アニメコマース最前線! ハイクオリティ―な「渋スクフィギュア」を作り続けるeStream×ABEMA躍進の裏側【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

アニメコマース最前線! ハイクオリティ―な「渋スクフィギュア」を作り続けるeStream×ABEMA躍進の裏側【インタビュー】

eStream代表取締役社長の高井里菜氏、ABEMAのアニメチャンネルプロデューサーの山崎健詞氏にインタビューを実施。アニメコマースの最前線に迫る。

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アニメコマース最前線!  ハイクオリティ―な「渋スクフィギュア」を作り続けるeStream×ABEMA躍進の裏側【インタビュー】
アニメコマース最前線! ハイクオリティ―な「渋スクフィギュア」を作り続けるeStream×ABEMA躍進の裏側【インタビュー】 全 16 枚 拡大写真
「渋スクフィギュア」をご存じだろうか。2019年より商品を展開している新進気鋭のフィギュアブランド「SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE」の通称だ。

2020年11月11日には新商品「めぐみん -エクスプロージョンver.-」「アルベド -水着ver.-」「シャルティア -水着ver.-」「サイタマ -隕石破壊ver.-」の4体を同日予約開始を行い話題となり、ハッシュタグ「#渋スクフィギュア」がトレンド入りを果たした。

「めぐみん -エクスプロージョンver.-」

「アルベド -水着ver.-」

「シャルティア -水着ver.-」

「ワンパンマン -隕石破壊ver.-」

ファンからも「クオリティーが高い!」、「これは欲しい!」と評判の渋スクフィギュアを手掛けるのは、株式会社eStream。聞きなじみのない読者もいるかもしれないが、アニメチャンネルでおなじみのABEMAを知っている人は多いだろう。

実はeStreamもABEMAも、株式会社サイバーエージェントの関連企業。両社が連携を取りながら、アニメコマース事業(アニメグッズの企画・販売)を展開している。

ハイクオリティーなフィギュアは、どのように作られているのか。また、近年のアニメコマースにはどのような特徴がみられるのか。
本稿ではeStream代表取締役社長の高井里菜氏、ABEMAのアニメチャンネルプロデューサーの山崎健詞氏にインタビューを実施。アニメコマースの最前線に迫る。
[取材・文=ハシビロコ、撮影=小原聡太]

大切なのは「キャラクター愛」


渋スクフィギュア第1弾として世に送り出されたのは「Re:ゼロから始める異世界生活 レム -Crystal Dress Ver-」。


今にも動き出しそうな生き生きとした表情、何層にも重ねたドレスの躍動感などが高く評価されている。グロスやクリアパーツをふんだんに使用した、高級感のある仕上がりも魅力的だ。

フィギュアの見栄えは、IP(アニメ作品などの知的財産)選定時から大切にしているという。

高井「企画段階では、フィギュアによってIPの価値を最大限引き出せるかを重視しています。渋スクフィギュアの強みは、ディティール・躍動感・スケール感。これまでもエフェクトの多いファンタジー作品を中心に立体化してきました。

フィギュア化に向いているIPは、キャラクターリスペクトが強い作品でもあります。SNSでのファンの熱狂度やABEMAの視聴者コメント、さらに自分たちが作品を見たときの感性をもとに、キャラクターに対する愛や熱量の大きさを判断材料にしています」


企画立案後は、イラスト制作、3Dデータ作成、試作品の版元監修、彩色を経て販売に至る。フィギュアは企画からリリースまでに1年以上かかる場合も珍しくないため、作品が盛り上がるタイミングをつかむことも重要だ。

