永遠の友情が可能になるとしたら? 「ふれる。」脚本・岡田麿里が向き合った、青年たちの心【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

永遠の友情が可能になるとしたら? 「ふれる。」脚本・岡田麿里が向き合った、青年たちの心【インタビュー】

絶賛公開中の映画『ふれる。』。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られる長井龍雪監督、脚本・岡田麿里さん、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀さんが送り出す、オリジナル長編アニメーション映画だ。

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『ふれる。』キービジュアル(C)2024 FURERU PROJECT
『ふれる。』キービジュアル(C)2024 FURERU PROJECT 全 17 枚 拡大写真

絶賛公開中の映画『ふれる。』。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られる長井龍雪監督、脚本・岡田麿里さん、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀さんが送り出す、オリジナル長編アニメーション映画だ。

本作は、「ふれる」という不思議な生き物を介して心がつながる青年たちの友情物語。ともに上京して共同生活を始めた秋、諒、優太は、とある事件を機にお互いの心の底や友情に向き合うことになる。

揺れ動く関係性や、「ふれる」の存在はどのように生み出されたのだろうか。脚本を担当した岡田麿里さんに、制作の舞台裏をうかがった。

[取材・文=ハシビロコ]

◆「ずっと一緒にいる」が可能になる状況って?

――公開を間近に控えた今の心境をお聞かせください(※9月取材時点)。

岡田 『ふれる。』の脚本作業が2~3年前だったので、独特の再会感があります。脚本を書いたあとに私自身も監督作の制作に取り組んでいたので、それが終わって一息ついた頃に『ふれる。』と再び出会って。本作を書いていたときの想いがふわっとよみがえってくるような、不思議な経験をさせていただいています。でも「ようやく公開」という感じではありません。友達と待ち合わせをしてどこかに行くときのような心境です。

――本作はどのように作りあげていったのでしょうか?

岡田 私たちはいつも最初にテーマを決めこまず、長井監督の「おもしろいもの、好きなものを作りたい」というピュアな考えを追求しようという感じなんです。

要素のひとつである「3人の男の子の共同生活」が決まったとき、私の中では「きっとコミュニケーションについての話になるのだろうな」と思いました。アニメ制作や仕事もそうですが、皆で一緒に過ごしていると、なかなかうまくいかないこともありますよね。「ずっと一緒にいる」は、口で言うのは簡単ですが、実際はとても難しい。もし「ずっと友達」が可能になる状況があるとしたら、それはどのようなものだろうと考えながら物語を掘り下げていきました。

――これまでの秩父3部作(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』)とは異なり、メインキャラクターが3人の男の子、舞台が高田馬場であることにも驚きました。

岡田 秩父3部作が一区切り付いたこともあり、打ち合わせで「もう少しキャラクターの年齢を上げたい」という要望が出たんです。また、これまではどちらかといえば女の子がメインになる作品が多かったので、監督からは「男の子主人公で、男の友情を描いてみたい」とも言われました。

◆「本当の友達ってなんだろう」――『ふれる。』で向き合った問い

――岡田さんはこれまで思春期の少年少女がメインとなる作品を巧みに描いてきましたが、今回は青年期の男の子が主役です。脚本を書いてみていかがでしたか?

岡田 自分としてはこだわっているわけではないのですが、私は思春期を描く仕事をいただくことが多くて。私の思春期も迷いや悩みが多く、消化しきれていない時代だったからこそ強く描けるのだと思います。でも、そうやって思春期を描くうちに、自分の中で決着をつけられた部分もあって。もちろん思春期には戻れないので当時の問題が解決するわけではないですが、ある程度気持ちに整理がついてきたのかもしれません。
だから今回青年期を描けて、とても楽しかったです。私自身も友達と共同生活をしていた時期があったので、そのときの感情や難しさを思い出しました。

――秋、諒、優太の友情をどう描こうと思いましたか?

岡田 「本来なら友達になれなかったかもしれない子たちが友達になる」というのが大きなテーマでした。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で描いた「もともとすごく仲がよかったのに、状況が変わると友達ではいられなくなってしまう」という物語とは対照的かもしれません。

秋たちは幼なじみではありますが、最初から仲がよかったわけではなくて。お互いの本質を見なければ友達でいられるような関係性なんです。「でもそれは本当に友達なのだろうか。そもそも本当の友達ってなんだろう」と問いながら脚本に反映させていきました。友達になったりならなかったりするのは、どちらも奇跡的なことで。「これのおかげで友達でいられる」と何かに頼る気持ちがどこかにあると思うんです。そこをどう描くかを本作では意識しました。

――メイン3人を演じられた永瀬さん、坂東さん、前田さんの演技はいかがでしたか?

岡田 お三方とも「あ、このキャラクターはこんな子だったんだ」とあらためて感じました。脚本を書いていたときに脳内で響いていた声でありつつ、その想定を上回っていただけたと思います。おかげでキャラクターの存在がよりリアルになりました。

――共同生活に途中参加する樹里と奈南を描くときに意識したことはありますか?

岡田 「異性の不思議」を描きたいと思い、異性の目から見たらお互いがどう映るのか意識しました。お互いに、正しいと思えることと思えないことが食い違う感じを描きたいなと。お互いが「何でそうなるの!」と突っ込みたくなるところも込みで愛おしく見えるといいな、と思いました。


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《ハシビロコ》

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