沢城みゆき&堀江由衣、朗読で感じた阿良々木と神谷浩史の存在感「〈物語〉シリーズ×Audible」【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

沢城みゆき&堀江由衣、朗読で感じた阿良々木と神谷浩史の存在感「〈物語〉シリーズ×Audible」【インタビュー】

Amazon オーディオブック「Audible(オーディブル)」では、『〈物語〉シリーズ』(著者:西尾維新)を配信中。こちらでは、「猫物語(白)」の朗読を担当した沢城みゆきさんと、「花物語」の朗読を担当した堀江由衣さんの対談インタビューをお届けする。

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「〈物語〉シリーズ×Audible」沢城みゆき&堀江由衣インタビュー Illustration/VOFAN(C)西尾維新/講談社
「〈物語〉シリーズ×Audible」沢城みゆき&堀江由衣インタビュー Illustration/VOFAN(C)西尾維新/講談社 全 11 枚 拡大写真
本を一冊まるごとプロのナレーターや声優が朗読した音声コンテンツ、Amazon オーディオブック「Audible(オーディブル)」では、講談社発行の大人気小説『〈物語〉シリーズ』(著者:西尾維新)を配信中。

9月17日からは、「セカンドシーズン」にあたる6作品(「猫物語(白)」「傾物語」「花物語」「囮物語」「鬼物語」「恋物語」)の各巻が順次配信予定。朗読はAudible版「ファーストシーズン」に引き続き、同作品のアニメシリーズに出演している声優陣が担当する。

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アニメ!アニメ!では、今回「猫物語(白)」の朗読を担当した沢城みゆきさんと、「花物語」の朗読を担当した堀江由衣さんの対談インタビューを実施。語り部としてアニメで演じた役を交換するような形となったおふたり。それぞれのキャラクターと向き合い、新たに見えたものとは?

[取材・文:吉野庫之介]



羽川翼、神原駿河と向き合って


――朗読という形で『〈物語〉シリーズ』の世界観に戻ってきた感想を教えてください。

沢城:思わぬ形で戻ってきてしまいましたね……。

堀江:『〈物語〉シリーズ』はどれもこれもが大変ですからね(笑)。

沢城:アニメではキャストの仲間がいたから頑張れていたところがあったのですが、今回の収録では脳内で再生されるみんなの声を支えにしながらあの文章量をひとりで頑張るという新たな戦いをしました(笑)。

堀江:西尾先生の作品は表現方法や言い回しが独特なので、朗読の場合も難しい部分があるだろうとは予想していて。

沢城:雑談が多いんですよね。一見どうでもいいような内容がすさまじく引き伸ばしていたり、かと思いきや、雑味がなく純度の高い10代の心を映したような言葉が書かれていたり。そのレンジの広さにすごく翻弄されます。

堀江:ずるいなと思うのが、その雑談の中に答えとなるものがまぎれこんでいて、後々振り返ったときに「あのとき確かに言っていた……!」ということがあるので、一言一句に気を配りながらチェックしなければならない作品なんです。

沢城:時間差攻撃でくるものがたくさんあるから、油断ができない作品ですよね。

――今回配信されるAudible版の朗読では、沢城さんが「猫物語(白)」、堀江さんが「花物語」を担当されたということで、語り部としてアニメの役柄を交換したような形となりましたが、それぞれのキャラクターと向き合った印象や、朗読の際に意識されたポイントはありますか?

