「ポンコツクエスト」松本慶祐監督インタビュー 影響を受けたのは"お笑い"?モノ作りの根底にあるものは… 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「ポンコツクエスト」松本慶祐監督インタビュー 影響を受けたのは"お笑い"?モノ作りの根底にあるものは…

ブラック企業「魔王軍」に務める社畜モンスターたちのグダグダな日常を漫才のようなテンポで描き、じわじわと人気を獲得してきた『ポンコツクエスト』。

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「ポンコツクエスト」松本慶祐監督インタビュー 影響を受けたのは
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――お笑いから多くの影響を受け、ご自身で脚本を書いて、キャラクターも演じて……という松本監督ですが、これまでに芸人という道は目指していたのでしょうか?

松本
お笑いはあくまで趣味でしたね。
お笑いもゲームも好きで、そして絵も描いていて。好きな物が色々ある中で、絵に関する仕事がしたいと思っていました。

とはいえもともとアニメの道に進みたかったわけではなく、ゲーム会社に就職したかったんです。当時、僕が通っていた東京工芸大学のデザイン学科には、絵が描ける人、デザインができる人はいっぱいいたんですけれど、アニメが作れる人は少なかった。それで「周りでやっている人間が少ないものをやった方が楽しいんじゃ?」と思い、卒業制作で10分くらいのアニメを1人で作ってみたら面白かったんです。
その後も、『ヤイヤイ森のコミー』という儲けにもならない自主制作アニメを趣味で作ってYouTubeやニコニコ動画に上げていたんですが、それがキッカケで『ポンクエ』に繋がりました。

――松本監督が影響を受けたアニメや、意識したクリエイターの方

松本
意識したクリエイター……。
ショートアニメは、被るとアレなので敢えて観ないようにしていますね(笑)。

僕は子どもの頃、そんなにアニメを観ていなかったんですが、大人になって『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』は観ました。
ああいうお洒落なフォントの使い方は、僕が『ポンクエ』と別で監督を務めている『せいぜいがんばれ!魔法少女くるみ』の方で影響を受けていると思います。

――アニメより、むしろお笑いやゲームからの影響が大きい松本監督だからこそ、『ポンクエ』の独特な味わいが生まれているんだと思います。また、ほぼお一人で制作されていることも大きな特徴ですが、実際にどのような流れでつくられているのでしょうか?

松本
まずプロットを作って、台本を書いて、声を録って、最後に画を描く……という流れですね。
あらかじめ「今回はこれくらいだろう」と想定している作画の量があるのですが、たまに声を録ってる内に作画シーンが増えていくことも。

実際の制作風景


――プロット段階だと、どのようにアイデアを練っているのでしょう?

松本
基本的にRPGのパロディ物なので、“あるある”からその回の題材を選んでいます。
例えば「今回は“勇者が人の家の壺を割る”ネタを使おう!」とベースを決めて、その“RPGあるある”に“現実のあるある”を混ぜたりしています。

――具体的なネタの話になってしまうのですが、第三十二章「賭博」に出てきた“地蔵スロット”や“スペース地蔵リーチ”といった独特な発想はどこから生まれるのですか?

松本
なんなんですかね(笑)。
あの、うちの会社Pie in the skyは突発的に“大喜利”が始まることが結構あって。飲み会の途中で小さいホワイトボード出したりして。
「賭博」の時も、「スロットのモチーフと言えば?」と大喜利をやって、なぜか地蔵が出てきて……(笑)。
こういう、芸人の真似事みたいなことをよくやる会社です。

――そんな、良い意味で“堅くない制作環境の空気”が作品からにじみ出ているように思います。

松本
でも僕が“お硬い空気”を知らない、会社員経験の少ない人間だからこそ、一応“ブラック企業の派遣社員”というコンセプトから始まった『ポンクエ』で“会社員あるある”をあまり入れられないという悩みも。
ゲームやクズの引き出しは結構あるんですけどね。

――もともとゲーム会社に就職したかった、とおっしゃっていましたが、今でもゲームを作りたいという意欲はありますか?

松本
そうですね、最終的に『ポンクエ』がゲームになったらいいなと思います。
ゲームになったら、僕の中では“達成”という気持ちですね。まあ、“普通のRPG”にはならないでしょうけど……あ、すっごく酷いソシャゲを作ってみたいという気持ちもあります。滅茶苦茶あこぎな感じの(笑)。

前に釣りの回で「有料でガチャ引いたらクソみたいなアイテムが出てきた」というネタをやりましたが、そういうあこぎな部分を前面に出して作ってみたいですね。
本当に課金をさせるかはわかりませんけど。


――ゲーム化の他に、今後の『ポンクエ』に望む展開などはありますか?例えば、劇場版アニメ化など……。

松本
僕、長い映像作品が観られないんですよ(笑)
なので劇場版のような展開で、話を長くするとしんどいなと思っていまして。

今後の展開……そうですねぇ。
『デジモン』さんとのコラボの時、ゲーム作品と一緒に何かできたのが嬉しかったんです。
なので、もっとゲームとのコラボのお話が頂けたら。
特に、タイトルに“モンスター”が付くゲームがいいなって思います(笑)。最近出たばかりの『モンスターハンター』とか。

