藤津亮太の恋するアニメ 第9回 キスの記憶(前編)
アニメにおける”キス表現”は、どこに辿ることが出来るのか?その意味は?いま明らかにされる。藤津亮太さんの連載第9回のテーマは「キスの記憶」。
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藤津亮太のテレビとアニメの時代
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作・藤津亮太
どうにも世間の常識に納得しづらいことにまたまた直面して、考え込んでいるところにNがやってきた。いつも向こうの“壁打ち”の相手になっている身だ。少々、質問してもバチはあたるまい。N自身も意見がありそうな話題だし。
「あのさぁ、知り合いの結婚式に出たんだけれど、お約束で新郎新婦のキスがあってさ。あれって昔から苦手なんだよね。出生社への見世物としてはいいのかもしれないけど、どうなのかな? あれはうれしいものなの?」
そんな質問をぶつけた僕に対するNの第一声は……
「あれ、アニメの話題じゃないんだ」
だった。
いつもアニメの話題を振ってくるのはむしろNのほうなのだが、そんなことはすっかり忘れているようだ。
「まあ、映画のワンシーンみたいなものじゃない? 本人たちは映画の主役気分。観客は当人たちのそのコスプレ風主役気分を楽しむ感じ。つまり、みんな楽しいんだから、そんなところをわざわざ気にする人が少数派ってこと」
正しいのか正しいのかわからないが、歯切れだけはいい回答だ。
「今聞かれてちょっと気になったことがあったんだけど」
Nが続ける。
「アニメでキスシーンっていつごろから登場してるの? 私が子供のころ見た『ママレード・ボーイ』ってわりとキスシーン多かったなぁって思ったんだけど」
いきなりの無茶ぶりだが、ここで逃げるとNが二ヤリといやな笑いを浮かべるような気がする。サークルのH先輩に仕込まれた知識を総動員して、それなりの答えを用意しなくてはなるまい。
《animeanime》
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