
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
以前にも述べたとおり、「太陽の牙ダグラム」と「装甲騎兵ボトムズ」は、いずれも国際的にメカゲームへ独自の影響を与えてきた作品です。今回、新たな「ボトムズ」のアニメ作品が発表されたことを受け、このシリーズがゲーム分野にどのような影響を及ぼしてきたのかを改めて取り上げる価値があると感じました。
「ダグラム」では強力な新型試作型コンバットアーマーが描かれていましたが、「ボトムズ」に登場するメカは、より汎用的で量産化された存在として描かれています。これらはアーマード・トルーパー(AT)と呼ばれ、遠いアストラギウス銀河において、百年に及ぶ戦争を続ける二大勢力によって運用されています。
バララント軍では「ファッティー」と呼ばれるATが、一方でギルガメス軍では、より無骨で実戦向きの「スコープドッグ」が主力として使用されています。両者は基本的な機能性に大きな違いはなく、足部に内蔵された車輪によって、まるで高速ローラースケートのような移動を可能としています。
物語の中では他にもさまざまなATのバリエーションが登場しますが、重要なのは、これらが工業規模で大量生産され、戦争のために設計されたメカであるという点です。
そのため、「ボトムズ」において「特別」なのはメカではなく、主人公であるキリコ・キュービィーその人です。寡黙で内省的な性格のキリコは、戦争の真の恐怖を経験し、目撃してきた人物であり、その態度や振る舞いからは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えている可能性すら感じさせます。

しかし、その静かな性格とは裏腹に、彼は非常に稀有な「運」を持つ人物でもあり、この「運」こそが物語の進行、そして最終的な結末において重要な役割を果たします。
本来であれば、ここでさらに詳しく触れたいところですが、「ボトムズ」はすでに40年以上前の作品であるとはいえ、その物語性は今なお特別なものであり、新たに視聴する方々のためにも、あえて詳細な言及は控えたいと思います。
また、「ボトムズ」全体として興味深い点は、いくつかの例外を除き、OVA作品群が明確な物語の流れに沿って制作されていることです。一般的なメカアニメでは、OVA版は同一世界観を共有しつつも、新たな登場人物や別の舞台設定が用いられることが多いのですが、「ボトムズ」ではキリコの物語が一貫して中心に据えられています。
もちろん、異なる視点や世界観を描いた作品も存在しますが、もっとも有名だろう「機甲猟兵メロウリンク」ではキリコがごく短いカメオ出演をしており、そうした点を踏まえても、前述の評価は概ね妥当であると考えています。
総じて、「装甲騎兵ボトムズ」がメカ表現にもたらした最大の功績は、小型で比較的簡素なデザインであっても、高い機動性と致命的な戦闘力、さらには驚くほどのスピード感を戦闘にもたらし得ることを示した点にあると言えるでしょう。
『ヘビーギア』および『アーマード・コア』への影響
「装甲騎兵ボトムズ」が、国際的なゲーム分野に直接与えた最大の影響のひとつが、『ヘビーギア』シリーズであると言えるでしょう。
(編注:『ヘビーギア』シリーズは近年ではボードゲームとしての展開が主流ながら、ビデオゲームについても2026年現在、最新作となるオープンワールドRPG『ヘビーギア3』が開発中)
『バトルテック』や『メックウォリアー』が、「太陽の牙ダグラム」や「超時空要塞マクロス」、「クラッシャージョウ」などのデザインを直接的に取り入れていたのに対し(特に機能面では「ダグラム」が中核的な「基盤」となっていました)、『ヘビーギア』はより創造的な道を選びました。すなわち、「ボトムズ」に登場するスコープドッグの機能性を参考にしつつ、それをそのまま模倣するのではなく、類似した性能や思想を持つ独自のメカを構築したのです。
こうした流れの根底には、「ボトムズ」において、脚本・監督の高橋良輔氏とメカニックデザイナーの大河原邦男氏が、スコープドッグをはじめとする各種メカの挙動や構造を、極めて綿密かつ体系的に設定していたことがあります。メカの運用に関する厳格で一貫したルールが存在していたからこそ、それはまるでゲーム開発者にとっての「教本」のような役割を果たしたと言えるでしょう。
