を残しておきたいと思い、これまでの悩みや葛藤、情熱を集めたアルバムを作りたいと考えました。
――チラシ配りをテーマにした楽曲など、過去の自分にも赤裸々に触れていますよね。
最近、私を知ってくださった方にも、この1枚で佐々木李子がわかるようなアルバムにしたかったんです。当時チラシ配りをしたりなど、大変な時期もありましたが、そういう時期があったからこそ今があると思っているので、その紆余曲折や人生の分岐点を歌にして、魂を込め情熱を注いで作りました。
――1曲ごとに違ったジャンルのロックに挑戦しているところもポイントですよね。
そうですね。ロックを軸にしたアルバムにしたかったのですが、自分の歌いたいメッセージがそれぞれに違うので、それに合ったテイストのロックを選んでいきました。
――自分のなかでの一番の挑戦曲はどれでしょうか?
「魂の麻辣湯」です。遊び心あふれるテーマ性を持ちながらも、ロックとしてのカッコよさと熱量にこだわった楽曲ですし、何よりここまで麻辣湯への愛を表現したのも初めてで(笑)。ずっと歌いたかったアップテンポな楽曲に乗せてのセリフのような歌詞や、“師匠”と会話するフレーズも楽しく、弾けるような気持ちでレコーディングをしました。

――ご自身が作詞・作曲した「ひとひら」と、リード曲の「桃李成蹊」の作・編曲以外はSkipjackさんと佐藤厚仁さんが手掛けていますが、あえて作家さんを固定したのでしょうか?
そうですね。固定したほうが、アーティスト性を深く作りこめるのではないかと思ってお願いしました。同じ作家さんにお願いするのは初めてでしたが、新鮮さがありつつ統一性もある楽曲になって。いろいろな道があったけれど、それが一本の道となってこれからにつながっていくというコンセプトにもピッタリだったなと思っています。
――それぞれの曲についても教えてください。リード曲の「桃李成蹊」から。
制作当初からリード曲は、私の名前にも入っている「李」から「すもも」曲にしようと決まっていて、より佐々木李子の芯が見える曲にしたいと思っていました。ひと筋縄ではいかない人生を歩んできて、枯れそうになる時期や枝分かれしてしまうときもあったけれど、そこを耐え忍んで、やっと自分の色を見つけ、花を咲かせられたというイメージを表現しています。リード曲なので、普通のロックでは埋もれてしまうと思いましたし、ほかの楽曲とのバランスも考え、ハードコアに決めて。よりハードコアを極めている、田中喉笛さん(バンド「the bercedes menz」のメンバー)に曲をお願いしました。実際に上がってきた曲を聞いてみると、自分のいままでを呼び起こしつつ、過去が花を咲かせ実をつける栄養になっていると感じられました。聞いた皆さんの人生にも重ねていただきたいという思いも込めて歌いました。
――「桃李成蹊」はミュージックビデオ(MV)もクールですね。
「冬木立」をテーマにしたMVになっています。咲きたいのになかなか咲けずにもがくようなシーンもあって、世界観に入り込むことができましたし、退廃的な雰囲気や、モノトーンから一気に鮮やかなすももカラーになるところもお気に入りです。
――「花邑 -Hanamura-」は、実在する日本酒(秋田の酒蔵・両関酒造が作る「花邑」)と重ねた楽曲です。
努力は報われるのかと考え、孤独を感じながらも、その先に希望を見出した私と、熟成されて一滴になる日本酒に近しいと思って。この曲を初めて聞いたときに報われたと思って泣いてしまったくらいなんです。酔いしれるような4分の5拍子が取り入れられていて、まるで日本酒の気持ちが入り込んでくるような不思議な曲です。
――「オランジェット」は、声優と歌手の二面性をうたっているんですね。
歌手か声優かどちらなのかを聞かれることも多くて。私個人としては、どちらも全力なので、それをはっきりと宣言した曲になっています。キャッチーなフレーズも取り入れ、それでいてクールさやキメも入っている。楽曲からも二面性を感じていただきたいです。
