TVアニメ『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』Season 2は、コスプレ好きの高校生・喜多川海夢(きたがわまりん)とクラスメートの五条新菜(ごじょうわかな)がコスプレ衣装作りを通じて交流を深めていく物語です。2025年7月から9月にかけて、第13話から第24話までの全12話が放送されました。

制作は、Season 1(2022年1月から放送)に引き続き、『ワンダーエッグ・プライオリティ』や『ぼっち・ざ・ろっく!』『逃げ上手の若君』など、これまでも数多くの話題作を手がけてきたCloverWorksが担当しています。
今回のインタビューでは、『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』(以下、『着せ恋』)Season 2のアニメーションプロデューサー・染野翔さん、制作デスク・梅原翔太さん、設定制作・山本里佳子さんの3名にお話を伺いました。
『着せ恋』Season 2の制作の舞台裏とはどのようなものだったのか、監督やアニメーターといったクリエイター陣を支えてきたスタッフたちに、Season 2最終回後だからこそ語れる制作秘話をお聞きしました。

ーー『着せ恋』Season 1は、全体にわたる丁寧な作りが印象的でした。Season 2では、そこにコミカルな要素も加わり、演出の幅が広がっていると感じました。制作サイドで感じたことはありますか?
染野: 制作の仕事として向上している部分もあったと感じています。僕は今回アニメーションプロデューサーという役職で関わっていますが、実際の現場を動かしているのは制作デスクや設定制作、そして制作進行のみんなです。その現場の制作みんなの力が演出の幅にも繋がったとは思っていますが、今回の『着せ恋』Season 2で制作の何かが変わったというより、これまでの作品で培った経験が活かされて、作画スタッフさんへの資料提供や取材の精度が上がって来ていたのかなと思います。
クリエイターさんは、資料が欲しい時に「これが欲しい!」と具体的に求めることもあれば、「(漠然と)こういうものが欲しいのだけど……」という場合もあります。その時に一番考えなければいけないのが制作側です。クリエイターさんはそこからさらにアニメーションとして魅力的な表現を作り上げることが仕事ですから、制作はそのために出来ることを考え続けるべきです。本物を買って作画の参考にすることや、参考資料としての写真を撮影する際に、例えば実際にスカートを履いて動きを撮影するなど、制作側もより豊かな情報を揃える為に何ができるかを考えられるようになりました。そうした取り組みで、醸成されていった印象があります。
山本: 私はこれまでは制作進行を経験してきましたが、『着せ恋』で初めて設定制作として作品に取り組む中で、この班での過去作品の経験を非常に活かすことが出来たと思います。クリエイターさんから様々なご相談を受けることがありましたが、それに答えることができたのは、これまでの経験を我々制作も蓄積することができたからだと思います。そういったところが演出の幅が広がったひとつのポイントに繋がったのだと思いました。
ーーひとつの作品を作る「班」に何人くらいのスタッフがいるのでしょうか?
梅原:どこまでを班と呼ぶかは分からないですが、総勢ですと150人くらいでしょうか。
ーー『着せ恋』といえばコスプレ。アニメーションになるとより情報量が増えるかと思います。コスプレ描写に関する気をつけた点や、苦労したところがあれば教えてください。
山本: 衣装の構造を把握することを意識していました。雫たんの袴の厚みや着付けの構造を理解するために袴の取材も行いました。実際に私が袴を着て、衣装デザインの西原恵利香さんに着付けの段階から見ていただき、設定を起こしていただきました。

その際に袴の構造が分かる補足を入れることで、アニメーターさんがしっかりと衣装について理解してくれるので、衣装に説得力が出るなと感じました。麗(劇中劇『生徒会長はNo.1ホスト』のキャラクター)のスーツもシルエットや服のしわの出方を監督はすごくこだわっていました。
苦労した点でいうと、第17話で麗の衣装を分解して、海夢のサイズに五条くんが作り直すシーンで、スーツの構造を理解するのが少し大変でした。スーツを分解して、どこを詰めれば海夢の奇麗なシルエットになるのかを理解するために、服を縫う衣装製作講師を担当していただいている千都先生にも取材させていただきました。そして特に気を付けていたところは、Season 1よりSeason 2では設定も5倍ほど増えて、衣装が200点くらいになったことでデータ管理をしっかり行うことを徹底しました。

