ライブ声出し復活― コロナ禍を経た今後の“楽しみ方”はどうなる? 声優・アーティスト「桃井はるこ」にインタビュー | アニメ!アニメ!

ライブ声出し復活― コロナ禍を経た今後の“楽しみ方”はどうなる? 声優・アーティスト「桃井はるこ」にインタビュー

ウルトラオレンジを愛しヲタ芸を愛するシンガーソングライター・桃井はるこさん。自身が手掛けた楽曲でもサイリウムをテーマにした作品が多く、ライブ現場主義の創作スタイルを貫いています。そんな「モモーイ」に声出しライブに対する想いや創作論についてうかがいました。

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(C)2016 Right Gauge All Rights Reserved.
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ようやくライブやイベントでの声出しが解禁されたものの、「さあ声を出そう!」と思っても、まだまだ躊躇することが多いはず。そこで、このタイミングだからこそライブイベントの楽しみ方やマナーを思い出す企画として、シンガーソングライター・アイドルプロデューサー・声優の桃井はるこさんにお話をうかがいました。

声出しライブができていた3年前のようす、コロナ禍であらたにはじめたこと、そして懐かしの応援スタイルについて……。

桃井さんが直近にミニライブを控えているということで、声出し解禁ライブを前にした心境と、3年ぶりの声出しライブを実際にやってみての感想も聞いてみました。

はたしてライブをまたいだ桃井さんの気持ちの変化は……?

▲コロナ前のワンマンライブの様子。ウルトラオレンジが咲き乱れ、モモイストと呼ばれるファンが統率された動きで応援する、桃井さんならではの熱いステージです。(2019年8月「赤羽ReNY alpha」にて/曲名「ワンダーモモーイ」)

■声出し解禁!! モモーイ現場はどうなる?

▲2016年7月24日に「CLUB CITTA’」で開催されたワンマンライブ『桃井はるこワンマンライブ2016 Pink Hippopo魂!!!』。

――イベントやライブでの声出しが解禁されました。この3年でライブの盛り上がり方を忘れてしまった、あるいは生まれて初めてライブに参加するという方へ向けて、ここで一度コロナ前の盛り上がり方を思い出すきっかけになればと思い、今回桃井さんにおいでいただきました。

桃井 ところがですね、実は私「以前はどうだった」とか思い出さなくていいと思っているんですよ。

――そうなんですか?

桃井 私がデビューした2000年代はまだ「ライブはこう盛り上がるもの」みたいな型がなく、ただ黙って聞くのが一般的でした。その時に戻っただけなんです。ここからです。一回すべてがリセットされた「ここ」を起点にして、またみんなでゼロから作り直せば良いんですよ。

――その視点はありませんでしたね。

桃井 そもそもライブって、日常生活にあふれる「やらなきゃいけないこと」を忘れて発散するためのものじゃないですか。その場所でまた何かに縛られるのは本末転倒です。ですからすべてをリセットした状態で、少なくとも私のライブでは何の心配もなく参加して欲しいです。どう盛り上げるかは私が考えます!!

――頼もしいです。でも「前のような盛り上がりにはならないかも」という不安はないのですか?

桃井 幸いにもありませんね。コロナ前までは毎年のように海外のイベントに呼んでいただいたのですが、日本の文化を紹介するようなイベントだとお客さんが家族連れだったりアニメに興味がなかったりで、私のことを知らない方も多いんです。主催者の人にも「盛り上がらなかったらすみません」と頭を下げられたこともありました(笑)。
でも一生懸命やれば伝わるんです。

▲2020年12月13日に「赤羽 ReNY alpha」で実施した「桃井はるこバースデーライブ2020 『ロスト・アンド・ファウンド -Lost and found-』」。「失われたものがある中で見つけたものもあった」……そんな思いが込められたタイトルです。

――それは桃井さんの現場を拝見すると何となく感じます。桃井さんのライブといえば、「LOVE.EXE」で一斉点灯されるウルトラオレンジやヲタ芸、「始発にのって」で繰り広げられるファンの環状線パフォーマンスが有名ですよね。あの熱い盛り上がり方はまさに桃井さんの「一生懸命」の結果なのかなと。

桃井 あのパフォーマンスについては、海外のイベントに行くと、たとえばチリやメキシコの方からよく言われますね。「モモーイのライブ映像を見てから一緒に『LOVE.EXE』で踊りたいと思ってました!」って(笑)。