――「まるでマトリョーシカ」は、昨年末のワンマンライブが初披露でした。
佐々木李子のメタルを聞いてほしい、という気持ちから制作した曲です。自分自身と向き合ったときに、佐々木李子って何者なんだろうとわからなくなってしまうときもあり、自分の本心を伝えることも苦手で。でも、それも含めて自分自身だと思うので、そこを表現した曲を歌ってみたくて、自分をマトリョーシカに見立てました。ブレイクダウンやドロップなど、歌がなくなる部分も盛り込み、みんなでヘドバンができるような構成にしています。自分を解放させられる激しさと、その核となる自分を感じさせるような曲なんです。マトリョーシカのように全部を見せなくてもいいけれど、そのなかに本当の私がいると歌っているので、私のなかで救いになる楽曲に仕上がりました。
――「極超新星」は、壮大な曲ですね。
最初のコーラスからまぶしい輝きを届けたいと思い、とにかくエネルギッシュに歌いました。最後のフレーズから終わりを覚悟しているからこそ出せるパワーと、最後の最後まで輝き続けることに命を懸けている感じがして。その輝きが誰かの夢や未来につながるように、私も覚悟を持って歌いました。
――「魂の麻辣湯」は、飛び道具的な感じのナンバーです。
麻辣湯への愛だけでなく、自分の歌手人生にもつながる歌詞になっているんです。麻辣湯はレシピ通りに作ればいいわけではないし、歌も、音程があっていればいいわけではない。西遊記のストーリーに乗せたような歌詞も楽しくて、歌っていて悩みが吹っ飛ぶような気持ちでした。
――ちなみに、麻辣湯にはいつごろからハマったのですか?
初めて食べたのは5、6年ほど前で、当時は辛いものが苦手で、泣きながら食べたんです(笑)。それがだんだんと刺激を求めるようになり、いまは一番辛いものでも食べられるようになりました。大切なライブ前に食べて英気を養っていますし、この曲にもそんな中毒性があると思っています。コールアンドレスポンスや、掛け声をかけられるパートもあるところもポイントで、楽器もかなり刺激的に鳴らしていただきました。
――7曲目の「レクイエムボンファイアー」もパンチのある曲ですね。
音楽は爆発だというところを表現したくて、レコーディングでも自分の思いを発散させるように、爆発させる気持ちで歌いました。曲の展開も意外性があり、リズムも揺らいでいるような自由さがあって、いい意味で皆さんの予想を裏切る曲です。歌詞では、劣等感も感じさせるのですが、それが起爆剤となって輝けるので、そこはとくに気合を入れて歌いました。
――8曲目はスピード感のある「カミガカリ」です。
私が座右の銘としている「憑依系シンガー」を、より強く表現した曲です。ライブで盛り上がる曲を作りたいとスタッフさんとも話していて、皆さんを巻き込んで一緒に進もうという楽曲に仕上がりました。この曲は、“タオル曲”にもしたいと思っているので、ぜひライブでは皆さんもタオルを振って盛り上がっていただきたいです。
――そして「ひとひら」は佐々木さんの作詞・作曲のナンバーです。
10年前のチラシ配りを題材にした歌です。チラシ配りに意味があるのかと悩むこともあったのですが、いまでもチラシを大切にしてくださっているというお声を聞き、あのときがあっていまがあると思えて。そこから、少しひねってチラシ目線の歌詞に挑戦しました。受け取ってもらえなかったり、捨てられたりするむなしさと、一生懸命気持ちを奮い立たせる自分の、揺れる思いを表現しました。サビの繰り返しでは、何度断られても前を向いて続けていこうという思いをうたっています。チラシ配りをしていたころのことは、いま思い出しても胸がギュッとなりますが、そのつらさも、そして興味を持ってくださる方がいることへの喜びも盛り込んで作りました。最初はギターがメインでした。とぼとぼと歩くような雰囲気や、思いがあふれて泣いてしまいそうな瞬間を、ピアノを入れて表現していきました。
――タイトルはなぜ「ひとひら」にしたのですか?
