カラー所属・前田真宏、ジブリに携わった初期から「エヴァ」まで…キャリア振り返るドキュメンタリーが公開中 | アニメ!アニメ!

カラー所属・前田真宏、ジブリに携わった初期から「エヴァ」まで…キャリア振り返るドキュメンタリーが公開中

庵野秀明が代表を務める映像制作会社のカラー所属で、近年は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や『怪獣8号』、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などに携わったことで知られる前田真宏のキャリアを振り返るドキュメンタリー映像が、日本とクリエイターを題材としたドキュメンタリーを配信するArchipel(アルシペル)のYouTubeチャンネルにて公開中だ。

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庵野秀明が代表を務める映像制作会社のカラー所属で、近年は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や『怪獣8号』、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などに携わったことで知られる前田真宏のキャリアを振り返るドキュメンタリー映像が、日本とクリエイターを題材としたドキュメンタリーを配信するArchipel(アルシペル)のYouTubeチャンネルにて公開中だ。

前田真宏は、1963年福岡県北九州市生まれ、鳥取県米子市出身。カラーの作画部に所属するアニメーション監督、アニメーター、デザイナー、マンガ家だ。東京造形大学在学中に『超時空要塞マクロス』、『DAICON IV OPENING ANIMATION』、『風の谷のナウシカ』などの作品にアニメーターとして参加した。
1985年頃から本格的にガイナックス作品に携わるようになり、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』、『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』などで原画、設定、演出を担当した。1988年、布袋寅泰の「DANCING WITH THE MOONLIGHT」のMVにてアニメーション初監督を務めた。

1992年、ゴンゾの設立に参加し、世界初のフルデジタルOVA作品『青の6号』やアニメ『巌窟王』などを手掛けた。2012年にカラーに入社し、同年に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』にて監督、脚本協力、イメージボード、画コンテ、デザインワークスを担当した。2015年公開『マッドマックス 怒りのデスロード』では、コンセプトアート&デザインを務めている。
2021年、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にて監督、コンセプトアートディレクター、画コンテ、美術設定、原画を担当した。近年は、2024年よりスタートしたアニメ『怪獣8号』に怪獣デザイン、ディテールワークス、2025年4月より放送された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』にデザインワークス、画コンテ、ディテールワークスで携わった。また同年には、画集『雑 前田真宏 雑画集』の刊行を記念し初の展覧会「雑・前田真宏」も開いた。

公開中の映像「Mahiro Maeda: Between Frames - Reflections on a Lifetime in Animation」はそんなアニメーション業界の重鎮について、初期のスタジオジブリ作品に携わった時代から『エヴァンゲリオン』、そして現在のカラーに至るまで、キャリアを振り返り、歩んできた道のりを探るドキュメンタリーだ。

前田のアニメーションにおける40年以上のキャリアの歩みは、幾度も大きな転機を迎えてきた。映像はアニメの仕事に就こうと決める根本的なきっかけになったという、中学3年生当時にのめり込んだ宮崎駿監督作『未来少年コナン』への言及から始まる。大学時代に参加した『超時空要塞マクロス』では「作監(作画監督)がする仕事をいきなり呼ばれた素人がやった」が、ここで得た「これでプロが務まる」驚き、「初めて自分が好きなことをしてお金が貰えた」喜びが強烈な印象を残した。

また『マクロス』前後の時期、憧れの宮崎との縁が生まれる。『DAICON IV OPENING ANIMATION』を手土産に庵野秀明らと『風の谷のナウシカ』に加わり、ワンフロアの現場で(アニメ制作の)一通りの工程を見たことは「今思い出すとすごく良かった」。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を中抜けしつつ参加した『天空の城ラピュタ』は「とにかく楽しかった」、「遊ばせてもらった」と振り返る。宮崎は世界的名声を得る前であり、「できたばかりのスタジオジブリは明るく気楽でプレッシャーもなかった」そうだ。
『ふしぎの海のナディア』を「一区切り」としてガイナックスを離れた前田は、再び宮崎から声を掛けられ『紅の豚』に参加する。しかし、『紅の豚』はひとつの「壁」となった。思うように描けない状況が続き堂々巡りをするうち、仕事が遅れ、ついには憧れていたはずの“駿さん”の仕事を手放す。慢心か、怠けか。「当時ジブリで要求されていたレベルについていけなかった」とも語る。