染野: Season 1も衣装替えはありましたが、Season 2はバリエーションがさらに増えました。キャラクター数も増えて、文化祭や通常の学生服、ハロウィンのコスプレなど異なる衣装を着て、髪型まで変えることもありました。それらを厳密に設定資料として管理しなくてはいけません。
キャラクターデザインの石田一将さんと衣装デザイン担当の西原さんの力を借りて化粧の違いや髪型の差分など、たくさんの量のバリエーションを作ってもらいました。差分のある設定は管理が非常に難しくなるのですが、今回はそれをしっかり制作が管理してくれました。クリエイターさんたちも原作を読み込んで衣装などに差があることを認識して、一丸となって作っています。制作側も山本から「ここはこの設定。これにあわせる」と制作進行ときちんと情報共有し、それによりひとつひとつの作業においてミスが減ります。ミスが少ない事によっておのずとクオリティも上がったのかなと思います。
ーー設定資料の管理は表計算ソフトなどで行う感じでしょうか?
山本: そうですね、私はExcelで管理していました。
梅原:Excelで管理していても打ち合わせで引き出せないと意味がないんですよね。「ここの設定になにか使えるのあるかな?」とか、「この髪型だけ持ってこれる?」「あの話数のあれが使えるかも」など、設定とストーリーの内容を理解していないと引き出せない。それを山本が引き出せていたので、たくさん設定を作ったことに大きな価値が生まれた。設定を作るだけになったら意味がないですからね。

ーー『着せ恋』Season 2では初回放送、第13話冒頭の劇中で描かれた『こちら月夜野 カンパニー』のクオリティが話題になりました。『着せ恋』本編とは異なり、制作スタッフの割り振りなども大変だったかと思います。


■『こちら月夜野 カンパニー』通称:こちカン
登場回:第13話「五条新菜 15歳 思春期」
キャラクターデザイン・原画:五十嵐 海
絵コンテ:山本ゆうすけ
美術:河野 羚
梅原: 僕たちの班は1年に1作品しか作れません。だからキャラクターデザインをやるチャンスって、1年に1度しかないんですよ。だけど能力がある人、優秀な人がチームにはたくさんいます。ここで普段キャラデをやれない人がやれるチャンスが生まれました。そんなメンバーの発散の場にもなってよかったと思います。担当の割り振は、得意そうな人に渡していっただけですね。
ーー『スペースアイドル コスモラバーズ』についてお聞きします。


『スペースアイドル コスモラバーズ』通称:コスラバ
登場回:第14話「おっぱいは装備できるから」ほか
キャラクターデザイン・原画:小田景門
特殊効果:けろりら
モーショングラフィックス:武山 篤
山本:『コスラバ』はキャラクターデザインを担当していただいた小田景門さんがソシャゲに詳しかったので、どういう雰囲気を目指せば本物のゲームに見えるのかご意見をいただきました。『コスラバ』の世界観を深めるために裏設定も作り、演出の山本ゆうすけさん、小田さんと設定に合わせて、絵の質感や線の処理なども考えました。チームサポートのけろりらさんには、特効処理という形でご作業をしていただきました。
ーー『生徒会長はNO.1ホスト』はどうでしょうか?


