『ホビット』は、小さくて臆病なホビット族のビルボ・バギンズを主人公に、竜に奪われた王国を取り戻す壮大な冒険が描かれる。このたび、ビルボ役の吹き替えを務める森川智之さんに、ビルボへの想い、そして第3章『決戦のゆくえ』の見どころをうかがった。
[取材・構成:沖本茂義]
『ホビット 決戦のゆくえ』
http://www.hobbitmovie.jp
―アニメ!アニメ!(以下、AA)
はじめに、『ホビット』のビルボ役を引き受けられたときの感想は?
―森川智之さん(以下、森川)
『ホビット』と聞いて、「大作だな」というのが率直な感想でした。『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚であり、世界中にファンがたくさんいる作品ですので。
ビルボ役のオファーがあったときは、正直意外でした。普段はどちらかというと“カッコいい路線”の役を演じることが多くて。「え? ビルボなの!?」と(笑)。
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―AA
たしかに森川さんは二枚目な役どころのイメージがあるので、今回のビルボは新鮮に感じました。
―森川
ビルボ役の俳優はマーティン・フリーマンですが、実は以前にも『SHERLOCK』(イギリスBBC製作のTVドラマ)のワトソン役で声を当てていたんです。でも、今回は上手くボイスマッチするか懸念がありました。ビルボはファンタジー世界のキャラクターで、なおかつ臆病な性格で、これまでの役とは少し毛色が違うので。オーディションで選ばれたときは、純粋にうれしかったです。
―AA
そのビルボを演じるにあたって、心がけたことは?
―森川
『ロード・オブ・ザ・リング』の冒頭でビルボが出てきますが、「あのビルボにどうやって近づけていこうか」と。それが出発点でした。
具体的には、「ホビット族」としてみんなが思い描いているイメージを大切にする。それと“青年らしさ”ですね。少年から青年になりかけの未成熟な部分を、冒険のなかで成長させていこうと思いました。
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―AA
1章、2章と、仲間との冒険を経てビルボは着実に成長してきました。今回『決戦のゆくえ』で再びビルボを演じられて、キャラクターに対する理解に変化はありましたか?
―森川
「強い子に育ったな」と感じました。何よりも“臆病さ”がなくなっていますよね。困難に直面しても、恐怖心を払いのけて仲間のために奮闘する。完結編のテーマである「絆」や「友情」といったものをビルボが体現してくれています。そこは皆さんに観てもらいたいです。
―AA
先日のイベントでは、トーリンとの関係性も見どころだとおっしゃっていました。
―森川
はじめの頃ビルボは、仲間から「臆病者」呼ばわりされて、下っ端的な扱いを受けてきました。でも、物語が進むにつれて仲間との信頼関係を着実に築いている。今回の完結編では、仲間との絆がより深く描かれています。本当の意味で「仲間」になったんだなと感じました。もう、泣けるほど感動なシーンもあったりします。まぁ、これはネタバレなので言えないですけどね(笑)。
―AA
ぜひ本編を観てくださいと(笑)。