そこで一役買っているのがアニメチャンネルを展開するABEMAである。

山崎「『Re:ゼロから始める異世界生活』のフィギュアは、ABEMAとeStreamが連携して作品を盛り上げるタイミングを狙い進めていきました。企画時にも、ABEMAがこの先一緒に取り組む予定の作品とうまくシナジーが取れるよう企画に反映しています。

eStreamからはモノづくりの観点での意見をもらい、作品にとって最適なアプローチを考えました。作品によっては、高級感のあるフィギュアよりも価格帯の低いグッズを作った方がファンに喜んでもらえる場合があるので、ターゲット層の見極めも重要です。
ABEMAやeStreamの持ち味を発揮しつつも作品の魅力を最大限発信できるような企画を提案するよう心がけています」


フィギュアを切り口にアニメコマースを展開した経緯


eStreamは、広告事業、eスポーツ事業、「OPENREC.tv」などのメディア事業を扱うCyberZの子会社。もともとオンラインくじ「eチャンス!」などのグッズ事業を展開していた。一方ABEMAはアニメ・ドラマ・バラエティなど番組配信が中心。どちらもフィギュアに関してはゼロからのスタートだった。

なぜフィギュア業界に参入し、アニメコマース(アニメグッズの企画・販売や流通)の幅を広げようとしたのか。

山崎「ABEMAはこれまで有料会員と広告収入の二本立てで展開していましたが、版権元とやりとりをさせていただく中で、商品化などでも貢献できないかと思うようになりました。
イベントやグッズ、ライセンス販売などの放送外収益に力に入れようとしたタイミングで目を向けたのが、アニメチャンネルの視聴者です。

アニメチャンネルはABEMAの番組の中でも、大きな規模を誇りますし、商品化のポテンシャルが高く、グッズを購入いただけるファンも多いと感じました」

高井「ちょうどそのころ、eStreamでグッズ販売の基盤ができあがってきたので、一緒にチームを組んで挑戦することになりました。
それでも最初からフィギュアを作ろうと思っていたわけではありません。アニメ関連グッズを作っていく中で、『ユーザーさんたちが欲しいものは、もっと高品質でIPの価値を最大化させるものなのではないか』と思うようになりました。

オンラインでの低価格帯商材の販売ですと、全国の皆さんが平等に手に入ったり、店舗別の在庫差がなくなるなどのメリットはありますが、よっぽど欲しい商品でないと送料がかかったりすぐに手に届かないなどオフライン販売との差別化が難しい。そこで受注生産が一般的なフィギュアで従来のメーカーさんがこれまであまり出していなかった価格帯でよりハイエンドな商品を出そうと考え、フィギュアにたどり着きました。

とはいえ、会社としてのリスクも大きいため、参入するときは慎重でした。というのも、フィギュア制作は販売までの期間の長さや莫大な初期投資など、リスクの高い分野だからです。
渋スクフィギュアのようにパーツの多い商品は金型の数が増え、その分コストも上がっていきます。また版権元からの修正指示があれば、型そのものを作り直すこともあります」

どれだけクオリティーの高いフィギュアを作っても、ファンが買える価格帯でなければ意味がない。予算の中でどれだけ満足度の高い造形を実現できるか、バランス感を探るのも難しいポイントだったという。

また、渋スクフィギュアの持ち味である躍動感を演出する逆三角形の構図も、頭を悩ませるポイントだった。
重さが上に集中しやすいため、立体化したときの安定感を出すのは至難の業。「Re:ゼロから始める異世界生活 レム -Crystal Dress Ver-」ではレムの足元が浮かび上がって見えるよう、製造会社と協力して試作を重ねた。


幻想的な透明感が出るよう、製造会社のアイデアでクリアパーツも採用。「できない」ではなく、「どうすればIPの魅力を再現できるのか」という方向で、フィギュアを作っている。


視聴者数=市場規模ではない


2019年の発表から順調にファンを増やしてきたように見える渋スクフィギュアだが、最初は失敗の連続だったという。最大の要因は、「ABEMAの視聴者数=市場規模」だと思っていたためだった。

山崎「ABEMAで視聴者数が多い作品だからといって、必ずしもグッズが売れるわけではありません。最初は『ABEMAの配信枠にCMを入れればグッズが売れるだろう』と思っていましたが、そんなに簡単な話ではありませんでした。

