「日本三國」「超かぐや姫!」「とんがり帽子」「劇場版モノノ怪」 ツインエンジン発の4作品がアニメ界に照らした2026年上半期の光景 | アニメ!アニメ!

「日本三國」「超かぐや姫!」「とんがり帽子」「劇場版モノノ怪」 ツインエンジン発の4作品がアニメ界に照らした2026年上半期の光景

2026年上半期、ツインエンジングループの4作品が注目を集めた。コロリドの『超かぐや姫!』はブランドを更新し、BUG FILMSの『とんがり帽子のアトリエ』は原作再現の完成度を示し、スタジオカフカの『日本三國』は初の完全新作として人気獲得。『劇場版モノノ怪第三章蛇神』は20年の歴史に区切りをつけた。ツインエンジンは今後、ライトノベルやマンガなど原作事業にも注力していく。

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春アニメ『日本三國』第12話「聖夷滅亡」場面写真(C)松木いっか/小学館/日本三國製作委員会
春アニメ『日本三國』第12話「聖夷滅亡」場面写真(C)松木いっか/小学館/日本三國製作委員会 全 21 枚 拡大写真

2026年上半期、アニメファンの間で話題を呼んだ四本の作品ーーNetflixオリジナル劇場アニメ『超かぐや姫!』、『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』、春クールTVアニメ『とんがり帽子のアトリエ』(以下『とんがり帽子』)、同じく春クールの『日本三國』ーーはいずれも、ひとつのグループ、ツインエンジンが生み出した作品だ。

ツインエンジンは、フジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」の初代編集長・山本幸治によって2014年に設立され、アニメの企画・プロデュースを担う持株会社として複数のアニメ制作スタジオをグループ化する独自のモデルを採っている。現在20社近いアニメスタジオをグループ会社とし、IP開発から制作、宣伝、配給まで「自ら創り、自ら届ける」を掲げる。

またネットフリックスなどの配信プラットフォームと提携し、ときに既存の製作委員会方式を取らない独特なビジネスモデルで各スタジオが個性を発揮しながら作品を作り上げ、2026年上半期において、大きな存在感を放った。その作品たちを振り返りながら、ツインエンジンの現在地と今後について捉えていきたい。

『超かぐや姫!』スタジオコロリド ブランド像を更新しながら、新たなオリジナル制作の道を切り開く

『超かぐや姫!』場面カット

スタジオコロリド(以下、コロリド)はこれまで、映画『ペンギン・ハイウェイ』『泣きたい私は猫をかぶる』『雨を告げる漂流団地』といった、現代を舞台としたマジックリアリズム的な作品を手がけ、独自のブランドを築いてきた。ところが、コロリド作品の中で最も大きな興行収入を記録した本作は、これまでのスタジオのブランドラインとは少し異なる方向性を示している。

近未来を舞台に、バイトと学業に追われる女子高生・酒寄彩葉が、天真爛漫な少女「かぐや」と出会い、彼女に振り回される形で共に配信者としてゲームやライブなど楽しい日常を過ごす。しかし、かぐやが竹取物語さながら月へ帰るという別れを経て、彩葉は悲しみに暮れ、それでも前へと歩み出す。タイムスリップやヒューマノイドといったギミックを経て、ふたりは再会を果たす。

この物語は、従来のコロリドが描いてきた「現代日本のどこか」を舞台にした“非日常を経て日常へ還る”という構図からは離れている。舞台はVR空間が普及した近未来であり、主人公の彩葉も“元の日常”へ戻るのではなく、研究者の道を突き進んでいる。

とはいえ、『超かぐや姫』におけるコロリドらしさは確かにある。彩葉がかぐやとの出会いを通じて自身を動かし、家族との関係を前向きに変えていくという構図には、スタジオのDNAが息づいている。ブランドの土台を保ちながらも、新たな方向へ広げることに成功した一作といえるだろう。

また、山下監督がショートアニメを手がけたのちにオリジナル長編へと挑んだ『超かぐや姫』の企画体制は、ツインエンジンが掲げてきた開発モデルに近い。複数のショートを試作的に制作し、SNS上で反響を得たものを足がかりにシリーズ化していくという、オリジナルIP開発の手法だ。短尺作品で世界観やキャラクターの可能性を探り、その中で光った種を大きく育てていく。コロリドにとっても、この試みをあえてロールモデルとして提示しているように感じられる。

Netflix映画『超かぐや姫!』メインビジュアル

◆『とんがり帽子のアトリエ』/ BUG FILMS原作再現から次なるオリジナルへ スタジオの成熟を示す一歩

春アニメ『とんがり帽子のアトリエ』第1話「はじまりの魔法」先行場面カット

『とんがり帽子』は、白浜鴎による『月刊モーニングtwo』(講談社)連載の漫画(累計900万部)を、ツインエンジングループのBUG FILMSが全13話で映像化した作品だ。

魔法使いに憧れる少女・ココが、魔法使いの学び舎であるアトリエで、暴走した魔法によって石化してしまった母親を元に戻すため、姉妹弟子たちと魔法を学ぶ姿を描く本作を、BUG FILMSは原作の魅力を高いレベルで再現している。

当初は2025年の放送を予定していたが、クオリティ向上を目的とした制作スケジュールの見直しにより、放送時期は2026年春へと延期された。

2023年に公開したBUG FILMSのスタジオビジョン資料によれば、2026年は「オリジナルによるブランド強化」のフェーズに入る時期ではあるものの、現在オリジナル作品の発表はない。スタジオビジョンは公表時と変わらず、単純に『とんがり帽子』の制作延期により後ろ倒しになっていると考えると、BUG FILMSが次に公開する作品は、『とんがり帽子』のような原作付きの作品ではない、オリジナルになることが予想される。