ウルトラオレンジもヲタ芸も日本では迷惑行為として見られることがありますけど、なぜか海外では憧れの対象になっているんですよ。

――実際、傍から見ていると壮観です。様々な出演者が順番に登場する、いわゆる「対バン」形式のライブでも、出番が終わったアイドルの皆さんや主催者のアイドルのかたがフロアの後ろでキャッキャとウルトラオレンジを振っている姿をよく見かけました。
しかもそのサイリウムは、モモイストと呼ばれるファンのかたが配っていて、終演後はちゃんと回収するんですよね。

桃井 ありがたいですし嬉しいですね。そういえば私の現場、女性のお客さんが増えたんですよ。昔は女性といえば、楽曲提供した方や関係者がほとんどだったんですけど。

――「おうち時間」が求められた時期に、「屋根裏の桃井はるこ」のYouTubeチャンネルでトークの生配信をはじめたからでしょうか?

桃井 どうなんでしょうね。ただNACK5で放送中のラジオ番組『THE WORKS』に来ていただいた「にっぽんワチャチャ」の鈴木Mob.ちゃんは私の曲で育ったとかで、Mob.ちゃんひとりのために「LOVE.EXE」を歌うコラボをさせていただきました。

それにやはり『THE WORKS』にゲストで来ていただいたFRAMちゃんも地元のライブハウスでよく私の楽曲をカバーしてくれていたみたいなんです。この数年で同性からのラブコールをいただくターンに入ったんですかね?(笑)。

▲2020年12月13日に「赤羽 ReNY alpha」で実施した「桃井はるこバースデーライブ2020 『ロスト・アンド・ファウンド -Lost and found-』」。この公演から昼夜の2部制となりました。

■サイリウムへの想いと懐かしの応援スタイル

▲2021年12月11日に「赤羽 ReNY alpha」で開催されたバースデーライブ『BACK TO THE MOMOI 2021』。着席・発声なしのライブですが、盛り上がりはコロナ前とあまり変わりません。

――現在、大規模なライブではサイリウムやベンライトの存在が見直されています。桃井さんはサイリウムやペンライトへの想いが強く、特に禁止されがちなウルトラオレンジがトレードマークになっています。
そこでお聞きしたいのですが、桃井さんにとってサイリウムはどんな存在なのですか?

桃井 そうですね……。私がサイリウムと出逢ったのは1990年代の高校生の頃でした。六本木の「R?hall(アール・ホール)」というところで開催された、アイドルの水野あおいさんのお誕生日コンサートが最初だったんです。

「青い妖精」という曲の時にファンがサプライズとして青いサイリウムを一斉点灯させる企画があったのですが、そこでファンの方が配っていたサイリウムを手に取り、「こういうものがあるんだ」と感動しました。

そんな現場で育ったので、サイリウムやペンライトを持ってくれていると「聞いてくれているんだな」と安心するんですよ。

――もともと女性アイドルのファンだったんですよね。

桃井 そうなんです。あと私のワンマンライブでも毎回グッズとして出していて、ステージの上からフロアを見渡しては「すごい昔のペンライトを振ってるな」とか、「最新のものは綺麗だな」と思ったりしています。

お互い「世界でひとりの存在」が同じ場所に立ち、客席でライトを光らせたり、振り方によって、「聴いてるぞ!」「高まってるぞ!」と伝えていただける……その意味でもサイリウムは大事なものですね。

余談ですけど、もともとサイリウムの文化は西城秀樹さんのスタジアムライブが最初だと言われているんですよ。

――そうなんですか!?

桃井 私も伝聞で知ったのですが、どうやら会場が広く、後ろのお客さんがよく見えない状態だったらしいんです。それでステージから見やすいよう懐中電灯を持ってきてくださいとお願いしたのが最初みたいですね。ご本人がインタビューでおっしゃっていました。

――初めて知りました。

桃井 そしてそれがサイリウムになり、今はペンライトですよ。

――ちょっと脱線するのですが、桃井さんの現場は基本的にマナーがよく、だからこそウルトラオレンジやヲタ芸をいまだに楽しめる状況にあります。その一方で、楽しむあまりステージに背を向けて踊っている人もいました。正直なところどうでしたか?