■『生徒会長はNO.1ホスト』通称:生ホス
登場回:第16話「あたしの体の事、全部知ってるんだ」ほか
キャラクターデザイン・作画監督:高橋沙妃
山本: 高橋沙妃さんは『ワンダーエッグ・プライオリティ』(2021年1月から放送)でもキャラクターデザイン・総作画監督を担当されていて、繊細で奇麗な絵を描かれる方なので、『生ホス』の世界観にぴったりだなと思ったのと同時に、その世界観をより高められるようにと考え、背景も海夢たちの世界の背景とはガラッと印象を変えました。最近は美術もデジタルで描かれることが多いのですが、美術監督さんに下地の線をアナログで描いていただいたことで、温かみのある背景になりました。自分としては違う作品を担当しているようで楽しさがあり、苦労や大変さはあまり感じませんでした。
染野: キャラクターのデザインに変化があるので一般的にはそこが注目されますが、どの作品を作る時も「この作品ならこういう色合いにしよう」「こういう背景の質感にしよう」など色彩や背景、撮影の処理なども、作品の根幹の設定から練って作っていきます。それをひとつひとつの劇中劇全部に、一個の作品に込めるほどの熱量でスタッフには作ってもらえました。絵の話だけでなく、演出の方向性などが変わることもある。すごく豪華なことをさせてもらいました。BGMも「別の世界」として質感の違う音楽を作ってもらっています。そういった合わせ技で、普通に『着せ恋』を観ていても「なんか違う作品が始まった?」とスムーズに切り替えてもらえるものが作れたと思います。
ーー染野さんはどれが好きですか?
梅原:染野さんは棺でしょ、絶対(笑)。思い入れが……。


■『棺』
登場回:第21話「俺 今夜寝るつもりないので」ほか
キャラクターデザイン:助川裕彦
ピクセルアート:なるめ
染野: いや~(笑)。『棺』はちょっと特殊な工程だったんです。アニメーターさんが介在しているのが絵コンテまでで、その先は演出家さんが「こういう風に作ってください」とイラストレーター・なるめさんにピクセルアートをお願いしています。あまりにも特殊な工程で制作進行のラインから外れて自分が管理していたので、だから「棺でしょ」って言われたんですが(笑)。確かに『棺』は原作の様にゲームそのものを作りたいぐらいの気持ちはありますね。でももちろん棺だけでなくて『フラワープリンセス烈!!』も好きですし。劇中劇はどれもそれぞれ違った好きがあって、『生ホス』の沙妃さんのデザインや、『こちカン』もほんとパワーを感じます。
ーー初回放送時、冒頭がいきなり『こちカン』で、「違うアニメが始まった? チャンネル間違えた?」とびっくりしました……。
染野: 3年間お待たせしました!って放送が始まったら、あれ『着せ恋』じゃない……みたいな。あの演出の妙も含めてどれも魅力的ですね。
ーー梅原さんのお気に入りの劇中劇はどれでしょうか?
梅原: 僕は『生ホス』かもしれないですね。このCloverWorksに来て初めてプロデューサーをした『ワンダーエッグ・プライオリティ』の高橋沙妃さんが『生ホス』のキャラクターデザインをやっていて、その絵への思い入れが強くて。『生ホス』は百何十カットもあって、劇中劇でも尺が長い。それだけの量の高橋さんの絵を世に出せたのがうれしかったですね。
ーー山本さんのお気に入りも教えてください。
山本: 全部です(笑)。『生ホス』は高橋さんとお仕事できてうれしかったですし、『コスラバ』のキャラクターデザインの小田さんは私が新人のころから一緒にお仕事させていただいていたアニメーターさんなので、改めて一緒にお仕事できてよかったというのもあります。
梅原: おい、ほんとに全部言う気?(笑)


