アニメ、ゲーム、漫才……様々な要素が交わったこの『ポンコツクエスト』で監督・脚本・編集・声優などを務め、ほぼ一人で制作を行っている作者・松本慶祐とはどのような人物なのか。
自身の作品作りに影響を与えたものは何か?ほぼ一人という体制でどのようにアニメを制作しているのか?そして、“スペース地蔵リーチ”などの独特な笑いはどのようにして生まれたのか?
松本監督にとって“初”となるこのインタビューで、その人物像に迫りました。
[取材=沖本茂義、小野瀬太一朗/構成=小野瀬太一朗]
『ポンコツクエスト~魔王と派遣の魔物たち~』
https://www.vap.co.jp/ponque/
>『ポンコツクエスト』アニメ!アニメ!特集ページ
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――『ポンコツクエスト』(略称:ポンクエ)の配信がスタートしてから4年半ですが、現在の心境を教えてください。
松本
こんなに続くとは思ってなかったです。
今では『ポンクエ』グッズが出たり、コラボカフェを展開したり、色んな有名作品とコラボさせて頂いて……感慨深いですね。
Twitterでもフォロワーが増えて、この4年半でファンがちゃんと増えているんだなっていうのを実感しています。
たまにファンの方から手紙を頂けるのも嬉しくて。荒々しい文字で「『ポンクエ』大好きです!」と書いてあって、“子どもからもファンレターが届いた!って思ったら28歳・男性と書かれてあったり、そういうこともありますが(笑)。
――『ポンクエ』はアニメファンだけでなく、普段アニメを観ない人にも馴染みやすく、幅広いファンがいる印象です。松本監督はどうとらえられていますか?
松本
僕自身がアニメをそんなにいっぱい観るほうじゃなく、どっちかというとお笑いが好きなんです。
『ポンクエ』は、形はアニメですが、中身はボケとツッコミを意識した漫才的な笑いなので、アニメファン以外の人にも観やすいようになっているんじゃないかな?とちょっと思います。
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――松本監督が影響を受けたお笑い芸人の方はどなたでしょう?
松本
僕は今32歳のダウンタウン世代でして。子どもの頃にテレビで観てた『ダウンタウンのごっつええ感じ』の影響が一番強い気がします。
あと、有吉弘行さんのラジオも好きでよく聞いてるんですけど、『ポンクエ』キャラの毒々しさや口の悪さはその影響を受けていると思いますね。
――『ポンクエ』の笑いでこだわっている部分はどこですか?
松本
キャラクターの喋り方ですかね。
魔物や魔王が出てくるRPG的な、現実にはありえない世界観ですが「現実でこんなこと言わないだろう」という言い回しは避けて、現実の会話っぽくなるようにしています。
台本を口に出して読んでみて「ここ、なんかあんまり現実感ないな」と思ったツッコミは短くしたり。
――RPGのようなファンタジー世界で、ポンコツな「カク」と「イムラ」なグダグタな日常が描かれるわけですが、そもそも本作の着想はどこから得られたのでしょうか?
松本
僕はお笑いもそうですが、ゲームもすごく好きで。たぶん、一番の趣味がゲーム。
アニメを作るという企画が上がった時に、自分が一番興味あるものを題材にしたら、ネタを考えやすいかなぁ……というところから、RPGのパロディを作ることにしました。
魔物のキャラクターだったら面白い見た目のヤツもいっぱい出せるので、そこら辺も僕に合ってるんじゃないかと思っています。
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――その中で、最初に生まれたキャラクターは誰ですか?
松本
最初はカクとイムラですね。そこから仲間モンスターとして、色や性格などバランスをよく考えつつ、ミツイ、クロヌマ、ツチダが増えました。
一番お気に入りのキャラクターはカクです。「主人公だからキャッチーにしないと」「つるっとしてるやつよりももふもふしてるほうが可愛いな」というところから生まれた造形です。カクについている角は、魔物の象徴でもありますが、猫耳的な可愛さを表現したデザインでもあります。
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――主人公のカクは可愛い見た目ながら、中身は結構なクズというところが非常に印象的です。
松本
“可愛いキャラに可愛くないことやらせる”という手法がやりやすいんです。
僕の地声はそのままだとおじさんなので可愛くないですが、ボイスチェンジャーで声を変えて、カクに合わせると、悪いことを言っても見た目が可愛いから許せる、みたいな。
そしてカクがひどい発言をしても、それをイムラが「そういうこと言っちゃダメだよ!」って訂正させる形を取ると割と色々なことができるし、主人公がクズでよかったなって思いますね(笑)。
――松本監督は、カクやイムラを始め、ご自身でたくさんのキャラクターを演じていらっしゃいますが、声を当てる際に役作りみたいなものはしていますか?
松本
一応しています。
カクとイムラは自分に近い声で出せるように……イムラは普段通りの自分で、カクは普段より高い声で喋ってボイスチェンジャーを使っているだけです。やっぱり自分の話しやすい喋り方じゃないと違和感が出てくるので。
演じていて大変なのは、“アニメキャラっぽい”感じで喋るミツイと、裏声を出さなきゃいけないクロヌマ。
クロヌマなんて、やっている内にどんどんかすれて声が出なくなります(笑)。
ミツイとクロヌマが一緒にいる回が一番辛いですね。
――お一人で複数のキャラを演じるとなると、どのようにアフレコを行うのでしょうか?
松本
台本通り、時系列で喋るキャラクターを順番に、一言一言の録音です。
アフレコの時点で、ある程度自分の間で喋っているんですが、テンポや間は後でじっくり調整します。
今の時点で二十近くのキャラを演じているのですが、声のバリエーションがもうなくなってきています(笑)。
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――松本監督の演じるキャラクターの他、たまにゲスト声優さんの演じるゲストキャラも登場しますね。どういう流れで、声優さんをゲスト起用しようと思ったんですか?
松本
『ポンクエ』のキャラクターボイスを一人でやっていて、女性の声やかっこいい声など、どうしても自分に出せない声があって。
「出せない声は声優さんにやってもらうのはどうでしょう?」という話が挙がり、せっかくなら特別なキャラを演じてもらおう……で、生まれたのが四天王です。
四天王はもともと設定があったわけではなく、声優さんが決まってから考え始めました。
――これまでカツラギ役として小野賢章さん、カザミ役として悠木碧さん、カイドウ役として内田真礼さん、ヤマダ役としてよゐこの有野晋哉さんの4名がゲスト出演していますが、キャスティングについてはいかがでしたか?
松本
最初の小野さんは、特に基準設けずに「勢いのある人にしよう!」みたいなノリだったんですけど(笑)、その後は「ゲーム好きな人を呼ぼう」という方向になりましたね。
有野さんは、本職の声優さんが3人続いたからちょっと変化を付けたくて。収録の時、こっちの想定していなかったアドリブなど入れてきてすごく面白かったです。
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――今後、「こういう人に出て欲しい」という希望はありますか?
松本
今のところはそんなに考えていないんですけど、個人的にやりたいなと思っているのは“クロスオーバー”です。
以前、『デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー』とのコラボ動画を制作したときに、『デジモン』天沢ケイスケ役として声優・浅利遼太さんに出て頂きまして。
そういった形で、声優さんを呼んでキャラを作るというより、その人が既に持っているキャラクターで『ポンクエ』に来てもらえたらな、と。