
劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は、シリーズ屈指の重たい空気に包まれた作品だ。アクシズ落下という人類規模の危機、アムロとシャアの最終決戦――そんな張り詰めた物語の中で、妙に目を引くモビルスーツがあった。
【映像】いい趣味してるじゃないか…ホビー・ハイザック初登場シーン(38分46秒ごろ~)
それが、ギュネイ・ガス(CV:山寺宏一)が搭乗したホビー・ハイザックだ。鮮やかなトリコロールカラーに彩られたその姿は、戦場というよりも、まるでガンプラの完成見本のよう。初見で「かわいい」と感じた視聴者も少なくないだろう。
ホビー・ハイザックは、地球連邦軍とアナハイム・エレクトロニクス社が共同開発した量産機ハイザックを、用途廃止後に民間へ払い下げた機体という設定を持つ。スポーツ用や個人の趣味として使われていた存在で、いわば“戦争から一度降りたモビルスーツ”だ。
ホビー・ハイザックが登場するのは、ロンデニオンでのシャアとアデナウアー・パラヤの極秘会談を終えた直後だ。自然豊かなコロニー内で、アムロ・レイ、クェス・パラヤ、ハサウェイ・ノアが車を走らせていたところ、偶然シャアと鉢合わせる。
アムロは逃げるシャアを追い、ついには取っ組み合いにまで発展するが、シャアの言葉に共感したクェスが銃を奪い、彼と共に走り出す。そのシャアのピンチに駆けつけたのが、ギュネイ・ガスの操るホビー・ハイザックだった。
逃走成功後にコロニーの監視員から「いい趣味してるじゃないか。いくらなら売る?」と声をかけられるのも印象的な場面だ。戦争の渦中なのに、モビルスーツが“嗜好”の対象のように扱われている。その温度差がおもしろい。
さらにこの機体は、クェス・パラヤの操縦訓練にも使われる。初操縦とは思えない曲芸飛行を見せるクェスに、シャアが「才能があるようだな」と評価する場面は、後の悲劇を知っていると複雑な気持ちになるだろう。ホビー・ハイザックは、戦争の入口に立つクェスを象徴する“無邪気な器”のようにも映る。
ホビー・ハイザックが記憶に残る理由は、そのかわいらしさだけではない。重く閉塞した物語の中で、「戦争ではなかったかもしれない日常」を一瞬だけ思い出させてくれる存在だからだ。初見では色合いが目を引く機体だが、物語を見終えたあとには、あの場面の空気ごと思い起こされるだろう。
『逆襲のシャア』の中でホビー・ハイザックは、一瞬だけ垣間見えた、平和な日常を思わせる空気をまとった機体として独特の存在感を放っている。
劇場版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」は1988年3月に公開。劇場オリジナル作品として制作された初のガンダム映画で、「機動戦士ガンダム」の14年後の宇宙世紀0093年が舞台。アニメ「機動戦士ガンダム」はサンライズ制作のロボットアニメで、富野由悠季監督が手掛けた作品。“リアルロボットアニメ”という新ジャンルを開拓し、以後のロボットアニメに多大な影響を与えた。放送当時の視聴率は振るわなかったが、再放送や劇場版の公開で人気が急上昇すると、「ガンプラ」ブームも生まれた。以降のガンダムシリーズや、スピンオフなどの派生作品も多数制作され、現在も高い人気を誇る。
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