2023年に公開されたBUG FILMSのスタジオビジョンによれば、2026年は「オリジナルによるブランド強化」のフェーズに位置づけられている。しかし現時点で、オリジナル作品の発表はまだない。スタジオビジョンの内容が当初から大きく変更されていないとすれば、『とんがり帽子』の延期によって計画全体が後ろ倒しになっていると考えられる。そうなると、BUG FILMSが次に手がける作品は、『とんがり帽子』のような原作付きではなく、オリジナルとなる可能性が高い。

『とんがり帽子』の制作を終える2026年上半期は、BUG FILMSにとってひとつの重要な節目となるだろう。

『とんがり帽子のアトリエ』

◆『日本三國』/スタジオカフカ スタジオ初の完全新作で示した、ツインエンジンの始動

春アニメ『日本三國』第11話「薪に臥して天を諭す」場面写真(C)松木いっか/小学館/日本三國製作委員会

松木いっかによる『マンガワン』(小学館)連載の同名漫画を原作とするアニメ『日本三國』は、ツインエンジングループのスタジオカフカがアニメ化を手がける作品だ。本作は、近未来ながら災害や戦争によって文明レベルが大正期まで後退した日本を舞台にした政治劇である。主人公の三角青輝は、弁舌と知略を武器に、三国に分裂した日本の再統一を掲げてのし上がっていく。その重苦しい世界観に、時折挟まれるフランクな言葉遣いによる笑いが交じり合う独特のテンポが評価を集め、Amazon Prime Videoでは春アニメランキング1位を獲得するなど高い人気を見せている。

スタジオカフカは、『魔法使いの嫁』第2期の制作に際してWIT STUDIOから独立する形で設立されたスタジオだ。『日本三國』は、出発点である『魔法使いの嫁』および共同制作となった『劇場版 モノノ怪』を除けば、スタジオカフカにとって初の完全新作アニメといえる。

ツインエンジンは17の関連スタジオを擁しているものの、これまでシリーズ作品の制作数自体はそれほど多くなかった。今年夏に公開される『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』も、長編に初挑戦となるOutlineが手がける作品である。代表作を振り返れば、コロリドを除くと『地獄楽』(MAPPA制作)や『しかのこのこのこのここしたんたん』(WIT STUDIO制作)といった他社制作作品が中心だった。そうした中で、ツインエンジンが自社スタジオの体制を整え、次々に新作を発表し始める嚆矢として、『日本三國』は位置づけられるだろう。

『日本三國』スペシャルビジュアル

◆『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』ツインエンジン 20年の歴史に区切りを打ち、1時代の幕を閉じる

『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』

ノイタミナ枠で『怪 ~ayakashi~』の1エピソードとして誕生してから数えて20年。ようやく迎えた『劇場版 モノノ怪』の完結は、同ブランドを出発点としているとも言えるツインエンジンにとって、大きな節目であることは間違いない。

『怪 ~ayakashi~』の時期から一貫して、フェミニズムの要素を取り入れ家父長制を批判してきた本シリーズ。『劇場版 モノノ怪』においても、大奥を舞台にした官僚制的な構造の歪みやリプロダクティブ・ライツの制限、制度による個人の抑圧、形式化した伝統の腐敗など、社会批判的な要素をより強く含んでいる。こうした姿勢は、ツインエンジンにとってひとつの転換をもたらした。

それは、ツインエンジン代表取締役であり中心的なプロデューサーでもあった山本幸治の、プロデューサー業引退である。彼がプロデュースしてきた『モノノ怪』シリーズは、ツインエンジンの映像制作における感性の中核を形づくってきたとも言える。今後は後進の育成に注力すると表明しており、『劇場版 モノノ怪 第三章 蛇神』は、ツインエンジンにとって明確な転換点として位置づけられるだろう。

『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』メインビジュアル

◆マンガ・ラノベ アニメを超えるツインエンジン

『超かぐや姫』がコロリドのブランドの方向性を更新し、短編からのステップアップによってオリジナル作品制作の流れを示した。『とんがり帽子』がBUG FILMSにとって原作ものからオリジナルへ向かう転換点と目され、『日本三國』が新作として発表されたことで、スタジオカフカをはじめとするツインエンジン各スタジオの制作体制が一斉に表舞台へと姿を現した。そして『劇場版 モノノ怪 第三章 蛇神』が、ノイタミナ枠と山本幸治プロデューサー時代の終幕を告げた2026年上半期。だが、ツインエンジンの変化はアニメ領域にとどまらない。

ツインエンジン全体を通して自社でのライトノベルやコミックといった原作事業に力を入れていることも見逃せない。2024年、ツインエンジンは元電撃文庫の編集者で『ソードアートオンライン』などの有名作で知られる三木一馬と組んで「アニセカ小説大賞」を立ち上げた。受賞作のアニメ化・書籍化を確約するこの賞には初回だけで6,000作品以上が集まった。

また、同年「ツインエンジン新人マンガオーディション」を発表し、「アニメ化するマンガを発信していく」という旗印のもと自社マンガレーベルとWEBマンガ誌の創刊に乗り出し、2025年12月に連載5本、読切5本の計10作品を配信し、今年の夏より本格的にマンガ事業を始動させることを明言している。

高いプロデュース力と多様なスタジオを有し、これまで製作と制作を両立してきたツインエンジンは、“原作を生み出す”段階へ。その歩みが次にどんな広がりを見せるのか、期待を込めて見つめていきたい。

(C)松木いっか/小学館/日本三國製作委員会
(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
(C)白浜鴎/講談社/「とんがり帽子のアトリエ」製作委員会
(C)ツインエンジン

《クコ》

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