■『フラワープリンセス烈!!』
登場回:第22話「今から全部するって事!?」ほか
キャラクターデザイン・作画監督:山本ゆうすけ
山本: 『フラワープリンセス烈!!』も山本ゆうすけさんのキャラクターデザインが好きで、いつも落書きでフラワーペットを描いているんです(笑)。『こちカン』の五十嵐さんとは今までお仕事したことがなかったのですが、初めてデザインを見た時にとてもかわいくて感動しました。五十嵐さんの絵で『こちカン』を見られてよかったと思いました。劇中劇の作品は全部好きです!(笑)
ーー第17話の実写での人形劇、第23話のペープサートにも驚かされました。人形劇は「染野翔さんが人形操演の山田はるかさんに連絡した」行動力で実現した。と梅原翔太さんのSNSへの投稿を拝見しました。
染野: アニメ業界のよく制作で使われる言葉があって、「馬鹿なふりして訊いてみる」というものがあります。変に最初からダメと決めつけず行動してみよう、という意味で自分は捉えていて好きな言葉なのですが、ともかく問い合わせてみたら意外と話が進んでいくことがあります。それは経験上知っていて、一番良いものが作れそうな人にやってもらいたいと思い、名前はメディアで存じ上げていた山田さんに連絡をしました。山田さんとは人形デザインの打ち合わせなども密にやらせていただいたんですが、何にでも熱量を持ってくれる人だと感じて、これはいいものになるぞ!と意気込みましたね。特殊な工程になったのですが、人形デザインに斎藤圭一郎さん(『ぼっち・ざ・ろっく!』監督)、人形コンセプトアートに小林麻衣子さんの力をお借りして、ディレクションを若林信さん(17話の絵コンテも担当)にお願いしました。人形劇はアニメを作っているだけでは得られないことを制作・クリエイターさんともに経験できたと思います。

ーー人形劇はどれくらいのペースでできたのでしょうか?
染野: 急ぎました。連絡してからは3ヶ月くらいかな? 駆け足でしたよ。
梅原: ディレクションした若林さんが最初の打ち合わせの時に山田さんの作品を観て「山田さんのこういうところがいい」など人形劇について調べてきていた。ただ人形劇でこのシーンを作れたらいいやとか、山田さんが有名だからお願いすればいいや、という感じではまったくなかった。僕たちは人形劇のことはわからないけれど、いい人形劇を作りたいんだという姿勢を感じていただけたんじゃないかと思います。
ーー第19話では喜多川さんの買ったカメラ「キヤノン EOS Kiss M」が登場しました。原作では「Miss M」となっていましたが、実在するカメラにこだわった理由をお伺いさせてください。
山本: 脚本時から監督が本物のカメラを使いたいとこだわっていました。そこでアニプレックスさんを通じてキヤノンさんにご相談させていただいたところ、快くご協力いただけました。実際のカメラ「EOS Kiss M」は廃盤になっている機種ですが、現物をお借りしています。作画さんに描いていただく時もリアルに、本物に近く描いてもらいたい気持ちがありました。

染野:あとは音ですね。カシャカシャカシャっていうシャッター音。ホンモノの音を、収録スタジオで録音しました。
ーー第19話の大宮公園で縁石を歩くシーンは、3DCG作業がプロトタイプから放送まで9ヶ月もかかったそうですね(CGディレクター任杰さんの投稿より)。CloverWorksさんの将来の作品に向けての実験的な意味も込めて、制作されていたのでしょうか。
染野: 9ヶ月フルでそれをやっていたわけではありませんが、しっかり準備をして進行できてた工程の一つです。CGディレクターの任杰さんもこの作品にとても愛情と熱意を持って接してくれました。普通CGディレクターが一緒にロケハンに行くことはあまりないのですが、カメラマップという3Dを使った工程が「多分1カットある」と最初に言われて、ちょっとロケに行くと言ったら「僕も一緒に行きます」って(笑)。その空間を新しい技術を使ってラフモデルを作ってくれました。フィニッシュだけでなく、下地としてもその様な資料を置き、作画や演出をする事でより精度の高いものが作れたと思います。やはり、どのスタッフも前のめりで参加してくれる雰囲気が醸成できていて、それが映像にもつながっているんじゃないかと思います。
ーー大宮公園のシーンは、五条くんがカメラのシャッターを切るとその瞬間だけ背景がボケる演出もよかったです。
染野: リアルなカメラのレンズ感を追求しながらも、視聴者が他のカットと差を感じる演出にしたいという話がありました。演出の山本ゆうすけさんが「視聴者に奇麗だと伝わるには、現実感のある処理では無いのでは」ということで本当のリアルを追求するのとは違う、印象的で奇麗な写真だと感じさせる演出処理を追求する事になり、最後の最後、納品直前まで詰めてやっていましたね。


