「ニッツ・アイランド」ゲーム映像で構成した本作は“アニメ映画”なのか?【藤津亮太のアニメの門V 113回】 | アニメ!アニメ!

「ニッツ・アイランド」ゲーム映像で構成した本作は“アニメ映画”なのか?【藤津亮太のアニメの門V 113回】

『ニッツ・アイランド』は、オンラインゲーム「DayZ」を題材にしたドキュメンタリーだ。本作の“アニメと実写の間”を行き来するような制作方法や表現手法について考えていく。

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「ショットの映画(映像)」と「カットの映画(映像)」について考えている。  
きっかけは11月30日、映画『ニッツ・アイランド 非人間のレポート』に登壇し、作品の魅力的なポイントについて少しお話をしたことだ。  

『ニッツ・アイランド』は、「DayZ」というオンラインゲームを題材にしたドキュメンタリーだ。ゾンビのはびこる世界で「なにをしても生き延びる」ということが主題のこのゲームは現実模倣性が高く、食事をしなければ死ぬし、体調不良も薬を飲むなどの対処をしなければ死ぬ。そして食料も薬も、現地で調達しなければいけない。結果として「ものを持ってる他人を襲うのがもっとも効率的」という“ライフハック”が有効となっている、非常に殺伐としたゲームだ。  

フランス人のドキュメンタリー・クルーがこの「DayZ」に参加し、そこで963時間を過ごし、ドキュメンタリーを撮影した。それが本作だ。エキエム監督たちの狙いは、ゲームに参加する人々と彼らのコミュニティに迫ること。そのため本作はクルーが撮影した「オンラインゲーム内の映像」だけで出来上がっている(正確には数カットだけ現実世界の映像が挿入されるシーンがあるが、時間にして1%程度に過ぎない)。  

僕は昨年、『ニッツ・アイランド』について、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された(審査員特別賞を受賞)ということでその存在を教えてもらった。そしてそれと前後して新潟国際アニメーション映画祭の選考委員として本作を見ることになった。とてもおもしろい作品だったので、機会があると話題に挙げていたのだが、それが縁でパンフへの寄稿を求められ、トークも行うことになったのだ。  

30日のトークは、配給会社のスタッフが僕に質問するかたちで行われた。そこに「本作はアニメーション映画か」という質問があった。この質問は至極当然ともいえる。  

『ニッツ・アイランド』は、オンラインゲーム中の映像で構成されているので、画面のルックは「少し安めの3DCGアニメーション」だ。ものの質感の情報量は多いので、ロングショットの風景は実写に近く見える。しかし人の動きをみると、地形に対する足元の接地はそこまで正確ではないし、エフェクトもシンプルだ。そういうところが目に付くことで、これがあくまでもゲーム画面であることが露わになる。しかし「安め」であっても、キャラクターはさまざまな動きを見せ、それによって映像が成り立っているのは間違いない。


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《藤津亮太》

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