■オリジナル版「Butter-Fly」起用の理由
――新たな要素といえば、本作では新デザインのスマホ型のデジヴァイスが登場しています。なぜデジヴァイスを新調しようと思ったのでしょうか。
田口:舞台となっている2010年代を象徴するガジェットを出したい、と思ったのがきっかけです。
設定を話し合っているうちに「光子郎だったらデジヴァイスの機能をスマートフォンに搭載することもできるだろう」というアイデアが出ました。そこでスマホアプリを使う感覚でデジタルゲートを開いたりできるようにしました。
――本作は「Butter-Fly」のオリジナル版が使われるなど、なつかしい要素も含まれています。あえてオリジナル音源を使うことになった経緯を教えていただけますか?
田口:本作のコンセプトとして、昔見ていたデジモンの雰囲気を再現したいと考えていました。
「デジモンの劇場版はこんな雰囲気だったよね」、「デジモンの進化といえばこのシーンだよね」など、ファンの中にあるデジモンのイメージをきちんと描きたくて。「Butter-Fly」のオリジナル音源を使っているのは必然です。
――歴代『デジモンアドベンチャー』シリーズへのオマージュを感じさせるシーンもありましたが、これは意図的に入れようと思ったのでしょうか?
田口:はい。『tri.』を見ていて、『デジモンアドベンチャー』を冠する作品に新しい要素を取り入れるハードルの高さを感じました。
そこで進化シーンなど、見慣れた映像を活かせるように演出した部分もあります。「こういうデジモンが見たかった」とファンに納得してもらえるよう、とくに序盤は意識して作りました。
モルフォモンのかたちにもこだわりが
――最後に、本作の公開を楽しみにしているファンへあらためて見どころをお願いします。
田口:過去作へのオマージュもありますが、単体で見ても一本の映画として楽しめるのではないかと思っています。とくにキャラクターのかけ合いはかなり意識して作りました。
友人との別れなど普遍的なテーマも描いているので、『デジモン』を知らない人が見てもまったく理解できないわけではありません。初めて『デジモン』に触れる人もご安心ください。
ぜひ本作を見た後は、「この先はきっとこんな展開が待っている」など想像や考察をふくらませていただけると嬉しいです。
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『デジモンアドベンチャー』の映画は公開当時、別作品と同時上映されていた。そのため映画をきっかけに『デジモン』を知るケースも少なくなかっただろう。
『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は20年来のファンはもちろん、本作をきっかけに『デジモン』を知った人でも楽しめる内容となっているという。そうした意味でも、『デジモン』映画の原点に立ち返る作品だといえるのではないだろうか。
太一たちが未来に進むための最後の冒険を、ぜひ劇場で見届けてほしい。