第33回東京国際映画祭(2020)「ジャパニーズ・アニメーション部門」編成の狙いと意義【藤津亮太のアニメの門V 第64回】 | アニメ!アニメ!

第33回東京国際映画祭(2020)「ジャパニーズ・アニメーション部門」編成の狙いと意義【藤津亮太のアニメの門V 第64回】

アニメ評論家・藤津亮太の連載「アニメの門V」。第64回目は、10月31日から11月9日まで開催される「第33回 東京国際映画祭」のジャパニーズ・アニメーション部門の編成の狙いについて解説する。

連載 藤津亮太のアニメの門V
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10月31日から11月9日まで「第33回東京国際映画祭」が開催される。昨年から東京国際映画祭にはジャパニーズ・アニメーション部門が設立され、本年は同部門のプログラミング・アドバイザーを僕が担当することになった。
なので今回は、今年のジャパニーズ・アニメーション部門の編成の狙いについて解説をしたいと思う。

そもそも東京国際映画祭がアニメに力を入れ始めたのは、2014年に遡る。この時は「庵野秀明の世界」と題して、アマチュア時代の作品も含めたレトロスペクティブが行われた。
以降、「ガンダムとその世界」(2015)、「映画監督 細田守の世界」(2016)、「映画監督 原恵一の世界」(2017)、「アニメーション監督 湯浅政明の世界」(2018)と基本的に作家のレトロスペクティブを中心に企画が組まれてきた。

そしてジャパニーズ・アニメーション部門が設立された昨年は「THE EVOLUTION OF JAPANESE ANIMATION/VFX」と題して、戦後のアニメーション映画史の転換点といえる3作品(『白蛇伝』『エースをねらえ!』『AKIRA』)の上映と、日本アニメ映画の到達点として新作・準新作を5作品(『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』『天気の子』『プロメア』『若おかみは小学生!』)の上映を行った。
さらに昨年からジャパニーズ・アニメーション部門の中で「VFX/特撮」も扱うという立て付けになり、4K化された『ウルトラQ』も4本上映された。

今年のジャパニーズ・アニメーション部門のコンセプトは、こうしたこれまでの取り組みを踏まえた上で考えたものだ。
枠組みとしては昨年を踏襲して「なんらかのレトロスペクティブ」「新作・準新作(ここ1年内ぐらいに公開されたもの、これから公開されるもの)を取り上げる特集」「特撮」という三本の柱にしようと考えた。

ただ内容については、2018年までの監督を中心とした方法論にこだわるのではなく、もっと様々な切り口が可能になるよう、幅を広げる方向に舵を切ることにした。
特に映画祭では“見えないもの”になりがちな娯楽作、いわゆるプログラムピクチャー的な作品にもスポットを当てようと考えた。

日本のアニメは、プログラムピクチャーの中に作り手がこだわりを入れ込みながら表現を成熟させてきたという側面もあるから、なるべくウィングを広くとるほうがジャンルをカバーできるようになるはずだ。

また「東京」「国際」映画祭である以上、日本のアニメーション映画が「どういうものを作っている/作ってきたのか」ということを、改めてプレゼンテーションする場所ということも意識した。
それは「海外向け」ということではなく、「日本のアニメの断面をきっちりと見せる場所であろう」ということだ。

そうした諸々を念頭に置いた結果、レトロスペクティブとしては『劇場版ポケットモンスター』を特集することにした。

第1に、ポケモンが日本発でかつ世界に知られたキャラクターであることは言うまでもない。映画第1作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は北米市場で8574万ドルを稼ぎ出す大ヒットとなっており、現在もまだ北米で公開された日本アニメ映画の中で最大のヒット作であり続けている。

しかもその『ミュウツーの逆襲』は、「ポケモンと人間の関係を問い直す」という主題を扱っており、アニメ『ポケモン』ならではのテーマの掘り下げを行っている作品でもある。
プログラムピクチャーでありつつ、作り手の主題に対する真摯な姿勢が映画に奥行きを与えており、これは「プログラムピクチャーと作り手の関係」という観点から見ても、重要な作品であるといえる。

この2つの理由からまず『ミュウツーの逆襲』を特集の起点に置いた。
そして2018年に改めて「人間とポケモンの関係」をテーマに描いた『みんなの物語』をそこに並べて置くと、アニメ「ポケモン」の魅力がどこに由来をしているかを考える糸口になるだろう。
しかも『みんなの物語』では監督がそれまでの湯山邦彦監督から矢嶋哲生監督へと交代しており、劇場版「ポケモン」というシリーズの中で、何を継承して、何を新たに取り入れていくのか、というテーマも浮かび上がらせることができる。

そしてこの2作の間に、「毎年夏の恒例の娯楽作」としての「劇場版ポケモン映画」として『ディアルガVSパルキアVSダークライ』を配置する。
こうして3本を並べれば、『劇場版ポケットモンスター』がテーマを持った特集として十分成立するはずだ。