そもそもファンが作品を好きな理由を探らなければ、市場規模は見えてきません。たとえば配信では異世界系のタイトルが人気で、毎クール何本も異世界系アニメが放送されています。作品そのものよりもジャンル自体が好きな視聴者も多く、クールが変わるたびに新しい作品に移行する傾向がみられました。
グッズを買う、とくにフィギュアを買う層はキャラクターへの愛が深い人が多いので、そうした熱狂的なファンがいる作品や展開タイミングを見抜くことが重要だとわかりました」

「アスナ -ネグリジェVer-」

初心に戻って作品の掘り下げやプロモーションなどに力を入れ始めたeStreamとABEMA。その結果、版元からも「こんなにグッズ展開をがんばってくれるのは久しぶりだ」と良い反応がもらえるようになったという。

フィギュアに関してもユーザー様の期待を超える出来栄えに。


現在は渋スクフィギュア発売に合わせてABEMAで特集を組んだり一挙配信をしたりと、グッズを通して作品の価値を発信できるよう連携を取っている。

版元の反応だけでなく、ファンの声も大切だと語る2人。渋スクフィギュアによって、アニメファンとの新たなつながりを創出できた。

高井「フィギュアが届いたときに『家宝にします!』と言ってくださった方もいて、励みになっています。ありがたいことに、ファンの方がフィギュアの写真をたくさん撮ってくださるんです。さまざまなおうちにお迎えしていただけて嬉しいです。お客さまの安堵の声や喜びの声を見て、ようやくアニメコマースにおける信頼構築の第一歩が踏み出せたと感じました」

エミリア -アイドルVer- 1/7スケールフィギュア

山崎「渋スクフィギュアをきっかけに、ABEMAを知ってくれるアニメファンも増えました。グッズを買うようなコアなアニメファンにとって、ABEMAはそれほど知名度が高くなかったと思います。
そんな状況が、渋スクフィギュアで変わりつつある。よりコアなアニメファンにも身近に感じていただけるような展開をしていきたいです」

アニメコマースのトレンドと変化


続いてアニメコマースのトレンド推移をうかがうと、意外にも「グッズの種類はあまり変化していない」との回答が。しかし新型コロナウイルスの影響で外出自粛をしていた時期から、客層が広がりつつあるという。

高井「海外では外出自粛期間中に日本アニメの配信本数が増加しました。その結果、アニメを見たファンがグッズを購入する流れがグローバルに起こっているといえます」

山崎「売れるグッズは、フィギュアやアクリル商材など定番のラインナップが強いです。近年に関しては放送されるアニメの数、IPについては数が増えているという環境の変化もありますし、あとは男女でアイテムの需要が分かれている印象があります」

高井「あくまで一般的な傾向ですが、女性向けですとグッズを外に持ち歩いたり交換したりする文化があるため低単価で複数購入する需要が見られます。
男性に関してはキャラへの愛が強く、高単価なグッズへの需要が高い。そのため、現在の渋スクフィギュアでは男性ファンの多いキャラクターのフィギュアが多い傾向にあります」

山崎「以前からも同じ傾向はあるかと思いつつ、近年のアニメコマースの特徴としては、『多くのキャラクターから推しを選ぶ』ことが挙げられるかもしれません。推しを見つけて買っていく行動自体は今も昔も変わりませんが、最近はとくにキャラクターが魅力的かつ、数も多くて自分の推しを見つけられるような作品が盛り上がりを見せているように感じます」

「ソードアート・オンライン アスナ -天使 Ver-」

一般的なトレンド傾向はそれほど変わらないものの、2020年は新型コロナウイルスの影響で国内最大のアニメイベント・AnimeJapanが中止になるなど、アニメ業界全体が大きな打撃を受けた。
そんな状況で感じたのは、作品や商品を発信する場所の必要性だったという。

