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「キャロル&チューズデイ」渡辺信一郎監督が語る、最終話の舞台裏そして今後の作品づくりは?【インタビュー】

『キャロル&チューズデイ』より渡辺信一郎総監督にインタビュー。音楽や物語などにまつわる制作秘話や、今後の作品づくりの意欲もうかがった。

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『キャロル&チューズデイ』(C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会
『キャロル&チューズデイ』(C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会 全 15 枚 拡大写真

■音へのこだわりとアーティガン秘話



――『キャロル&チューズデイ』の演奏シーンは、目の前でライブを見ているような臨場感がありますね。

渡辺:臨場感を出すために、音響的にも凝ってます。それぞれ場所によって音の響きを変えていて、大型フェス用の音、安いライブハウス用の音、コンサートホールの音といった具合にそれぞれ細かく再現してます。

もちろんフェスでも、ステージの裏側に回ったら低音が大きくて他の音は聞こえにくくなる、みたいな部分まで再現してるんです。

――本作では音響監督も兼任されていますね。声優さんの演技面ではどのようなディレクションを?

渡辺:基本的には、あまり誇張しないナチュラルな演技が好きなんで、そういう路線にしつつも、アーティガンのようにオーバーアクト気味なキャラクターもいて(笑)。


――アーティガンは、役者を決めたうえでセリフを書く「アテ書き」だったそうですね。

渡辺:そうです。まあ本人も「周りはナチュラルな演技してるのに、俺だけこんなんでいいの?」みたいな感じで困惑してたみたいで(笑)。まあ、現実世界にもいる、ちょっと芝居がかった人ってことで無理矢理納得してもらいました。
でも話数を重ねるごとにノリノリになってきた感じですね。

――17話「Head Over Heels」はアーティガンが主役かと思うほど存在感があります。アーティガンの中には異なる人格がいたことも印象的で、前向きな性格のポジティガン、後ろ向きな性格のネガティガン、そしてアーティガンという3役を宮野さんが演じて話題になりました。

渡辺:本当のミュージシャンでも、やっぱりスーパースターである自分を演じてる部分ってあるみたいなんですよ。
そのうちどっちが演じてるキャラなのか分かんなくなったり、ノイローゼになったりという、実際にあるような話を多少、いやだいぶデフォルメして見せたということで。当初の予定を脚本のうえのきみこさんが勝手にふくらませたという部分もありますが(笑)。

■“奇跡の7分間”はこうして生まれた




――12話「We’ve or Only Just Begun」と24話(最終話)では、脚本も自ら手がけていますね。

渡辺:基本的に自分は、話の出だしと終わりを考えるのが好きなんです。それで、1クール目と2クール目の最後であるこの2話分はもう先に考えてあった。
自分の中でイメージがかなり固まってたんで、脚本家に細かく説明するより自分でやったほうが早いかなと。

――最終話はシナリオの時点でかなり明確に映像のイメージができているように感じました。

渡辺:そうですね。ラストの“奇跡の7分間”のイメージは、企画書の段階からありました。
でもそれは自分しか分かってないわけで、周りの人からは「あんまりハードル上げないほうがいいんじゃないの?」とさんざん言われた(笑)。

でも皆さん、考えてみてほしいんですけど、アスリートがまあまあ飛べそうな位置にハードルを置いてそれを飛んだとしても、そんなの面白いですか? やっぱり、とても飛べそうにない高い場所にハードルを置いて、それに挑戦するという、その姿こそが感動的なのであって、もちろん飛べればそのほうがいいけど、このさい飛べなくたって構わないんです(笑)。

――“奇跡の7分間”では音楽の持つ可能性を描きたいと思っていたのでしょうか。

渡辺:それもあります。そもそもこの作品のベースにあるのは「音楽はそれがいかに通俗的な大衆音楽だろうと、神聖かつ崇高なものであり、人の心さえ癒やす力を持つ」という考え方ですからね。もう宗教みたいなもんです(笑)。
でも周りからは、「そんな誰もが納得するようなすごい曲が作れるのか」と憂慮されて。

――7分は曲としても大作ですからね。

渡辺:プロデューサーにも長すぎると言われて、「じゃあ“奇跡の5分間”にしてやれ」「いっそ“奇跡の3分”でどうだ」とかいう話も出たけど(笑)、語呂も悪いし、なんか中途半端に妥協してる感じだし、ってことで7分のままでいかせて頂きました(笑)。

あとは誰に発注するかというとこで、エヴァン・ボガート&ジャスティン・グレイの作曲家コンビがここまでいい仕事をしてくれてたんです。
6話のクリスタル曲と、12話のアンジェラ曲、あと16話のフローラ曲という、素晴らしい曲たちを書いてくれた彼らに発注することにして、「これを作れるのは君たちしかいない」「7分間の奇跡の名曲を作ってくれ」と無理矢理なオーダーをして(笑)。
「そんな発注聞いたことない」とか言ってたらしいけど(笑)、最終的には見事に期待に応えてくれました。

――けっこう苦労もあったのでしょうか?

渡辺:そうですね。でもまあ「We Are The World」を作ったマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーも、プロデューサーのクインシー・ジョーンズから同じようなことを言われてたみたいだしね。「人は集めたから、あとは君たちが大名曲を作るだけだよ!」みたいな(笑)。

――最後に。『キャロル&チューズデイ』は渡辺監督の集大成といっても過言ではない作品だと思います。そこでファンが気になるのが、今後渡辺監督はどういう作品をつくっていくのか、ということです。

渡辺:誰かみたいに引退宣言して、すぐ撤回とか(笑)。いや引退はしませんけど、だんだん体力的にTVシリーズは厳しくなってきたし、あと何本作れるかわかんないんで、もう自分の好きなものだけやろうかなと。

そんなこと言っても、随分と制作費も使っちゃったし、これで全然売れないともう仕事が来なくなっちゃうんで、ブルーレイやらサントラやらを買っていただけると大変にありがたいなと(笑)。こういう作品がまた見たいなって人は、次回作への投資だと思って是非ともお願いします(笑)。

◆ ◆ ◆

『キャロル&チューズデイ』(C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』公式サイト
http://caroleandtuesday.com/?lang=ja
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《ハシビロコ》

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