「ヒプムビ」「シャニマス」を手がけたポリゴン・ピクチュアズ代表に聞く!3DCGアニメの未来【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「ヒプムビ」「シャニマス」を手がけたポリゴン・ピクチュアズ代表に聞く!3DCGアニメの未来【インタビュー】

愛知県名古屋市で開催される新たな映画祭「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」が2025年12月12日~17日に開催。アニメ!アニメ!では、審査員を務めるポリゴン・ピクチュアズの代表・塩田周三代氏にインタビューを実施した。

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ポリゴン・ピクチュアズの代表・塩田周三代氏
ポリゴン・ピクチュアズの代表・塩田周三代氏 全 4 枚 拡大写真

●「原作モノ8割」の時代に、オリジナルアニメの入り口をどう作るか

――今回審査員として参加される「ANIAFF」に対して、塩田さんは現時点でどのような期待をお持ちでしょうか。

第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」

内容についてはまだ全然わからないのが正直なところです(※11月取材時点)。ただ、サムネイルやトレーラーなどを拝見すると、作品のバリエーションがものすごく豊かだと感じています。物語のジャンルもさまざまですし、表現手法も本当に多岐にわたっていて、純粋に「見るのがすごく楽しみ」という気持ちが一番大きいです。

もうひとつ楽しみにしているのが、「クリエイターファースト」というテーマを掲げている点です。その理念が具体的にどのような形で実践されるのかを、自分の目で確かめてみたいと思っています。

また、ピッチコンテストのような企画にも注目しています。日本のアニメーションは、世界的な潮流の中で今や最高峰、最高潮に達していると感じていますが、一方で年間に何百本も作られる作品のうち、8割くらいはマンガやライトノベルなど既存の原作に依拠しているのが現状です。

つまり、いきなりオリジナルアニメーション企画が立ち上がるハードルは高いのが現状です。そうした状況に風穴を開ける試みとして、この映画祭がピッチコンテストを位置づけているのだろうと考えています。そのうえで、実際にどんなピッチが出てくるのか、どんな動きにつながっていくのかという点には、個人的に強い関心があります。

●映画祭ごとに変わる色と、変わらない自分の審査軸

――「ANIAFF」は今回が第1回となる新しい映画祭です。国際コンペティションの審査にあたっては、新潟などほかの映画祭でのご経験や評価基準を参考にされることはありますか。

全然ないですね。というのも、私は私のやり方でしか審査ができないからです。これまでにもさまざまな映画祭で審査員を務めてきましたが、自分の根本的なスタンスが変わることはありません。変わるのは、そのフェスティバルごとにどのような作品が最終候補に残るのかという点です。そこはフェスティバルディレクターや選考に関わる方々が決める領域で、その取捨選択によって、その映画祭ならではの“色”が立ち上がってきます。私は、その最終候補のリストを受け取ったうえで、自分の琴線に触れるものを選んでいくだけです。

ただ、選考にあたって大きく変わる要素としては、どのような審査員が選ばれているか、という点があります。どの作品が最終的に選択されるかは、最終選考リストの内容と、審査員の顔ぶれによって大きく左右されると考えています。一定の評価基準はもちろんありますが、最終的に上位に行くかどうかは絶対的な尺度ではなく、相対的なものです。だからこそ、誰と一緒に審査をするのか、その組み合わせによって審査の行方が変わっていく、そのプロセス自体をとても楽しみにしています。

――塩田さん審査の際、とくにどういったポイントを見ることが多いのでしょうか。

私はポリゴン・ピクチュアズという3DCGスタジオを経営していますが、逆にこうした審査の場では「自分たちの会社では商業的に絶対に作らないようなもの」を探すようにしています。思わず「あ、なんじゃこりゃ」と声が出るような作品にすごくキュンとくるんです。「うわ、何これ、見たことない」と驚かされるものや、作家の魂の叫びがぐんぐん伝わってくるような作品や、この監督はこういうものを作らずには生きていけないんだろうなと感じるような作品に強く惹かれる傾向があります。だから、ちょっと「へんちくりん」なものが大好きなんです。

●作家性とビジネスをつなぐ、「登竜門」としての映画祭

――人材確保や育成は、どのスタジオにとっても大きな課題ですよね。今回の「ANIAFF」は人材の発掘や育成という観点から、どのような期待をお持ちでしょうか。

正直に言うと、映画祭そのものが直接的な人材育成の場になるかというと、そこは難しい部分があります。映画祭は興行とはまったく別の評価軸で成り立っていて、そこで評価されるのは世界の映画祭で賞を狙うような、作家性の非常に高い作品なんです。そうしたクリエイターを当社で積極的に採用するかというと、正直ほとんど採りません。その人にはその人にしかつくれない作品、その人だけの叫びを貫いてほしいからで、大衆に向けて売らなければならないプレッシャーの中で作ってほしいとはあまり思いません。映画祭で育つのは、そういう強い作家性を持つ人たちであり、それはそれでとても尊いことだと感じています。

一方で、映画祭には多くの人が集います。クリエイター志望の若者もいれば、プロデューサーや配給関係者、海外のフェスティバル関係者など、世界中から人が集まり、交流が生まれる。その場で感化されたり、業界側と接点を持てたり、別の形で産業とつながる道を見つける人も出てくるはずです。

また、ANIAFFが取り組んでいるピッチコンテストのような企画は、まさに商業アニメーションへの入り口になり得るものです。商業作品を作りたい人にとって、ひとつの「登竜門」になる可能性があります。そういう意味で、映画祭は作家性の高い人材を育てる場であると同時に、産業への多様なルートを提示する、多層的な場になっていくことを期待しています。

第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル
開催概要

開催日
2025年12月12日(金)~12月17日(水)

開催場所
愛知県名古屋市

会場
ミッドランドスクエア シネマ、ミッドランドスクエア シネマ2、109シネマズ名古屋 ほか

主催
ANIAFF実行委員会

共催
愛知県・名古屋市

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《河嶌太郎》

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