アニメ・マンガに目がない「アニメ!アニメ!」編集部が、まだアニメ化されてはいないけれどぜひ読んでほしいおすすめマンガを紹介する連載<おすすめマンガ手帖>。今回は、『この恋を星には願わない』(KADOKAWA (it COMICS)刊)を紹介する。
幼い頃からいつも一緒に過ごしてきた冬葵と瑛莉と京。これまでずっと友達としての関係を続けてきたが、冬葵は瑛莉に対して友達以上の感情を抱いていた。そんなある日、3人は久々に遊園地に遊びに行くのだが、そこで京もまた瑛莉に思いを寄せていることを知ってしまう。冬葵はこれからもずっと瑛莉のそばにいたいという一心で、その恋心を抑え込む。
紫のあによるマンガ作品『この恋を星には願わない』は、2026年1月に5巻が発売され完結。最近ではフランス語版も発売されるなどグローバルに支持されている百合マンガである。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。
◆恋愛感情が友情を揺らすとき、人は関係の在り方を問われる

恋愛マンガにおいて、「好き」という感情は物語を動かすエンジンとして機能することが多い。だれかを好きになり、気持ちを自覚する、伝えるか迷う、そして関係が変化する。しかし『この恋を星には願わない』は、その定石をなぞるようでいて、どこか異なっている。
本作が描くのは恋愛感情の成就ではなく、その感情が生まれたことで揺らぎ始める関係性そのものだ。幼なじみの冬葵、瑛莉、京。長い時間を共有してきた三人の関係は、京の告白、そして交際を起点として少しずつ変化していく。冬葵の恋心は瑛莉の京の恋愛関係を崩そうとはしない。むしろ瑛莉との関係を守ろうとするのだが、その試みこそが彼女らの関係を変容させてゆくのだ。
◆恋と友情のあいだで、“好き”という感情を見つめ直す

『恋ねが』はまた、恋愛的な“好き”と友愛的な“好き”をを対等に並べようとした作品でもある。冬葵は瑛莉のことが恋愛的に好きであり、瑛莉は冬葵のことが友愛的に、幼馴染として好きである。彼女たちふたりがお互い向け合っている好意はその質が異なっていることがあきらかである。しかし彼女たちはその差異を理解したうえで関わり続けることを選ぶのだ。
一般的に「友達以上恋人未満」といった表現が流布しているように、恋人は友人のうえに置かれがちで、感情としても友愛よりも恋愛のほうが強いものとして捉えられがちである。しかし友達のことを友達として愛していることもまた、恋愛と同等に言祝ぐべきことである。『恋ねが』は、百合マンガとして”恋愛”を描きながらも、それとおなじくらい”友愛”も素晴らしいのだと伝える作品である。

恋愛感情はしばしば「結ばれるかどうか」という結果によって語られる。しかし『恋ねが』が見つめているのは、その手前にある揺らぎの時間だ。好きになったことで変わってしまうものと、変わらないでいてほしいもの。その相反する願いを抱えながら立ち尽くす登場人物たちの姿は、恋愛マンガという枠組みを超えて、青春そのものの痛みを映し出している。