たとえば、『ヘビーギア』に登場するバジリスクを見れば、その設計思想がスコープドッグに由来していることは明白ですが、決して直接的なコピーではありません。

個人的には、このような姿勢に強い敬意を抱いています。なぜなら、それは『ヘビーギア』開発チームの想像力と創造性を示すものであり、単なる模倣は、対象を本質的に理解していないことの表れでもあるからです。
また、「ボトムズ」は『アーマード・コア』シリーズ、とりわけメカのレイアウトや設計思想にも大きな影響を与えたと感じています。
長年にわたり、フロム・ソフトウェアの開発陣と高橋良輔氏とのインタビューが数多く行われてきたことからも、氏の創作が強い影響力を持っていたことは明らかですが、その影響は『ヘビーギア』と同様、機能面においても見て取ることができます。
私見では、『赫奕たる異端』に登場するバーグラリードッグの武装配置は、初代『アーマード・コア』に登場したアンファングを強く想起させます。肩部のミサイルに加え、グレネード系の砲を装備している点などが共通しており、1994年に発表された『赫奕たる異端』の時期を考慮すると、バーグラリードッグは特に影響力の大きな存在であったと感じられます。
さらに言えば、『アーマード・コアV』および『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』といった第五世代の作品群では、メカがより小型化され、高い機動性を持つようになりましたが、その姿は(作劇上、あるいは設定上の生残性の大きな違いを除けば)「ボトムズ」のATに非常に近いものがあると言えるでしょう。
「ボトムズ」ゲームの悲しい歴史
「装甲騎兵ボトムズ」という作品を正しく理解するという点に関連して、PS~PS2期に制作されたボトムズ関連のビデオゲームについて触れたいと思います。
これらの(アクションジャンルの)作品のほとんどが抱えていた最大の問題は、ATの操作感を「再現しようとすること」に過度に重点を置きすぎていた点でした。
これは、以前私が書いた「操作体系において、プレイヤーを“新兵”として扱うのか、それとも“パイロット”として扱うのか」という議論とも通じる部分があります。
PS期における多くの「ボトムズ」のゲームでは、プレイヤーは一貫して「新兵」として扱われ、ATを操るために複雑で扱いづらく、習得の難しい操作を強いられていました。
イギリスで育ったボトムズファンとして、私はこれらのゲームをすべて購入し、実際にプレイしてクリアしましたが、そのたびに失望感が残ったことを覚えています。アニメで描かれていた、あの素早く流れるような機動性は、残念ながらゲーム内ではほとんど再現されていなかったのです。
しかし幸いなことに、PS2向けに「装甲騎兵ボトムズ」単独のゲーム作品が登場したことで、この状況は大きく改善されることになりました。
ユークスの登場による転機

『ペールゼン・ファイルズ』が発表された頃、ユークスはプレイステーション2向けに非常に完成度の高い「装甲騎兵ボトムズ」のゲームをリリースしました。本作は、それまでのボトムズ作品とは異なり、プレイヤーを「新兵」ではなく明確に「パイロット」として扱っており、その操作性は極めて優れたものでした。
操作体系は比較的標準的なデュアルアナログ方式を採用しており、左スティックで移動、右スティックで視点操作を行う構成は、現代的なシューティングゲームに近い感覚を与えてくれました。
ローラーダッシュの操作感も非常に滑らかで、プレイヤーの入力に応じてアニメーションが美しく補間されるため、操作しているATの動きは実に自然でした。
要するに、原作アニメにおけるATの動きを、そのまま自分が操作しているかのような感覚を味わうことができたのです。
一方で、いくつか奇妙に感じられる点も存在しました。たとえば右スティックにはいわゆる「スプリングバック」が設定されており、スティックから手を離すと照準が自動的に画面中央へ戻ってしまいます。
この挙動はオフにすることができず、その点だけは違和感がありました。というのも、それ以外の部分は非常に現代的で洗練された設計だったからです。
また、ATから降りて徒歩で行動することも可能でした。これは悪くない要素ではありましたが、AT同士の戦闘があまりにも完成度が高かったため、必須の要素とまでは感じられませんでした。