梅原: 「将来の作品に向けての実験的な意味」の部分に関しては、山本ゆうすけさん、つまりクリエーター側に意図がある。CGディレクターの任さんは同じアニプレックスのグループ会社Boundary(バウンダリー)で仕事をしていて、会社のフロアも隣なんですが、2D主体のアニメ作りではCGの部署とのコミュニケーションが難しいと思います。最近は多用されるようになりましたが、CGを使わなければ使わないで終われることの方が多かったからだと思います。その中で、『鬼滅の刃』のufotable(ユーフォーテーブル)さんなどはとても使い方が魅力的だと思います。山本ゆうすけさんはCGや新しい技術を本編の実制作で試そうとするタイプで、任さんもとても協力的なので、あのカットには今後うちの班がCGをどう取り入れて行くかの「実験」という意味が確実にありました。CGをもっと当たり前に上手く使えるようになるとTVアニメのさらなる発展にも近づくと思います。
ーー第21話のドン・キホーテ大宮東口店をロケハンした店内描写、なじみのある店内音楽にも驚かされました。ロケハン時のエピソードがあれば教えてください。
染野: ドン・キホーテさんは営業中に伺わせて頂けてまして、お客さんに配慮しながらお店の担当の方の立ち合いのもと取材をしました。2回取材に行ったのですが、はじめに絵コンテを描くために行った時と、絵コンテができてから、作画の為にレイアウトの参考に撮影に行った時とで店内レイアウトが全然変わっていて(笑)。季節も変わっていたので店舗として全然あり得ますよね、そこが抜けていました。演出さんとどうしよう……と思いましたが、絵コンテの意図はわかっていたので、それにあわせて演出がベストの位置を探り撮り直しました。さすがお客さんを楽しませる陳列にこだわりのある圧縮陳列の王、ドン・キホーテさんだなって。

山本: 店舗の外観に、回るドン・キホーテの公式キャラクターのドンペンくんが居たんです。そこは実際に行かないと気付けないポイントなのですが、それを演出の都築遥さんが面白がってくださって。アニメでも登場させられたのは、ロケハン冥利につきました。

梅原:あとは、 第19話に出てくる美容室(美容院AIRS)。海夢が髪を染める店なんですが、あれは僕が10数年通っている美容室がモデルなんです(東京・中目黒の美容院CERISIER 7)。アニメの仕事をしていることは美容師さんに話をしていたのですが、美術として使いたくて今回ロケハンをお願いしました。休みの日にわざわざ開けてもらい、制作の女性が実際に髪を染めてもらって、その手順をアニメでそのままやっているんです。家族が美容師をやっているアニメーターさんが親御さんと一緒に第19話を観ていたら「めっちゃちゃんと美容室のシーンやっているね。小物とかもそうじゃん!」と言ってくれたそうです。本職の方に「美容師っぽい」と思ってもらえたことはうれしかったですね。でも美容師さんは『鬼滅の刃』は知っていても『着せ恋』は知らなくて、自分の美容師さんに知ってもらえるまで頑張ろうと思いました。

ーー『着せ恋』は声優陣もハマり役ばかりです。第20話から登場した緒方旭(おがたあきら)は河瀬茉希さんが担当され、ネット上でも「イメージぴったり!」「解釈一致すぎる~」など好評でした。最終回の旭の叫び声「ぼん゛どに゛がわ゛い゛い゛っ゛っ゛っ゛っ゛!!!!」は当初からファンに期待されていましたよね。
染野: 音響監督の藤田亜紀子さんがある程度数人の候補を絞ってくれていました。その候補者たちに、これぞという台詞を抜き出して吹き込んでもらい、その中から監督と藤田さんが協議して決めています。もちろんただ叫ぶ声で決めるわけではなく、やはり緒方旭のクールなところがベースなので、その要素から決めていったかなと思います。実際のアフレコでは、叫び声の収録日には河瀬さんもむちゃくちゃ意気込んで芝居をしてくれました。
ーー女装コスプレイヤー・姫野あまねを演じた村瀬歩さんも放送時に話題になっていました。
染野: 村瀬さんは指名でお願いしました。キャラクターのイメージで、ある程度声の選択肢は狭まってきます。その中で藤田さんにドンピシャの村瀬さんを提案していただいて、さすがという感じですね。

