GA文庫の人気タイトル同士の組み合わせで、大森藤ノ・蝸牛くも両先生が濃密なやり取りを経て作成されたシナリオは、両作品のファンを唸らせる出来栄えで、それぞれの個性が噛み合った見事な構成となっている。
イベント開始直前にお届けしたインタビュー前編に引き続き、後編では本コラボのこだわりポイントをおふたりに徹底解説してもらった。
本記事はネタバレを含むので、まだ本コラボイベントをプレイしていない人は注意してほしい。
[取材・文=杉本穂高]
【インタビュー前編】
>「ダンメモ×ゴブスレ」コラボ誕生秘話、原作者・大森藤ノ&蝸牛くも「良い意味で殴り合ってつくった」■ベルを女神官ポジションに?
――冒頭は『ゴブスレ』側の神「幻想」と、『ダンまち』側のフレイヤがTRPGをプレイしているというメタ的な展開です。
大森:『ゴブスレ』の「幻想」の神様は、原作序盤でも、アニメでも出番が少ないので、登場させるのは難しいかもしれないと思っていたのですが、冒頭をどう描写するかはくもさんにお任せしました。
蝸牛:コラボシナリオの冒頭は、『ゴブスレ』をウェブで書いていた頃からのファンの皆さんへのサービスのつもりです。
基本的に『ゴブスレ』の神様は、みんなでワイワイやっているのが好きなんです。フレイヤさんは真剣勝負のつもりで挑んでいるのですが、こちらの神様は遊びなんだという対比を意識して書きました。
大森:自分はフレイヤと同じくTRPGをプレイしたことがないので、フレイヤが自分を代弁している面があります。
このコラボ前にくもさんとTRPGをご一緒したかったんですが、時間が作れなくて残念でした……。
――そして、ゴブリンスレイヤーの登場の仕方がTVアニメの第一話を彷彿とさせました。
大森:『ゴブスレ』のTVアニメはすごかったですね。
蝸牛:アニメ版はいろいろな方々のおかげですごく良い仕上がりになりました。
大森:あまりにも良かったので、今回のコラボのゴブスレさん登場シーンは、そのままオマージュのつもりです。
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ゴブリンスレイヤー
――パーティが3つに別れる展開となります([ベル・ゴブリンスレイヤー]、[令嬢剣士・剣の乙女・アミッド・桜花]、[千草・リュー・牛飼娘・妖精弓手・女神官]。どのようにパーティ編成を決めたのですか。
大森:最初は、ゴブスレさん、ベル、女神官ちゃんの3人をセットにしていたんですが、ベルとゴブスレさんだけのパーティに変更しました。
ベルを『ゴブスレ』の物語における神官ちゃんの立ち位置につかせれば、『ゴブスレ』ファンにも楽しんでもらえるし、原作もTVアニメも観ていない方に作品の魅力を伝えやすいと思ったからです。
――ゴブリンスレイヤーがベルにゴブリンの臓物をなすりつけるシーンがありました。あれはやはりインパクトがありますね。
蝸牛:あれはすっかり定番になりました。
大森:他のコラボシナリオでもやっているんですか?
蝸牛:やっています。日本で一番有名だと思われるヴァ●キリーさんにも塗りたくろうとしました(笑)。
大森:被っちゃいましたか(笑)。でも、ベルを神官ちゃんのポジションに置くには避けられないな~とは思っていました。
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女神官
――ベルとゴブリンスレイヤーが一緒のパーティとなったことで、主人公同士のやり取りはかなり濃密になったのではないですか。
大森:そうですね。ベルとゴブスレさんの絆が深まっていくさまを上手く描けました。今回のコラボで一番掘り下げられたのはこの2人だと思います。
蝸牛:ベルくんとゴブスレさんは、対極な存在です。ゴブスレさんはベテランだけど素質は凡人。対してベルくんは新人冒険者だけど英雄の卵。
でもルーツは似ているんです。同じところもあって決定的に違う点もあって、だから2人の会話は書いていて楽しかったです。
大森:「同じだけど決定的に違う」というのは良い言葉ですね。出発点は同じだけど、ベルとゴブスレさんは別の道を歩んだんだって。
――ベルがゴブリンスレイヤーの動きを「遅いけど早い」と相反する要素を重ねて評している台詞はとてもユニークです。
大森:文字表現の醍醐味ですから、自分はこういうのは大好物ですね。アニメなんかでは表現するのは大変だと思いますが。
蝸牛:あの台詞は僕が書きました。ベルくんは神様の加護を受けているけど、ゴブスレさんにはそんなものはない、というかステータスなんてそもそもないので、世界観のギャップを描こうと思ったんです。
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