なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第6弾は、P.A.WORKSの代表である堀川憲司氏にインタビュー。アニメ制作の心得やアニメーター育成事業、地域活性化などの取り組みについてうかがった。

インタビュー スタッフ
注目記事
なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】
なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】 全 15 枚 拡大写真

作品を導く「問い」



――P.A.WORKSはオリジナル作品を多く手がけ、どれも成功させている稀有な会社だと思います。成功の要因はどこにあるのでしょうか?

堀川
わからないですね。今までだとオリジナルの企画だった時に、こういうものを作りたいという話をするんですが、それはストーリーというよりもテーマなんですね。
こういうテーマであって欲しいという話を監督とシリーズ構成の方とはしていました。

テーマといっても、一番大切なのは愛なんだよとか、友情なんだよとか、そういう作品の作り方ではないんですね。
そういうものよりも、現代社会や日常の中で感じていること、それについて深く考えてみたいなという好奇心がまずあってですね。で、その答えはなんだろうというのが始まりなんですね。

――問いの方が先ですね。

堀川
そうです。僕らはこの問いの答えを求めて作品を作っていこうと。だから、うまくいかない場合は最終回までに答えが出ない怖さはあるけれども、興味のあることを問い続けながら、作品を作るということは非常に面白いなと思っています。

その問いがあると、じゃあキャラクターがどういう方向に何を考えて動くかとか、どういう事件があったほうがいいだろうだとか、そういうものも考えやすくなるというか。
全体としてはこっちの方向でその問いに対する答えを導く方向に流れができていきます。

作品の企画は、今年に入ってから若いプロデューサーにも任せている部分があるんですが、オリジナルを作るときには、「これは君たちが何を問う物語なのか」ということは頭に入れておいてくれという話をしています。

どうしてもオリジナル作品を企画から立ち上げて3年ぐらいかかるんですよ。で、3年間ずっと考えながらものを作るときに、一過性のもので終わるというのは見る側はいいんですけど、作る側はそれだと物足りないというか、自分の情熱や時間を3年間かけた分の手応えのある何かが返ってきてほしいというものもありますね。

何のためにアニメを作るのか



――きっかけとなった具体的な作品があるんでしょうか?

堀川
最初は『花咲くいろは』だったんです。若い子たちが仕事を始めた時はどんなことで悩んで、それをどう乗り越えてきたかとか、そういうのを記録しておきたいという気持ちで。
僕らもここで若手を育ててきたので、クリエイターが同じようなテーマでぶつかったり、色んなことにつまずいたり、悩んだりということがあったんですね。

『SHIROBAKO』だったら、僕ら楽しんでアニメーションを作ってるんですけれども、業界自体の評判や「大変だ大変だ」って悲鳴なんかが聞こえてくる中で、60年前に日本でも商業アニメーションが始まって、僕らが受け継いできたものや、これから先に渡さないといけないことってなんなんだろうと。
大きく言ってしまえば、「何のためにアニメーションを作っているんだろう」という問いですね。

『SHIROBAKO』も答えが最初にあったわけではなくて、各話毎に「こういうことってよくあるよね」という現場のトラブルとかを話し合いながら、それに対してひとつひとつ、答えはこうじゃないかこうじゃないか、と確認をしながら作っていったんですね。

最終的に僕らはこういうものを受け継いできて、なんのためにアニメーションを作っているんだというのは、人それぞれなんだけれども、僕自身の答えとしては、主人公の最後の打ち上げのセリフの中に出来るだけ入れたつもりです。


――そのような作り方を経験したチームはもっと凄いものが作れそうです。

堀川
物を作る人間って好奇心とかね、探究心がすごく大切だと思うので、世の中に対してクリエイティブな仕事をする人っていうのは、なにか問題があったときに誰かがよく言ってるような答えを出さないんです。
「本当にそうなんだろうか」って疑ってみて別の視点から自分たちの答えを出そうっていうところがクリエイティブな部分だと思うですよね。

若いクリエイターにはそんなことを考えながら作って欲しいなと思います。でも一方で、その考え方自体が今はもう昭和くさいって面もあると思います。

例えば物語で、人間関係においてこういう問題が提示された。これまでの王道でいけば、それを探求していくとこういう物語になるんだろうなっていう感覚が僕の中にはあったとしても、若いクリエイターは「そこまでは踏み込みません」「そこまでは表現しません」と意図的に止めたりします。「なるほどね」って思います。

それは人間関係を築くことができなかったという失敗ではなくて、意図してそこにいかないという判断。それが今の世代の考え方としてあるんだなと。
いまの視聴者の年齢層と近い感覚でものを作るということを、僕はそういうふうに見ています。

→次のページ:10年、20年と残る作品を作る
  1. «
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 4
  6. 続きを読む

《Tokyo Otaku Mode》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]