ーー最終回のラストシーンも含めて、アニメオリジナルの展開も随所に見られた『着せ恋』Season 2ですが、オリジナルシーンに関してはどのように決まっていったのでしょうか。また、原作の福田晋一先生の意見や提案なども含まれているのでしょうか?
染野: シリーズ構成の段階でSeason 2の最終回が一番の争点になりました。今のところ続きを作ることが決まっていない以上は、アニメとしての区切りはちゃんとつけないといけない。最終回は新菜と海夢の時間にしたい。ということまでは決まっていました。ただ、具体的にどうするかは監督も悩んでいて、アイデアはあったのですが、なかなか確信が持てなかったようで。最後は原作の福田晋一先生の意見を聞いたほうがいいんじゃないかという流れになりました。
梅原: 福田先生とオンラインで打ち合わせをしたんですが、実はこの「最終回をどうするか」という話をした時が、僕たちが福田先生と顔を合わせた2回目だったんです。コロナ禍などもあり、なかなかお会いする機会がなかったのですが、この打ち合わせが福田先生の人柄をよく知る機会になりました。最終回の話もさることがら、福田先生ってめっちゃ魅力的な人間だよね、ということを感じて。そうしたら福田先生が終わり方のネーム描いてみますと言ってくれました。まだ原作の連載中だったのですがネームがすぐ送られてきました。一案として送ります、みたいな感じでした。ネームをもらっても監督はずっと迷っていて、斎藤圭一郎さんや若林信さん、色んな人に相談していましたが答えはでなかった。でも放送が近づいてきていて、ともかく書かなくては……と、できたのがあの最終回です。
最終回には篠原監督の誠実さが出ています。アニメでこの続きをやるかわからないのに“ふり”だけやってもしょうがないというか、期待だけさせてやらないかもしれないし。Season 2の12本でちゃんと「。(まる)」が付くように作ろうとしていて、それでずっと迷っていたんだと思います。
でも絵コンテが上がってきて、僕はあれで終われたのかわからなくて……。放送されたらみんな納得していた。みんなどう思ってた?
山本:私も同じです……(笑)。
染野:篠原監督自身も悩みながらですし。
梅原:最後の最後に、何でああいう形で終わらせたのかは知らないですね。色んな意見をもらっても書くのは篠原監督本人なので。だから、篠原監督に聞いてもらうのが一番。僕は聞いてないから(笑)。ただ、意見や提案は福田先生も含めて色んな人としていた。色んな可能性を探っていてあの終わり方ですね。
染野:第18話で撮れなかったツーショットを撮らせてあげたいって話はもちろん出ていたのですが、あの形になったのが篠原監督の悩みぬいた答えなんですね。
ーーでは『着せ恋』Season 2の「個人的なお気に入りシーン」とその理由を教えてください。また間近でスタッフの皆さんを見ていて感じたこと、「これはスゴい」など感じた場面があったら教えてください。
山本: お気に入りは第13話のラストの新菜の心理描写と、第15話のあまねの回想なんです。
梅原: あ~、あまねの回想言われた……。
山本: 『着せ恋』はラブコメ要素が強い作品だと思うのですが、たまにあるキャラクターの深い心理描写にグッとくるものがあります。第13話の篠原監督と第15話演出の吉川知希さんがそこを広げてくださって、キャラクターに深みが出ることでキャラクターの色々な面が見えた喜びがファンとしてはありました。個人的にお気に入りの回です。

また、第17話で若林さんのお仕事を拝見し、こだわりをすごく感じました。例えば人形劇とかもセットの背景の角度を数センチ単位で調整したり……。ただそのこだわりが作品のクオリティを上げて、全体的な底上げになっていると思いました。

