なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第6弾は、P.A.WORKSの代表である堀川憲司氏にインタビュー。アニメ制作の心得やアニメーター育成事業、地域活性化などの取り組みについてうかがった。

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なぜP.A.WORKSのオリジナルアニメは心に響くのか? 代表・堀川憲司が明かす制作の心得【インタビュー】
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10年、20年と残る作品を作る



――今のお話につながりますが、P.A.WORKSの作品にもチームにも、違った価値観を受け入れるダイバーシティを感じます。

堀川
『サクラクエスト』でのテーマのひとつはその異文化共生というものなんですよね。継承する文化とか、新しい知恵、別の良い考えを咀嚼してどんどん吸収していくという考え方です。

だから先程の若いクリエイターの違う考えの話のように、吸収できるものや面白いものがないだろうかということは考えるべきだと思いますよね。特にものを作る人間っていうのはそういう目でみるべきだと思います。

随分前に読んだ本で『一万年の旅路』という本があるんです。アメリカの先住民のイロコイ族が、わずかな人数で世界を流浪しながらどういう生活をしてきたかという何千年、何万年にもわたる口承史の物語です。その本を読んだ時に、非常に刺激を受けたんですね。

その一族の中に語り部がいます。自分たちが得てきた生きる知恵や体験っていうのを、ストーリーにすることでずっと語られるものにするんです。ものすごく面白く語れると、みんながその物語に興味を持っていくんですね。

これはアニメーションでもそうだし、小説でもそうだし、起こったことをそのまま伝えるではなくて、形を変えたとしても異化したとしてもその中に大切なことが含まれていれば、本当に本質をついたものであればずっと残っていくでしょう。

僕らが10年、20年とね、残る作品を作りたいっていうのはそういうところにあるんです。色んな知恵とか文化とか作品に記録したものをエンターテイメントにすることによって、論文を読むよりも興味を持ってもらって、広がっていく。そういう面白さがあると思うんですね。

継承する伝統を形に



――P.A.WORKSでは東京から離れた場所であるからこそ、アニメーターの教育と育成にとても力を入れている印象があります。

堀川
アニメーションにはそれぞれに好きなスタイルがあります。ただ基本的なことに関するきちんとしたカリキュラムがあって、それを教えていこうというものが、この業界には無さ過ぎるんだと思います。

もうすぐP.A.WORKSのカリキュラムが形になるんですね。「P.A.WORKSの作画としてはこれを継承していくんだ」「演出はこうするんだ」っていう会社としての伝統ができる。それを毎年、毎年更新していく。こうしようああしようって。

他のスタジオに行ったら変わるかもしれないけど、P.A.WORKSではこれを大切にしていくんだっていうものです。こうしたカリキュラムが各会社で確立していくと、今よりも人を育てるってことに関しては良くなるんじゃないかと思いますね。

今年は春から養成所も始まり、毎日どういうことを教えていこうかとか、実践で役立つのはこの技術じゃないだろうかとか検討しながら教えているので、この取り組みが数年でどうなるか、花開くのかってのは楽しみでもあります。

→次のページ:地方とクリエイターを繋ぐ物語
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