一方、「特撮」に関しては、ジャパニーズ・アニメ部門の中にわざわざ「特撮」が設けられた位置づけを考えるところから考えざるを得なかった。
この立て付けの意味するところは、「特殊撮影」が対象になるというよりは、キャラクター性の強いもの――端的にいうと怪獣やヒーロー――を扱うコーナーを期待されていると解釈した。

それと併せて、2020年は『秘密戦隊ゴレンジャー』の放送開始から45周年にあたるという情報を教えてもらい、ならば、スーパー戦隊シリーズは「パワーレンジャー」として北米で人気を集めているわけだから、『ポケモン』と並べて特集を組むと、今年の部門全体の方向性が「“日本発の世界”のキャラクター」を扱って、その「原点と今」を見直すという形で平仄が合ってくる。

そこで上映作品としては、原点の『ゴレンジャー』(東映まんがまつりで上映された3作品)と最新映画である『騎士竜戦隊リュウソウジャ-VSルパンレンジャーVSパトレンジャー』『魔進戦隊キラメイジャーエピソードZERO』を配置して、3作品目は歴代戦隊が勢揃いする『ゴーカイジャー ゴセイジャー ス-パー戦隊199ヒーロー大決戦』を並べて、3作品全体でシリーズの歩みが実感できるようにした。

アニメ特集のもうひとつの柱である「2020年、アニメが描く風景」は、まず新作・準新作のアニメ映画を紹介するコーナーであること大前提があった。でなくては「アニメの今」をプレゼンテーションできないからだ。

そして最終的に上映作品は『ぼくらの7日間戦争』『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『サイダーのように言葉が湧き上がる』に決まった。
ただ「新作・準新作です」という形でまとめるのは避けたかった。なぜかというとそれは「アニメの今」をプレゼンテーションしているようで、そうではないからだ。今を切り取るテーマを用意しなければ「今」はなかなか見えてこない。

予告を見ればわかる通り『サイダー~』と『ヴァイオレット~』の美術のスタイルは対極ともいえるほど異なっている。また『ぼくらの~』は、現実の風景の取材を反映しつつ架空の場所を描き出すという、現在のアニメらしいアプローチで世界を描き出している。

そこで、この3作品を並べれば、アニメの背景がどのような意味合いを持つものなのか、それは「今」どんな状況にあるのかが見えてくるのではないかと考え、「2020年、アニメが描く風景」というタイトルをつけることにした。
このテーマであればこの3作品と、さらには特別招待作品の『ジョゼと虎と魚たち』『魔女見習いをさがして』を通じて、「現在のアニメ映画がどのように表現を追求しているか」の一端が見えてくるはずだ。

以上、3つの各特集のコンセプトについては、映画祭会期中に開かれるマスタークラス(シンポジウム)での議論を通じて深める予定だ。
「特撮」に紐付いたマスタークラスでは、スーパー戦隊シリーズの関係者によるトークを予定しており、「2020年、アニメが描く風景」に関するマスタークラスでは、関係する4人の監督に登壇してもらい、「美術へのアプローチ」を入り口に作品作りで考えたことを語ってもらうつもりだ。

また今年のジャパニーズ・アニメーション部門全体のコンセプトについては、「ジャパニーズ・アニメーションの立脚点 キャラクターと映画」というマスタークラスを行うことで、改めて検討する。
以上3つのマスタークラスは無料配信も行われる(「スーパー戦隊シリーズ」2020年、アニメが描く風景」のマスタークラスについては申し込めば無料で観覧もできる)ので、そちらを見ていただけると、今年のジャパニーズ・アニメーション部門が何を狙っていたのかより深く理解してもらえるはずだ。
プログラミング・アドバイザーとしては、上映とマスタークラスは一体のものと考えて企画しているので、是非併せて楽しんでいただきたい。

なおミニ特集の「かわいいともだち」は、ワールドプレミアとなる『どすこい すしずもう』の上映が決まったことが発端で設けたものだ。もともと東京国際映画祭はアニメ関係で日本動画協会の協力を得ており、同協会の会員社の最新作などをプレミアという形で上映してきた経緯がある。『どすこい すしずもう』もそうした経緯で上映が決まった作品だが、単発よりは、特集の形にしたほうが部門の中での位置づけが明確になると考え、昨年話題を呼んだ同傾向の『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』と並べて、ミニ特集の形のしつらえとした。

東京国際映画祭2020のジャパニーズ・アニメーション部門を通じて、国内外の人が日本のアニメへの興味を深めてくれればとてもうれしい。

[藤津 亮太(ふじつ・りょうた)]
1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメ ゼロ年代アニメ時評』、『声優語 ~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~ 』、『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』がある。最新著書は『ぼくらがアニメを見る理由 2010年代アニメ時評』。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」(http://ch.nicovideo.jp/animenomon)で生配信を行っている。

《藤津亮太》

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