染野: 間近で見ていてスゴいと感じるのは、一例を挙げると第18話の文化祭のシーンです。海夢がコールをしながらパフォーマンスをするんですが、自然にある動きでは無い為振り付けの経験などもある演者さんに動きを作ってもらい、作画の参考資料として撮影させてもらおう、となりました。更にその撮影環境も、スクウェア・エニックスさんからお借りした海夢の衣装を着てもらい、ステージのライティングと同じになるような広い場所で撮っています。普通に考えたらその参考映像通りに絵を描けばいいという考えも出ますが、そこを演出の刈谷暢秀さんとアニメーションディレクターの小林恵祐さんがそれ通りなんだけどそれ通りじゃないといいますか……ちゃんとアニメの見栄えがする動きと情報量に落とし込んで、切り取りながらカットの構成をされています。ああ、これがプロのアニメーターの技なんだと感動しましたね。すごいなと思うシーンとお気に入りのシーンを一緒に語っちゃった感じですけど。
梅原:第18話の文化祭のシーン。今名前が挙がった小林さんはレジェンドアニメーターからも名前が挙がるようなレベルのアニメーターさんです。ずっと一緒にやっていただいていますが、第18話のリテイク出しで最初にチェックした時に「うまい絵はうまい」というのが明らかにあって。うちの班はみんなうまいんですが、本当にうまい絵は絵の圧力がすごいから浮かんで見えるんですが、それが第18話はずっと感じましたね。絵がうまい、画力があるとはこういうことだと。僕が言うのも失礼ですが、小林さんは天才というより秀才だと思います。早い段階で有名になっていく人が周りに多い中で、結構遅咲きで有名になった。そんな中、ずっと絵をこだわって描いてきた人間の迫力が画面にあって、絵に集中し続けてきたからこそできる仕事だと感じます。
ーー梅原さんのお気に入りは?
梅原:あまねの回想好きなんですよね。第18話の裏舞台もいいし……。あ、第17話のAパートで海夢が椅子に座ってなにかを考えていて、窓枠が光る美術のカット! 五条くんがいない間に衣装を手伝おうとして、失敗してしまうシーンです。椅子に座っていて窓枠が光るカットがあって、海夢がアッて思ってボタンを付けてあげる。言葉にしづらいけど、なんで海夢がその時に手伝おうと思ったか。第17話の冒頭で新菜とおじいちゃんの会話からなにか手伝いたいなと思う描写もあるのですが、物語や映像を作る時って理由を提示してしまうと思うんです。あれがあったからこのキャラクターはこの行動をしたって。観てる人に納得してほしいから、演出や作り手はその理由を提示しないといけない、整合性をとらないといけない、と思ってしまいます。でも新菜とおじいちゃんの会話で“ふり”はあるんですけど、最終的に海夢は窓のふちが光っていたからボタンを直しているんです。若林さんが言っていた話ですが、例えばなにかをする時に「今日は天気がいいなあ」と思ってなにかを買いに行くとか。そこに明確な因果関係はないじゃないですか。ただそれを見て、フと思った。そういうことが描かれていて、それはすごいなって。普通ならちゃんと理由があってなにかするけど、僕らの生活はそうじゃない時もある。フと、ただ空が青かったからとか、本当にあることだと思うんですよ。それがここには描かれている! ここはお気に入りですね。

ーーファンとしてはSeason 3を期待してしまいますがいかがでしょうか?
梅原: 制作はまったく白紙ですが、すべてが整えばまた作りたいと思います。雑なアニメは作れません。視聴者の皆さんに感謝を伝えたいです。
ーー最後に、『着せ恋』Season 2を見守ってきたファンの皆様にお気持ちをお願いいたします。
山本: Season 1は制作進行として担当したのですが、Season 2でも設定制作として携わることが出来て本当によかったです。私自身がSeason 2まで担当する作品は初めてだったので、ファンの方々が愛してくれたからこそSeason 2があったと思っています。視聴者の皆さんには楽しく着せ恋を観ていただけたらうれしいです。
染野: 視聴者の皆さんの反応を見るのが好きなので『着せ恋』でよくエゴサをしていましたw。反響を見ていると作画がすごいという声をたくさんいただくのですが、それよりも純粋にこのキャラクターの気持ち、わかる、めっちゃ共感できるみたいな、そういうキャラクターを愛してもらえている声も多くあって、物語を楽しんでいただけているのが本当にうれしかったです。それはやはり原作の福田先生の力もありますが、篠原監督が丁寧に作品の指針を描いて、それにスタッフが全力で応えきれた結果であると感じました。正直に、楽しんでもらえる作品を作れたという感覚があります。ただ、視聴者の皆さんには難しいことなど考えずに面白い作品のひとつだと思って楽しんで見続けてほしいですね。

