本事業は、日本動画協会によって選出されたオリジナルアニメ企画に文化庁が制作予算をつけ、実務経験3年未満の若手アニメーターたちがその制作を通じて日本のアニメ特有の技術を学ぶというものだ。
予算は制作費のほか若手アニメーターたちの給与などにも使われるが、使用用途や金額は文化庁と動画協会によって厳格に定められており、作品制作と教育以外に使うことはできない。
また若手アニメーターたちは作品制作だけでなく動画協会が実施する講座に参加するための時間も設定されており、受講が必須となっている。
講座では業界屈指のクリエイターによる作画実習や様々なアニメスタジオの経営者らによるレクチャー、実際に体を動かして“動き”を学ぶ実技授業に加え、著作権やアニメーターに関係の深い税金・年金や確定申告の決算書の書き方など、プロアニメーターとして必要な知識と技術を総合的に指導する。
まさに国とアニメ業界全体が連携し、日本のアニメの未来を支える人材を育成するプロジェクトだ。
「あにめたまご2019」で選出された4つの作品制作プロジェクトのうちの1つが『チャックシメゾウ』だ。
本作の企画・制作はTVアニメ『ちびまる子ちゃん』や『世界名作劇場』シリーズで知られる日本アニメーションが行った。
今回は同プロジェクトを担当した西山映一郎監督(『ちびまる子ちゃん』作画監督など)と山下裕文プロデューサーに、制作の模様や若手クリエイター育成についてお話を伺った。
『チャックシメゾウ』

【ストーリー】
開いているチャックを見つけたら何でも閉める、チャック妖怪の由緒正しき一家がいた。しかし、現在修行中の息子チャックシメゾウは、未だに一度もチャックを閉めたことがない。ある日、彼は小銭入れのチャックを閉め忘れて500円玉を落とした少年ひろきと知り合い、二人とも母親が厳しく口やかましいということもあって意気投合。一緒に家出してひろきのおじいちゃんの家に赴こうとするが、なぜか妹ちえも同行する羽目になり……。
【取材・構成/いしじまえいわ】
>あにめたまご2019特集ページ
■日本の日曜夕方を支える若手アニメーターを育成!
――今回日本アニメーションさんが「あにめたまご」に参加することになった経緯について教えてください。
山下裕文プロデューサー(以下、山下P)
弊社は2年前に「あにめたまご2017」にも参加し、『げんばのじょう-玄蕃之丞-』という作品の制作を通じて若手指導を行いました。その時「やってよかった!」と思えたのが今回も参加した理由です。
西山映一郎監督(以下、西山監督)
2年前に指導される側だった武本(心)くんと篠田(美咲)さんが今回それぞれ作画監督と中堅原画として指導する側に回ってくれました。
――「あにめたまご」による若手育成が次に繋がり、着実に効果を上げているわけですね。今回、指導される側のメンバーはどういった方々だったのでしょうか。
山下P
弊社から2名、フリーランスの方が1名、『サザエさん』制作のエイケンさんから4名、『ちびまる子ちゃん』の作画協力をしていただいている西山監督の古巣でもあるオープロダクションさんから2名の全9名です。

――まさにこれから毎週日曜日の夕方のアニメを支える若手の方々が参加されたんですね!
山下P
そういう見方もできますね(笑)。
実際エイケンさんとオープロさんから来た方々は『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』の作画にも携わっているそうです。
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