山崎「リアルでのイベントがストップしてしまったとき、受け皿としてABEMAが役立てたと思います。AnimeJapanに代わる生放送特番も実施、11月には”徳島をアソビ尽くす”ことを目的とした複合エンターテイメントイベント「マチ★アソビ」のステージもオンラインで配信しました。

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しかしまだまだリアルイベントの代替に過ぎず、凌駕するほどの市場規模には至りません。任意のタイミングでオンラインイベントを開催しアニメコマースを展開するような新しい場所を創出できれば、業界全体に貢献できるのではないか、と思っています。

また、新型コロナウイルスの影響で放送時期がズレた作品もありました。本来のスケジュールであればもっと話題になっていたかもしれない作品が、埋もれてしまっているかもしれません。
ABEMAやeStreamでオンラインイベントや商品展開のお手伝いができるかもしれないので、もし困っている版元さんやイベント会社さんがいれば、ぜひお声がけいただきたいです」

世界中にIPの魅力を届けるために


「渋スクフィギュアでようやくアニメコマースのスタートラインに立てた」と語る2人。
ABEMAが培ってきたアニメファンと版元との信頼関係、市場への影響力、そしてeStreamによる高品質のモノづくりを活かしてアニメコマースの最前線を走っている。
最後に、今後両社が目指すアニメコマースの姿をうかがった。

高井「渋スクフィギュアのコンセプトである、躍動感・ディティール・スケール感を活用して、IPの価値が高まるような商品を作り続けていきたいです。新たなフィギュアブランド創設にも挑戦しようと思っています。

これまでは女性キャラクターのやわらかさ、かわいさを表現することなどに力を入れていましたが、男性キャラクターのフィギュアも作っていきたい。筋肉の質感、顔のかっこよさ、美しさなどをしっかりとフィギュアに落とし込めるよう模索しています。

また、女性向けIPは一緒にお出かけできるグッズにも人気が集まっているので、価格面や遊びやすさなども重視したいと思っています。
今後ラインナップを増やしていくためにも、フィギュア化要望の声はもっと欲しいです。ハッシュタグ「#渋スクフィギュア」で、ぜひフィギュアにしてほしい推しを教えてください!
改善してほしい点や要望などは、SNSやお問い合わせ窓口からどんどん送っていただけると嬉しいです」

山崎「版元様に対しても今後は『ABEMAで宣伝をするのでグッズを作らせてほしい』といった方向性の提案だけでなく、『うちに任せていただけたらこんなグッズが作れます』とIPの特徴やファン層ごとに適したアニメコマースを提案していきたいです。

目指しているのは、配信・宣伝・商品化など、作品にあらゆる方向から貢献できるようなパートナー像。ゆくゆくはサイバーエージェント発でオリジナルアニメを作ったときに、ABEMAを起点にしてすべての方向に動けるような基盤作りをしたいです。
アニメ業界全体をより明るくするために活動していきますので、今後にぜひ期待してほしいです」


高井「ものづくりを通してIPの価値を最大化させること、アニメ市場を盛り上げることへの熱意を強く抱いています。フィギュアやABEMAを通して世界中に日本のアニメというすばらしい文化をお届けしたい。渋スクフィギュアも世界的なブランドにしていきたいです。
申し分ないクオリティー、世界観をお届けしていきますので、これからも注目してください!」


◆◆◆
アニメコマースは単にモノを流通させるだけでなく、IPそのものの魅力を伝える役目も担っている。グローバルにアニメが広まりつつある現代、その重要性はより高まっているといえよう。
作品やファンに寄り添いながら展開を続けるeStreamやABEMAの躍進に注目だ。

(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会
(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活2製作委員会
(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
(C)丸山くがね・KADOKAWA刊/オーバーロード3製作委員会
(C)2016 (C)2019 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/映画このすば製作委員会
(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]

《ハシビロコ》

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