AT戦闘そのものは非常に手応えがあり、敵ATの装甲の弱点を常に探りながら戦う必要があります。運よく攻撃角度が噛み合えば、ほぼ一撃で敵を撃破できることもありました。
ロックオン機能も秀逸で、視線上に障害物が入るとロックが解除される仕組みになっていました。そのため、アリーナ形式の戦闘では、障害物を利用して敵のロックを切ることが戦術上の重要な要素となっていました。
総じて振り返ってみると、コンテンツが当時の「ボトムズ」作品の範囲を十分にカバーしていたことも含め、本作は「あるべきボトムズのゲーム像」をほぼ完璧に体現しており、原作アニメの雰囲気と動きを、機能的に現代化された形で見事に再現していた作品だったと感じています。
新作「装甲騎兵ボトムズ」アニメとその未来

今回、新たな「装甲騎兵ボトムズ」アニメが発表されたことで、国際的な成功に向けた非常に大きな可能性が開けたと感じています。『War Robots』の成功が示しているように、ミリタリー系メカゲーム市場の潜在的な規模は、約3億人に達すると考えられています。
この点において、「ボトムズ」はまさに理想的に適合する作品ですが、成功を確実なものとするためには、いくつか重要な条件があります。
第一に、忠実で質の高いローカライズが不可欠です。frognationのような優れたローカライズ企業と協力することは、大きな助けとなるでしょう。ただし、海外市場に合わせるために「ボトムズ」そのものを「変えよう」とする試みは避けるべきだと考えます。本作は、すでに現在の形のままで十分に完成された作品だからです。
第二に、的確かつ大規模な国際プロモーションが必要です。十分な宣伝を伴わず、アニメ単体でリリースされた場合、成功は極めて難しいものになるでしょう。
そして最後に、新作アニメをベースとした新たな「ボトムズ」ゲームの制作を、再びユークスに依頼することを強く推奨したいと思います。同社は現在、Unreal Engineの活用に長けたスタジオへと成長しており、現代的なシューティングゲームに求められる機能面についても深い理解を持っています。アニメ側ですでにメカ表現に3DCGが用いられていることを考えると、現代的なシューティングゲームとして展開するのは、極めて自然な選択と言えるでしょう。
アニメ作品そのものについては、今回、押井守氏が監督を務め、Production I.Gが制作を担当することから、キリコ・キュービィーの物語とは異なる方向性、すなわち前日譚、あるいは完全に新しい物語になるのではないかと予想しています。
新たに描かれるスコープドッグは、どこかレトロな意匠を感じさせ、戦闘の舞台も森林地帯のように見受けられます。この点は「赫奕たる異端」における戦闘を思い起こさせるものであり、百年戦争の始まりや、武装宗教が果たした役割を描く物語になる可能性もあるのではないでしょうか。
いずれにせよ、新たな「装甲騎兵ボトムズ」アニメが制作されること自体に、私は大きな期待と興奮を抱いています。そして、この極めて重要で影響力の大きいメカ作品について語るにあたり、最後に高橋良輔氏へコメントを求めるのは、非常にふさわしい締めくくりであると感じました。
高橋良輔氏からのコメント―「ロボット」という概念へのこだわり
オリー・バーダー氏の原稿に寄せて
40数年前に作られた作品がコンテンツとしての命脈を未だ保っていることに作り手自身が驚いています。当時は林立する「ロボットもの」と言われるジャンルの中にいかに個性を、つまり独自性を屹立させるかということに腐心していました。その中で浮かんだのがあのATの4メートルというサイズ感でした。演出面では鉄の塊の地上兵器としての強さの中にスピード感を盛り込むことに心血を注ぎました。小さくすればするほどスピード感は出せるのですが、ある地点を越えるとロボットという概念よりパワードスーツという概念にとってかわられる恐れがありました。制作会社も私自身も「ロボット」という概念にこだわりがあったのです。
私のような夢想家が具体的なスキルを持ったデザイナーやアニメーターと「あーでもない、こーでもない、あーやろうか、こうしようか」くんずほぐれつジッタンバッタン出来たあの時代をいい時代だったと過去のものとして語りたくはありません。
私の尊敬する映像作家の「押井ボトムズ」に大いに期待します。
2026年1月21日 高橋良輔
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。