梅原: ありがたいことに、X(旧Twitter)のリプで「楽しかったです」など送ってくれる方がいます。僕らはクリエイターじゃなくて、制作で裏方ですけど声をいただけるのはうれしくて。リプ返しておけばよかったと思っていて……。そういうのを全然気にしてこなかったから、応えるべきだったなと思っています。でも作品で応えてきたつもりはあってSeason 1や原作のファンの皆さんがよろこんでくれたら一番いいなと思っています。ファンの方々は僕らがSeason 1を作り終えた後にSeason 2をやるまで変わらず待っていてくれた。そういう皆さんにちゃんと作品で返すことができたのはよかったです。
また、新規の視聴者が増えないと作品は発展しないので、Season 2をきっかけにアニメを見てくれたかたや原作を買ってくれたかたがいらしたら、とてもうれしいことです。

なにかを作って観てもらってお金を出してもらう以上、どこまで行っても客商売なんです。視聴者になによりも喜んでもらえて、グッズやパッケージを買ってくれるのは作品を好いてくれたんだと思えて本当にうれしいです。映像だけでなく、プラスアルファでグッズを買ったりすることは、そこまで「いいな」と思ってもらえたからお金を出していただいている。そこにはなによりも感謝があります。いいものを作ったらよろこばれてお金を出してくれることは当たり前だと思っていましたが、自分の人生の経験も増えてくると、それは特別なことなんだと思い始めています。それを『着せ恋』で感じました。本当に、視聴者の皆さんには感謝をお伝えしたいですね。
<Blu-ray&DVD情報>
その着せ替え人形は恋をする 11
2026年1月28日(水)よりリリース

完全生産限定版 Blu-ray
7,700円(税込) ANZX-17669~17670
完全生産限定版 DVD
6,600円(税込) ANZB-17669~17670
収録話数
21話・22話(2話収録)
完全生産限定版特典
◆キャラクターデザイン・総作画監督:石田一将 描き下ろしジャケット
◆その着せ替え人形はラジオをする 番外編
ゲスト:篠原啓輔監督&山本ゆうすけ副監督
◆マジカワ クリアスタンド〈海夢〉
◆特製リーフレット
■TVアニメ「その着せ替え人形は恋をする」Season 2
<スタッフ>
原作:福田晋一(ヤングガンガンコミックス スクウェア・エニックス刊)
監督:篠原啓輔
シリーズ構成:冨田頼子
キャラクターデザイン・総作画監督:石田一将
副監督:山本ゆうすけ
総作画監督:山崎淳・八重樫洋平
メインアニメーター:高橋尚矢(高は「はしごだか」)
衣装デザイン:西原恵利香
プロップデザイン:永木歩実
色彩設計:山口舞
美術監督:根本洋行
撮影監督:佐藤瑠里
テクニカルディレクター:佐久間悠也
CGディレクター:任杰
編集:平木大輔
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:野崎博樹・小林亜依里
音楽:中塚武
制作:CloverWorks
<キャスト>
喜多川海夢:直田姫奈
五条新菜:石毛翔弥
乾紗寿叶:種崎敦美(たつさき)
乾心寿:羊宮妃那
五条薫:斧アツシ
姫野あまね:村瀬歩
緒方旭:河瀬茉希
本多都:風間万裕子
伊藤涼香:三宅麻理恵
菅谷乃羽:武田羅梨沙多胡
八尋大空:雨宮夕夏
山内瑠音:関根明良
森田健星:内田修一
柏木四季:小松昌平
古賀岳琉:八代拓
(C)福田晋一/SQUARE ENIX・アニメ「着せ恋」製作委員会