チラシを1枚ずつ積み重ねることと、自分の気持ちの揺らぎを感じさせる意味を込めて、このフレーズを選びました。英語のタイトルも考えたのですが、上京したばかりで右も左もわからないころのエピソードなので、あえて飾らない言葉を選んでみました。
――ラストを飾る「道」という曲についてはいかがでしょうか?
この曲は、いまの自分と昔の自分が対話をする姿を描いています。10年前は世界が暗く見えてしまったこともあったけれど、悩みや葛藤のどれもが無駄じゃない、振り返ればどの道も美しいと思える。そんな思いを込め、自分を許し、認め、抱きしめられるような曲にしたかったんです。聞いてくださる方も温かく包み込めるような楽曲になっていたらうれしいです。
――初回限定盤のボーナストラックに「てづくりのうた」が入りますね。
この曲は、8年ぐらい前に「作曲をしてみない?」と声をかけられて、当時の自分が知っていた、アコースティックギターの簡単なコードだけで作った曲です。私にとって初の作詞・作曲楽曲で、かなり自信がない歌詞になっていますね。当時は、自分を人と比べてしまうことが多く、大きなステージで歌っている方にあこがれることもありました。それを赤裸々に歌っているので、いま聞くと少し恥ずかしいです。でも、スタッフさんからも「李子ちゃんらしい曲」と言っていただけましたし、人の心に届く曲を作りたいと思えたきっかけの楽曲なので、ボーナストラックとして入れさせていただきました。一度だけ、バースデーイベントで披露した曲なので、収録を発表したときに覚えていてくださった方がいてうれしかったです。その当時レコーディングした歌がそのまま残っているので、そこも楽しんでいただきたいです。
――アルバムタイトルの『RI PATHOS』には、どんな思いを込めましたか?
情熱や魂の揺さぶりという意味がある「PATHOS」と、小道という意味がある「Path」をかけたタイトルです。私がこれまで歩いてきた小さな道や裏道、そして寄り道も、すべてがいまの自分につながっている……そんな思いがこもったタイトルになっています。
――7月には大阪、8月には東京でのワンマンライブも決まっていますね。
大阪でのワンマンライブは初めてなので、ここから佐々木李子の世界を広げていきたい気持ちです。お客様ひとりひとりと向き合って歌を届け、それが花となって実になるような、佐々木李子の道を一緒に歩んでいきたいと思ってもらえるようなライブにしたいと思っています。
――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
私のこれまでとこれからの道を歌ったアルバムです。このアルバムを聞いて、これから先の道も一緒に歩きたいと感じてもらえたらうれしいです。これからも精一杯がんばりますので、ぜひ応援をよろしくお願いします!

Profile
ささき・りこ/11月10日生まれ。秋田県出身。小学校5年生のときにミュージカル『アニー』の主役を担当。佐々木李子としては、2016年から音楽活動をスタート。声優としても活動中で、『BanG Dream!』シリーズでは、三角初華/ドロリス役を務める。
Information
7月にかけて『RI PATHOS』発売記念リリースイベントを開催中。また、佐々木李子ワンマンライブ『RI PATHOS LIVE in OSAKA/TOKYO』を、7月20日(月・祝)に大阪・Banana Hall、8月20日(木)に東京・Zepp Shinjukuで開催。参加方法、チケット情報の詳細は公式webサイト【https://sasakirico.com/】をチェック。
『RI PATHOS』
フルアルバムは、彼女自身に紐づく事柄をそれぞれのテーマに据えた新曲10曲を収録。初回限定盤は、自身が初めて作詞・作曲を手掛けた「てづくりのうた」がボーナストラックとして入り、リード曲「桃李成蹊」のミュージックビデオやメイキングを収録したBlu-rayを同梱する。
発売中
Lantis
初回限定盤8250円(税込)
通常盤4400円(税込)