沢城:神原視点から見ていた羽川さんは本当に優等生で、人生に迷うこともなさそうなイメージだったのですが、今回の朗読を通じて、その生い立ちや気持ちの根底にあるものがわかって。

作品ファンのみなさんにとっては周知のことかもしれないのですが、私たちキャストは意外と自分の演じる役を死守することで手一杯で、ほかのキャラクターのことを深く知らなかったりするんです。だから今回羽川さんと向き合い、それを知ったことでびっくりしました。

堀江:羽川さんと神原さんはアニメでも接点が少なかったので、私も今回の「花物語」の朗読を通じて神原さんの心の内側や人となりを知る機会になってよかったと思います。

ただ、声の出し方として神原さんのようなタイプをあまり演じる機会がないことと、頭の中でアニメの沢城さんの声をイメージしているぶん、出てくる音や言い回しに最初は違和感があって。でも、逆にそれが役をぶらさないための拠り所でもありました。

沢城:私も「猫物語(白)」の収録がはじまったとき、一生懸命取り組むんですけど、「これは堀江由衣じゃない・・・!」という自分からのダメ出しがすごかった(苦笑)。

そもそも私の中には“全ヒロインは堀江さんでいい論”があって、ずっと堀江さんが演じる“完璧なヒロイン像”に憧れてきました。似せようと言うスローガンじゃなかったけれど、やっぱり羽川さんは堀江さんの声で聞きたくて。ただ、この作品は言葉自体に力があるので、だんだんとそちらに引き寄せられていったことで読み切ることができたのかなと思います。

――アニメと比較すると、Audible版の音はフラットな印象を受けましたが、その中にもしっかりとキャラクター性を感じる音になっていますよね。

沢城:完全な地の文であればそのまま朗読できたのですが、一人称で書いてあるものなので、それは“誰か”であり、人の言葉として読まなければならないので、キャラクターと距離を置くことへの違和感があるなと思ったんです。

語尾を落とさなかったり、一言一句が綺麗に聴こえるようにというアニメのお芝居とは真逆のスローガンで読みつつも、それ以外は一人称の部分にフォーカスすることで、みなさんが物語に飲まれていくように聴いていただければと。

堀江:物語が複雑に絡まっていたり言い回しが特殊な作品なので、地の文が一人称であることは読み手として助かる部分ではありますよね。ナレーション寄りで読む必要がある作品よりも私は入りやすかったです。

沢城:声優が朗読するうえで一人称であることの強みはありますよね。たとえば、ビジネス書の朗読の場合はナレーターさんの方が確実に上手ですし。

堀江:そこはもっと割り切って朗読してもよかったのかもしれませんね(笑)。

あらためて実感した阿良々木と神谷浩史の存在感


――役柄に寄せたところでは、沢城さんが読まれた「猫物語(白)」に登場するブラック羽川の「にゃ」の語感がとても可愛らしく印象的でした。



沢城:今回の朗読ではナレーション技術も含めてやれることを全出ししているのですが、ブラック羽川の「な行=にゃ」に変換するのは非常に苦しみました(笑)。

堀江:漢字に紛れている「女の子(おんにゃのこ)」とかを意外と見逃したり。

沢城:「女の子(おんなのこ)なのにゃ」はまだいいとしても、「女の子(おんにゃのこ)にゃのにゃ」はやめてほしいと思いました(笑)。

――アニメ「化物語」つばさキャットでは、ブラック羽川の早口言葉「斜め77度の並びで泣く泣く嘶くナナハン7台難なく並べて長眺め(にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ)」が放送当時話題になりましたよね。

堀江:「にゃにゃめ」は、最初に「斜め」の漢字の原文を覚えないと絶対にできないんですよ。過去のキャラクターコメンタリーでは、それが「にゃ」ではなく「みゃ」で読むことになったときがあって、その瞬間に何も言えなくなった思い出があります(笑)。

沢城:あくまでも「にゃ」で習得したものだったんですね。

堀江:結局最後まで言えなくて終わらないかと思いました(笑)。この早口言葉は外国のイベントで披露したときにすごく反響があったんですよ。

沢城:外国のかたには何かの呪文のように聴こえたんでしょうね(笑)。

――ちなみに沢城さんは言えますか?

沢城:これは大変ですね。「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃく、にゃらべて、にゃがにゃがめ!」

堀江:すばらしい! ブラック羽川の言葉遊びはここから始まったんだろうなあ(笑)。

沢城:本当に悪い遊びです(笑)。

――今回の朗読を聴いて、またアニメを見返したくなるかたもいらっしゃるかもしれませんね。

堀江:それで興味を持っていただけたら嬉しいです。

沢城:報われる気持ちになりますよね。

――作中の登場人物の中でほかに苦戦したキャラクターはいますか?

