――本作のキャラクターをデザインする際に、平坂先生とどういった話し合いがあったのでしょうか?
カントク
最初のレギュラーメンバーに関しては、物語がすでにあったので、それを読んでからデザインする形でした。全体的な話で、平坂先生からこういう風にしてくれと言うのはなかったのですが、それぞれのキャラクターに対してのイメージはいくつかありました。
たとえば、那由多の場合、僕のイメージではエリート女子高生なライトノベル作家のイメージだったので、固い感じで描いたところ、「もっと天才っぽく」「天然っぽく」というオーダーがあって、そこから調整していきました。

千尋に関しては、最初はもっと女の子っぽく描いていましたが、そこから中性的にしていく作業があったので、一番時間がかかったキャラクターです。絵描きには多いと思いますが、「女の子を可愛く描きたい!」というポリシーがあるので、中性的に寄せることに抵抗を覚えながら頑張って寄せていって、「ここだ!」と言うところでストップしてラインが決まった感じです。

――では『妹さえいればいい。』の女性キャラのなかで、一番可愛く描けたなと思うキャラクターは?
カントク
今思えば、京かなと。ウェーブがかかった髪型なこともあり苦労することもありますが、描いてて楽しいキャラクターなんです。自分でデザインしておいてなんですが、那由多と千尋に比べると、京の方が描いていて僕らしく描けたと思うことが多いです。

――平坂先生もお気に入りのキャラクターは京だそうです。なんでも毎回衣装や髪形は任せてもらっているそうですね。
カントク
最初は一応ひとつ決めようということで、アニメでよくしている基本の髪形ができました。でもその時に決めきれなくて、10種類くらい髪形のサンプルを並べたんです。大体の方向性は決まったんですが、「これだ!」と突き抜けるものが無くて、「迷いますね」と話していました。
その話し合いの中で、「よく髪形を変える子にしようか、おしゃれだし」ということで原作ではたまに変えています。最初の候補に無かったものやこちらからしれっと挿絵に紛れ込ませて、リテイクが無ければ「よし!」みたいな感じで、そのまま新しい髪形を勝手に増やしていたり。
――それ以外のところでこだわりなどはありますか?
カントク
実はあまりないんです。作品の世界に浸って描きたいというか。自分を出すことよりも、先生の世界観と強いキャラクターたちをいかにそのまま出せるかというところを徹底しています。
自分でこだわった部分だと、挿絵のイラストでは僕なりの構図だったり、京みたいにキャラクターの服装の提案をすることはあります。でもデザインの初期段階で僕からこだわりを出していくことはありませんでした。
――前作の『変猫』もそうでしたが、描くキャラクターが変態だからこそ意識している点があったりするのでしょうか?
カントク
変態にもよりますね。「普段はそんなに変態じゃないんだけど、ひとつの分野においてすごく変態である」みたいなキャラクターだと、普通の見た目の方がギャップが出るので、特に変態性を意識することはありません。
ただ、大野アシュリーや恵那刹那(ぷりけつ)みたいに頭から足の先までドップリ飛びぬけたキャラクターだと、見た目から個性的であって欲しいんです。だから変態かどうかはともかく、そういうキャラクターは最初からビジュアルも個性を持たせる方向性でした。同じ変態でも、キャラによって描き方が変わってくるんです。

――変態を細分化するということなんですね。アニメでは、カントク先生はどんな関わり方をしていますか?
カントク
実際にアニメを作るのはアニメ制作会社の方々なので、そちらの創作の邪魔にはなりたくなかったんです。だから深く関わるというよりは、あくまで原作としての関わり方と言うか、明らかに違うものだったら言うかもしれないという形です。
ただ、ひとつ大きな関わりだったと言えるのは、最終話に登場する作中作のライトノベル『妹さえいればいい!』の表紙を描いたことです。この小説は原作で非常に大切な作品なので、そこを僕がやらせてもらえるというのは光栄でした。
――アニメとなった『妹さえいればいい。』を見た感想は?
カントク
かなり納得しています。平坂先生が直接脚本を書いた事もあって、情報量の多い原作の良いところを、アニメ用に上手くデフォルメされていますね。面白いギャグや演出もアニメならではのものになっていて、これはこれでしっかり『妹さえいればいい。』になっているという感想です。
――アニメを見て再発見したことはありましたか?
カントク
もちろんです。原作の挿絵は1巻につき10枚、口絵を合わせて13枚ぐらいですが、アニメではアニメーターさんが枚数を描いてくださり、キャラクターの表情も動きが加わるので大変勉強になります。「このキャラクターはこういう時にこんな表情するのか」とか「この表情すごく良いな」と思うことも多いので、もしかしたら原作に逆輸入する可能性もありますね。

――キャラクターたちに声優さんの声が付いた印象は?
カントク
素直にアップデートされたという印象です。収録もたまに見学させてもらっているのですが、もう原作を読むとキャストさんたちの声で聞こえてくるんです。そうなる作品とならない作品があるのですが、今回は非常にハマっているなと思います。キャストさんの演技がキャラクターの個性をさらに固めてくれたというか、文字だけだと色々な発想の余地があったと思うんですけど、そこのラインをピシッと決めてもらえたのかなと。