あと、去年スイーツパラダイスとコラボして「ポンコツクエストカフェ」が開催されたんですが、ああいうカフェは面白いと思っています。
テーマパーク感というか、作品の世界観に入り込めるのがいいですね。
グッズも、まだ出てない種類のものを出したいなと。カクの着ぐるみなどを是非作りたいです。

――『デジモン』のほか、様々な映画や漫画などともコラボを行っていますが、他作品を『ポンクエ』の世界観に落とし込む際の配慮や苦労などはありますか?

松本
『ポンクエ』は結構汚いことを言う前提の世界なんで、割と許してもらえています。
シリアスな映画とのコラボでも、作品のツッコミどころを引っ張り出してカクが色々言っても、意外と「どうぞどうぞ」と。
コラボでもメタ的な発言をしてもいいし、露骨に宣伝っぽいことを言わせてもいいし、そこはとても便利です。

『ポンクエ』のLINEスタンプに誤字が発覚した時に謝罪動画をアップしたんですが、半分不真面目な感じで謝罪しても笑って許されたり、主人公がクズで良かったと思う点ですね(笑)。


――お話をうかがっていて『ポンクエ』は非常に幅広い表現が許されている作品だと思うのですが、松本監督ご自身が気を付けているネタなどはありますか?

松本
ネットスラング的なパロディなど、オタクにしかわからないネタはなるべく入れない……でしょうか。
オタクネタって鮮度がすぐ悪くなると思っていて。例えば、今はもう「キボンヌ」のような2ちゃん用語もあまり目にしませんよね。
そういうネタではなく、いつ観てもあまり古さを感じない笑いを心がけています。

ゲームのネタも初期の『ドラクエ』や初期の『バイオハザード』など、ちょっとクラシック化しているものをパロディにしよう、と。
ソシャゲのネタはちょっと扱いましたが。

――話は少し変わりますが、通常のRPGなら“勇者が魔王を倒す”というゴールがあります。しかし、『ポンクエ』の主人公は勇者ではなく、ブラック企業の社畜モンスター。この作品のゴールはどこでしょう?

松本
ゴールは考えてないです。
なるべく話も進めたくないんですよ。なぜなら、話を進めてしまうとやれることが減っていくから。僕としては、『ドラえもん』や『サザエさん』のような進まない世界でずっとやっていきたいですね。

『ポンクエ』自体の展開としても、劇場版アニメ化などではなく、今の温度で長く続けていければと思っています。月一更新でちょっとずつやってきた作品なので「その感じが好き!」という方もいるでしょうし、そこは崩したくなくて。
深夜番組がゴールデンタイムに進出したら急に面白くなくなった、といった話もたまにありますよね。今後も最初の感じを忘れずに、ずっと長く続けていけたら、と。もうすぐ50回くらいだと思うので、とりあえず100回は行きたいですね(笑)。

――最後に『ポンクエ』ファンの方と、これからはじめて観る方へメッセージをお願いします。

松本
毎回最新話の感想で「今回は当たりだ!」という人も「最新話はネタ切れか?」という人も両方いるんですが、あんまりガーッてならずにフラットに、気負わず観て欲しいですね。
僕もなるべく温度感を変えないようにしているので、観る側も温度感が変わらないような関係でやっていければ。
リッチでヘビーなアニメが多いので、たまに気楽に『ポンクエ』を観て「面白いな」と思ってもらえるとありがたいなと思っています。

新しいファンの方も、『ポンクエ』は途中から観てわからない話ではないと思いますが、気に入ってもらえたら過去の話も一挙放送などでバーッと観てもらえたら嬉しいです。

『ポンコツクエスト ~魔王と派遣の魔物たち~』

■放送情報、配信情報(シーズン5)
<BS11>4月11日より毎月第二水曜23時54分から放送開始!
<AbemaTV>BS放送の翌日0時からWEB最速配信!
<YouTube> BS放送の翌月1日0時から配信!
※その他配信サイトでも好評配信中、詳しくは公式HPまで

■スタッフ
監督・脚本・声優:松本慶祐
企画:松本慶祐・新海岳人(Pie in the sky)
プロデューサー:堀越 大(VAP) 遠藤純一(Pie in the sky)

>公式HPはこちら

>YouTube視聴ページはこちら

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《収録内容》
本編:第三十七章~第四十八章

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・ポンコツクエストオリジナルの安眠枕
・キャラクターたちのオリジナルボイスが収録された安眠CD付き!

<映像特典(初回限定版&通常版 共通)>
・カク、イムラによる「人気投票結果発表」
・人気投票上位のキャラクターによるオリジナルエピソード「対決」

※内容、仕様等が変更になる可能性があります。

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《小野瀬太一朗》

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