堀江:私は阿良々木くんが一番やりにくかったです。

沢城:難しかったですよね。神谷さんは簡単にやっているように見えるけど、これを自分が読むとなると「助けにきたぜ!」という台詞も、せめてカッコよさだけでも揃えたいのに全然決まらなくて。

堀江:ほかのキャラクターもそこまで似せて読んでいるわけではないのですが、阿良々木くんが一番似ないというか、思っていた音にならなくて。あらためて阿良々木くんとそれを演じる神谷さんのすごさを実感しましたよね。

沢城:『〈物語〉シリーズ』を支えていたのは阿良々木くんであって、そのメンタルで立ち続ける神谷浩史という役者の個性や底力が根本にあったんだなと。私たちはそのことを水道から水やお湯が出るような当たり前のこととして享受していたことに気がついて(笑)。

堀江:それがどういう仕組みでできているかを説明できないのと同じように(笑)。阿良々木くんと神谷さんに「これまで私たちを支えてくれて、本当にありがとうございました!」という気持ちになりました。

朗読で追体験する名シーン


――Audible版の「セカンドシーズン」では、三木眞一郎さんが千石撫子(アニメ版CV:花澤香菜)が語り部の「囮物語」を朗読されています。



沢城:私たちにとって今回の朗読がエベレスト登頂のようなものだとすると、三木さんはアイガー北壁を無酸素単独登頂するようなものですよ(笑)。

堀江:めったに聴けない三木さんが聴けますね(笑)。

――アニメで三木さんが演じていらっしゃった貝木泥舟はお芝居も相まって強烈な印象のキャラクターでした。

沢城:当時のアフレコで、三木さんがマイク前に入ってくるとそこだけフッと雰囲気が変わり「動物の本能で返していかないとやられる……!」という感じがして。ただ物理的に恐ろしいかというとそうではなく、まるで煙のような感覚というか。

堀江:羽川さんも貝木泥舟と対峙したときに「負けてはいけない」と思いながらも、私自身は気圧されていました(笑)。あと、アニメでゆきのさつきさんが演じられていた臥煙伊豆湖も圧倒的な存在感がありましたよね。

沢城:伊豆湖は絶対的な正解を持ってやってくる感じがすごく嫌ですよね(笑)。10代のキャラクターたちが頑張ってやっていたところに急に大人が出てきて、警戒感を持たざるを得ないというか。

堀江:「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」の羽川さんが、「何でも知っている」お姉さんというロジックに負けていましたからね(笑)。

――羽川の上位互換が登場するとは予想もつかなかったですよね(笑)。また、『〈物語〉シリーズ』には物事の本質を突くような格言が数多くありますが、とくに印象深いキャラクターのセリフはありますか?

沢城:私は今回堀江さんが朗読された「花物語」を聴いていて、悩んでいる神原に対して阿良々木くんが「少なくとも一人、お前が困ってる。」と言ってくれるシーンがあるのですが、そのセリフをもう一度味わうことができて幸せでした。

原作を読んだときも、アニメで神谷さんが言ったセリフを聴いたときも幸せだったのですが、それをまた追体験することができて、「ああ、好き……!」って満たされました。

堀江:今回の朗読で神谷さんが演じる阿良々木くんのイメージに似なくて困っていたセリフです(笑)。

沢城:ああいうサラっと決まるセリフほど難しいですよね(笑)。



堀江:私は格言というわけではないのですが、「猫物語(白)」で戦場ヶ原さんが羽川さんの食生活について質問をしていくシーンがすごく印象に残っているんです。

内容としては「パンを食べるときに何もつけないの?」といったものだったのですが、あのやりとりの中でそれまで知らなかった羽川さんの人間性の本質を知って、彼女への印象がガラリと変わったんです。

