藤津亮太の恋するアニメ 第9回 キスの記憶(前編)
アニメにおける”キス表現”は、どこに辿ることが出来るのか?その意味は?いま明らかにされる。藤津亮太さんの連載第9回のテーマは「キスの記憶」。
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藤津亮太のテレビとアニメの時代
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「ふーん。……それにしても、どうしてそんなに詳しいの?」
質問しといて「ふーん」だけかよ、と思わないでもなかったが、そこを追求するのはやぶ蛇になりそうだったので僕は黙っていた。
「学生時代にサークルに入ったら、うるさいH先輩って人がいてね、半可通なことを口にしようものなら、「おまえは、○○を見たことがあるのか」と突っ込まれて、徹底的に仕込まれたんだ。でもこうやって振り返ってみると、歴史の発展は必然だよなぁ」
「それはどういうこと?」
Nがまた突っ込みモードになってきた。めんどくさい雰囲気だ。
「キスって結局……前戯じゃない。だからキスをちゃんと描くようになったら、ポルノにつながるのは必然だってこと。『銀河鉄道999』だって、'79年だったからキスで終わったけど、もう少し後の時代に作られていたら『夏への扉』みたいに、年上女性が年下男子を翻弄する“手ほどきもの”になっていてもおかしくなかったかも(笑)」
そんな僕の軽口をムシしてNが言った。
「……ちょっと待って。現実にキスが、その……前触れなのはそうだけど、だからって映像の中におけるキスシーンまで同じ扱いにするのは間違いじゃない? 私、この間『とらドラ!』っていうの見たけど、あれの竜児と大河のキスシーンってすごく……」
「すごくエッチだったよねー。あれこそ、あのまま倒れ込んでもおかしくない雰囲気だ」
「違う違う!」
Nはすぐさま否定した。
「私はすごくロマンチックだって言いたかったの! ……Sの考えてるキスって、なんだかずいぶんと日本的よね」
何が日本的か知らないが……どうやらまた僕は、踏まなくてもいい地雷を踏んでしまったようだ。
《animeanime》
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