桃井 でもそれって曲を覚えてないとできないと思うんです。覚えるくらい何度も聞いてくれた証拠ですよ。「桃井さんの現場はやりたい放題だ」みたいなことを言われることがありますけど、実際に来ていただければ違うことが分かっていただけると思います。

――それはそうですね。実際に拝見したのでよくわかります。

桃井 それにワンマンライブのたびにコール本を自主的に作ってくれるファンの方もいらっしゃいますし、このコロナ禍では、別の方がアンコールの代わりに小さな太鼓を持ってきてくれました。そういったファンの皆さんに支えられて、こうして毎年のようにワンマンライブをさせていただいています。

――太鼓は、「もう一度はるこが見たい」という定番のアンコールを、太鼓のリズムだけで表現したんですよね。

桃井 Tシャツに着替えて控室から袖に行こうとすると、客席の方から唐突に太鼓の音が聞こえてきましたからね。びっくりですよ(笑)。来てくれただけでも嬉しいのに。きっと心配してくれたんでしょうね。「アンコールってどうやってやるんだろう?」って。

皆さん、私がライブの準備をするのと同じくらいの熱量で準備してくれて、そしてライブ本番では盛り上がってくれます。そんなところからも思うんです。声出しOKになっても、私は何も心配することはないんだろうなって。

――桃井さんのサイリウムへの愛は今のお話からもうかがえるのですが、ご自身が作られた「ゆめのばとん」「ルミカ」「かがやきサイリューム」にもその愛が込められています。個人的にですが「ゆめのばとん」は曲名がとても素敵でした。

桃井 でも「ゆめのバトン」は私がもらったものだけでなく皆も持っているんですよ。この曲を聞いた人が「夢のバトン」をつないで欲しい……そんな想いも込めています。

今のペンライトって本当に便利になりましたよね。昔は一瞬で色が切り替わるものなんてありませんでしたし、パッと見ただけでは何色に光るのか区別がつきませんでした。ですから間違った色を出さないようラベルを貼って管理していたんです。それももう失われた文化ですよ。

あと応援だと、昔はほら貝を吹く人がいましたよね。「ぶぉぉぉぉぉぉぉん……」って。あれうるさくて迷惑でしたけど(笑)。

――ありましたね!!

桃井 「戦かよ!」って思いましたよ(笑)。それに伝説のシャンプー! ライブ会場で突然シャンプーして自己アピールするんですよ(笑)。あと紙テープもありましたね。女子プロレスラーコンビの「クラッシュギャルズ」は紙テープまみれになってリングで歌っていました。でもそこまで行くと応援というより妨害に近いような気がします(笑)。

――それは自分もテレビで見て覚えています(笑)。

桃井 紙テープも楽しいんですよ。今は禁止になっていると思いますけど、昔、ヤクルトスワローズが優勝した時には紙テープを投げていました。ただ芯が当たると危険なので一度テープを巻き直すんですよね。しかも職人になると、その間に紙吹雪を仕込むんです! 応援といえば、あとは法被を着る人もいましたよね。

――自分は昔、ハロプロの現場に通っていた時に特攻服をよく見かけました。

桃井 私の現場にもいましたよ。「トップク」って言うんですよね!
私が志倉千代丸さんと共同プロデュースさせていただいている「純情のアフィリア」というアイドルグループは“振りコピ”が多いんですよ。メンバーの振り付けをコピーして一緒に踊るという。ですからリリースされたばかりの新曲では、一緒に踊りやすいよう振り付けの先生が考えてくれました。

――「純情のアフィリア」といえば、1月29日に開催された「MAGES;FES」の招待席に桃井さんもいらっしゃいましたね。元「アフィリア・サーガ」のユカフィンさんと一緒に腕を振り上げてめちゃめちゃ楽しんでいらっしゃいました。

桃井 ワンマンライブと違ってフェスは色々な人が集うのがおもしろいですよね。例えば「純情のアフィリア」のファンはライブ慣れしているのでペンライトを自分の推しメンバーの色にしていましたし、cadodeさんのステージでは応援の仕方を変え、身体を揺らすような感じで耳を傾けていました。あとすごかったのは松澤由美さんです!!

――自分も我が耳を疑いました(笑)。

桃井 「MAGES;FES」なのに、MAGES作品にまったく関係のない『機動戦艦ナデシコ』のオープニング曲ですよ! でもあれがいいんです、私も勉強になりました。

MAGES.のスタッフさんも、今回のフェスは「また再開していくぞ」という決意表明だとおっしゃっていました。私は「またやる時は出してくださいね!」と言って帰ってきましたけど(笑)。

あと私、FM NACK5で「THE WORKS」というラジオ番組をユカフィンさんと一緒にやらせていただいているのですが、長いことリモート収録をしていてスタッフさんたちと直接会う機会がなかったんです。でも現地でそのスタッフさんたちとも会えて楽しかったですね。

▲客席から受け取ったサイリウムを「パキッ」と割り、ウルトラオレンジで全力歌唱する桃井さんの姿はもはやライブの定番です。

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《気賀沢 昌志》

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