――何気ないシーンかと思いきや、羽川のバックボーンが垣間見えた瞬間でした。

沢城:そのあと戦場ヶ原さんに「嫌いなものがあるっていうのは、好きなものがあるっていうのと同じくらい大切なことじゃない。」「ねえ羽川さん、あなた本当に阿良々木くんのこと好きだったの?」って言われるんですよね。

堀江:その問いかけにハッとさせられて。「化物語」のころからその味覚に関する情報を知っておきたかったなと思いました(笑)。

沢城:前代未聞の問診ですよね(笑)。

堀江:その後の食事ではちゃんと味がついているものを食べているといいなあ(笑)。

Audibleで楽しむ『〈物語〉シリーズ』の魅力


――日常生活の中で「音声だけ」で楽しまれているものはありますか?

沢城:私はラジオなどもこれまであまり聴いてこなかったのですが、最近は主人がつけている番組を少し聴くようになりました。

堀江:音楽は?

沢城:音楽も坂本真綾さんくらいしか聴いてこなかったんです。

堀江:私も!(笑)

沢城:でもサブスクリプションの月額プランに入ってからは色んな音楽を聴けることに気がついて。このあいだ宮野真守さんと何かの雑誌の流れで音楽の話になったのですが、そのときに平井堅さんをおすすめしてもらってからずっと聴いていて、私の音楽シーンに革命が起きています(笑)。

お店でレンタルしたりMDにおとしていた時代から考えると、今はパッと聴けるのがすごいですよね。

――Audibleのような音声コンテンツも音楽と同様、ダウンロードするだけで簡単に聴くことができるので、余暇時間の選択肢が広がりますよね。

堀江:Audibleは長距離ドライバーのかたもよく聴いていらっしゃるみたいですね。

沢城:道が長いアメリカなどでは以前から根づいている文化なんですよね。私も留学していたときに車の中でずっとこういったコンテンツが流れていたのを聴いていました。

堀江:ドライバーのかた以外にも、手が離せないようなお仕事をされているかたが気軽に楽しめるコンテンツですよね。

――Audible版『〈物語〉シリーズ』も生活にとけ込むような音になっていて、長時間流していても非常に聴きやすかったです。

沢城:だったらいいな……! 何時間も聴くものだから、ストレスにならないイージーリスニング的な側面も大切にしたかったので。

堀江:西尾先生の文章は、煙に巻いて、煙に巻いて、最後に本当の答えが出てくるので、そういった作品との相性もいいのかもしれませんね。

――最後に読者のみなさんへのメッセージをお願いいたします。

沢城:私はこれまでひとりで神原駿河と対峙してきたのですが、堀江さんのお声でもう一度「花物語」を聴いてみて、彼女にはもっと違う可能性があったのではないかと根底を揺さぶられる気持ちになりました。

みなさんにも「〈物語〉シリーズにはまだこんな楽しみかたがあったんだ!」という新たな体験の機会にぜひご並走いただければと思います。



堀江:『〈物語〉シリーズ』にはさまざまな魅力があると思いますが、その最たるものが西尾先生の書かれた文章であり、それを今回朗読するにあたりどのように表現するのか現場で試行錯誤しました。

聴いていただくみなさんには、その原作の言葉や言い回しの面白さをストレートに感じて楽しんでいただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。



Audible(オーディブル)について
いつでもどこでも気軽に音声でコンテンツを楽しむことができる、世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスです。プロのナレーターや俳優、声優が読み上げる豊富なオーディオブックや、ニュースからお笑いまでバラエティあふれるプレミアムなポッドキャストなど、約40万タイトルを取り揃えています。再生速度の変更やスマホでのオフライン再生はもちろん、Amazon EchoやAlexa搭載デバイスにも対応。

現在、世界10ヶ国(米・英・独・仏・豪・日・伊・加・印・西)でサービスを展開。書籍との同時発売やオリジナルコンテンツ制作を手掛けるなど、オーディオエンターテイメントの先駆者として可能性に挑戦し続けています。


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《吉野庫之介》

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