文化芸術活動基盤強化基金を活用した3年間の若手育成プロジェクト「グローバル・アニメ・チャレンジ」発足 | アニメ!アニメ!

文化芸術活動基盤強化基金を活用した3年間の若手育成プロジェクト「グローバル・アニメ・チャレンジ」発足

クリエイター等の育成プロジェクトを支援する「グローバル・アニメ・チャレンジ」の発足が発表。本プロジェクトの立ち上げにあたり、プロジェクト発足記者発表会が開催された。

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文化芸術活動基盤強化基金を活用した3年間の若手育成プロジェクト「グローバル・アニメ・チャレンジ」発足
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クリエイター等の育成プロジェクトを支援する「グローバル・アニメ・チャレンジ」の発足が発表。本プロジェクトの立ち上げにあたり、プロジェクト発足記者発表会が開催された。

記者発表会には、文化庁参事官の圓入由美氏、キネマシトラス代表取締役会長の小笠原宗紀氏、スカイフォール代表取締役の植田益朗氏、サラマンダーピクチャーズ代表取締役社長の櫻井大樹氏、KADOKAWA執行役の菊池剛氏、ジャーナリストの数土直志氏、日本総合研究所代表取締役社長の谷崎勝教氏、「月刊ニュータイプ」副編集長の鳩岡桃子氏、foriioディレクターの高久美知子氏、日本総合研究所調査部主任研究員の安井洋輔氏が登壇した。

「グローバル・アニメ・チャレンジ」は国内外から注目を集める日本アニメが今後国際市場で存在感を高めていくために、3年にわたり次世代クリエイターを育成していく取り組み。国内から才能ある若手アニメーター、プロデューサー、演出家/監督の計6名を選出し、「クリエイター・アーティスト等育成事業 (文化芸術活動基盤強化基金)」を活用し、さまざまなプロジェクトの経験の機会を与える。プロジェクトには、英語のマンツーマンレッスン、海外展開に関するワークショップ、海外の一流スタジオでのインターンシップ、パイロットフィルムの制作、海外アニメイベント出展などが含まれる。

まずは、文化庁参事官の圓入由美氏より本事業の背景および目的の説明があった。

世界のコンテンツ市場の規模は、石油化学産業や半導体の産業よりも大きく、日本由来のコンテンツの海外売上は鉄鋼産業、半導体産業の輸出額に匹敵する規模。日本国内では、アニメに限らずコンテンツ市場が広がるなか諸外国と比べても政府の支援が足りないのではないかという声が上がっており、直近様々な課題と施策が政府の会議でも話題に挙げられてきた。

文化庁ではこれまで人材育成をメインとしており産業に深く携わる取り組みは少なく、映画や舞台の制作支援の取り組みは行ってきたが、アニメ業界にはなかなかアプローチできていないという現状があったという。昨今アニメ業界の低賃金や人材不足が大きく話題になる中で、ある程度の収入を得ながら持続的に活動できる環境づくりを文化庁としても力を入れていくべきではないかという意見もあがり、今回の施策の実施に至った。この規模感でアニメ業界に支援を行うのは初のことではないかと圓入氏は話す。

これまで政府が取り組むコンテンツ産業の事業は、単年度の事業になってしまうことが大きな課題となっていた。アニメ制作やコンテンツの海外展開には少なくとも3~5年は必要で長期スパンになることや、クリエイター育成においては短期間で成果を判断するのが難しいことから、単年度の事業では効果が図りにくいという側面もある。今回のプロジェクトは5年間の活動目標で3年間の経済的支援(※)となっており、文化庁として弾力的かつ複数年度にわたって支援をするのは初の試みになるという。

※4年目以降はフォローアップし、政府の承認が降りれば4年目以降も支援を続けていく予定とのこと。

政府でも新しい資本主義実現会議において、もっとコンテンツ産業の支援を増やすべきだという議論があった。今後はコンテンツ産業官民協議会が設置されることを予定しており、本協議会にはアニメ業界からも参加する予定だ。



次に、キネマシトラス代表取締役会長の小笠原宗紀氏より運営体制および経費等の説明があった。

本プロジェクトの事業主体となるのは「クリエイター・アーティスト等育成事業 (文化芸術活動基盤強化基金)」に補助型で採択された、アニメ制作会社のキネマシトラス。同社は『メイドインアビス』や『わたしの幸せな結婚』の制作で知られている。

パートナーは日本総合研究所が務める。代表取締役社長の谷崎氏によると、日本総合研究所が掲載しているアニメ産業に関するレポートが業界内で話題となり、レポートをきっかけに様々なアニメ企業と交流する機会が増えたのだという。キネマシトラスとは本基金の申請に関する手伝いから関わっており、採択されたこの事業についてもパートナーとして参画することになった。パートナーとして資金の使い方や運営ノウハウ、KPIの設置等多岐にわたってアドバイスをしていく。文化庁は運営母体のキネマシトラスを通じて育成対象者と関わることになる。

また、協力・賛同会社にはProduction I.G、MAPPA、トリガーの宇佐氏と舛本氏、バンダイナムコフィルムワークスなどが並んでいる。

「グローバル・アニメ・チャレンジ」の大まかなスケジュールは以下の通り。3年間のプロジェクトで、様々なプロジェクトに取り組んでいく。

2024年7月:事務局発足

2024年8月中旬:育成対象者の応募受付開始

2024年9月中旬:育成対象者の応募受付締切・選定開始

2024年10月中旬:育成対象者決定・発表、国内でのワークショップ(月2回程度)およびマンツーマンの英語特訓(週2回程度)を開始

2025年夏頃:海外アニメ制作スタジオへの派遣(3ヵ月)

2025年~2026年春頃:パイロットフィルム制作

2026年6~7月:アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)、アニメエキスポ(米国)に出展

小笠原氏によると、フリーランスではなく組織と一緒に成長する人材を探していく予定で、才能がある・やる気がある人をメインにやっていきたいので、業種の人数の振り分けは現状では未定だという。フリーランスであっても、育成期間はスタジオに所属しておいてほしいということで、ある程度チームで動ける人を重視しているようだ。パイロットフィルムについては各クリエイターが所属するスタジオからひとり1本、最大6作品制作することを目標としている。

また、派遣先は交渉中の段階だが、重視しているのは米国とのこと。ヨーロッパも含め派遣地域は多くても2ヵ所までで、派遣先は大手のスタジオにできるよう交渉を進めていることが分かった。

本取り組みの指導者には、アニメ業界のベテランが勢ぞろい。スカイフォール代表の植田氏、KADOKAWA執行役の菊池氏、サラマンダーピクチャーズの櫻井氏、ジャーナリストの数土氏の4名が務める。植田氏・櫻井氏は制作の経験から、菊地氏はアニメメーカーとしての立場から、数土氏は日本と海外とのアニメを通じた関係など取材での知見を共有したいと、それぞれ異なるアプローチをしていくことを話していた。

予定では今月中旬に募集内容の詳細が明らかになる。続報に期待したい。

《marinda》

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