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近年の代表作である『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズはゴンゾ所属時、『青の6号』などを手伝ってくれた緒方智幸がカラーに入り仕事を振ってくれてのもの。2作目『破』のラストを「ほんのちょっと」手伝ったところから関与が始まり、“渡りに船”となった。
以降、打ち合わせに呼ばれイメージ出しなどで参加するにつれ、「他の仕事はやらずにこれ1本で」との思いを抱く。ガイナックスは「偉そうなことを言って立ち去った」が、「(当時の縁から、その中核であった庵野が設立したカラーに)いま随分助けられている自分がいる」。それだけに「多少は庵野さんの役に立った方がいい」として、現在も所属するカラーに腰を据えたと話す。いわく「がっつり関わった」3作目『Q』、4作目『シン』では監督を務めた。

長く展開する『エヴァンゲリオン』シリーズは、そのコアを握る庵野や鶴巻和哉、摩砂雪らガイナックス時代からのメンバーがずっと支えてきた。それだけに、前田はあくまで自分を「お助け」だと自認する。ずっと付き合っていないからこそ、「なぜ?」を言えるのが存在価値だそうだ。庵野のビジョンを具体化することが一番の仕事だとは思いつつ、庵野の迷いに(検討)材料を投げ込める存在でもありたい。「セカンドユニット、サードユニット」を自負する。
一方の庵野には「(前田が)なるべく絵を描くように仕向けたい」意向があるそうで、自身を「絵を描くことが仕事の軸」と位置付ける。イメージ・ストーリーボードを出すだけでなく、デザイン、原画、動画まで「手を動かして役に立つことはなんでも」やったという。

「Archipel | アルシペル」Xより

アニメ監督になりたい、宮崎駿みたいになりたい。そういった気持ちからアニメーション制作を志し、キャリアを歩んできたが「本当にそれが自分に向いていることなのかとはよく思う」そうだ。振り返ると、『エヴァンゲリオン』では「自分の芯にあるのは絵を描くことが好きだということ」に気付かされたという。
「望まれる場所にいて、望まれる仕事をする。これ以上の幸せはない」。自分の立ち位置ができた。そういう経験をしただけに『エヴァンゲリオン』、そしてカラーは作品としてもスタジオとしても特別だと話す。

“自分が作ったものらしさ”については「『雑』ってことではないか」と語る前田は、自身を「絶対こうでなきゃいけない、という理想のビジョンにまい進する力は弱い」と評する。そのキャリアには、「興味の赴くままに色々なことをやり散らかしてきた」という反省点があるそうだ。
一方で、キャリアの中で最も軸足を置いてきたのは「絵を描くこと」であることは自覚する。自分の仕事はへたくそで、なおかつ雑だった。しかし、「それを感じる自分にはまだまだ可能性があるのでは、と勝手に思ってもいる」とも述べる。昨年、初にして待望の画集『雑 前田真宏 雑画集』の刊行にあたっては、その輝かしいキャリアから“アニメ界の偉人にして巨人”と冠された前田だが、ドキュメンタリー映像は「まだまだやれていないことだらけ」、「まだまだこれからだと思っている」という言葉で締めくくられている。

「雑」な足跡は、これからどこへ続いていくのか。その未来にも思いを馳せる、ファン必見のドキュメンタリーと言えるだろう。



雑 前田真宏 雑画集
¥6,600
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《仲瀬 コウタロウ》

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