「はめふら」カタリナは従来の天然系ヒロインと何が違うのか? ―天才ではなく“凡才”という新しさ― 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「はめふら」カタリナは従来の天然系ヒロインと何が違うのか? ―天才ではなく“凡才”という新しさ―

アニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(通称:はめふら)。

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「はめふら」第9話先行カット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
「はめふら」第9話先行カット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会 全 9 枚 拡大写真

■天然ジゴロ、カタリナ・クラエスの人たらし伝説


・一人脳内会議



まず、彼女が天然の人たらしであることを説明する前に、ひとつ確認しておかなければならないことがあります。

それは、カタリナは他のアニメの天然キャラによくいるような、「アホの子」ではないということです。
魔法学園で行われたテストの成績も平均ですし、彼女はしっかりと自分の頭で考えて行動できる女の子です。

例えば、ゲームの攻略対象(自分にとっては、バッドエンドへと導く破滅フラグ)が現れたときは、彼女はいつも脳内で作戦会議を開きます。
脳内会議では、自分を「弱気カタリナ」、「強気カタリナ」、「ハッピーカタリナ」、「真面目カタリナ」、そして「議長カタリナ」の5人、通称「カタリナファイブ」に分けて、破滅エンド回避のために今後どうすればいいのかを真剣に議論します。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』PVカット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
例えば、第2の破滅フラグ、キースが現れたときには、「引きこもりからチャラ男になって、ゲームの主人公と恋に落ちるから、孤独にしないようにいっぱい構おう」という結論に達し、作戦は見事に成功。
ゲーム本来の展開から、キースを遠ざけることに成功します。

しかし、15歳になって魔法学園に進学し、「FORTUNE LOVER」の主人公・マリアが現れたときに出した結論は、「国外追放先で、農民としてやっていけるように畑を作りましょう」という、子どものときに出した対策とまったく変わらないものでした。それ、作戦っていうかな!?

しかも、この提案をしたのが「カタリナファイブ」のなかで、一番しっかりしてそうな「真面目カタリナ」……。

このように、カタリナは決して「アホの子」というわけではありません。
ただ、考えぬいた末に出した結論が思いっきりズレているという、信じられないほどの「天然」なのです。

・人たらし撃墜王


そんな天然令嬢、カタリナ・クラエスの最大の魅力は、何といっても「人たらし」であること。この作品、一番の肝といっても過言ではありません。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』第5話先行カット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
第1フラグのジオルド、第2フラグのキース、第3フラグのアランと次々と撃墜していくさまは爽快感すらあります。
なんといってもスゴかったのは、第2話のメアリとアランのエピソード。彼女はここで、たった1話で2人攻略するという快挙を成し遂げます。

カタリナはAパートで、花を育てることが好きなメアリに、「君は植物を育てる特別の才能があるよ。君の手は緑の手だね」と甘くささやいたかと思うと、Bパートでは対抗意識が強いアランに、「女の子があなたに付いてこないのは、あなたの話がつまらない!魅力がないからよ!」と挑戦状を叩きつけて相手を乗せます。これぞ天然ジゴロ。

もちろんカタリナに人たらしの自覚などありません。考えるよりも先に口が動いてしまう、裏表のないはっきりした性格なだけです。
そして鈍いといえば確かに鈍いのですが、彼女は自分の破滅フラグを回避することしか頭になく、よもや自分と攻略対象との間に恋愛フラグが立つなんてことは、想像すらつかないのです。

この鈍感なところにもしっかりした理由があるあたりは、これまでの(逆)ハーレム系主人公と一味違うポイントではないでしょうか。

それにしても、本来アランがメアリに言うはずだった、「君の手は、緑の手だね」という口説き文句を無意識に奪ってメアリをたらし込んでおいて、「女の子が付いてこないのは、あなたの話がつまらないからよ!」とアランに言い切ったカタリナは衝撃的でした。
ひどい、ひどいよカタリナ……。天然すぎるよ……。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』第2話先行カット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

■カッコいい!英雄としてのカタリナ・クラエス


それでは最後に、そんな「ギャップ」と「天然」の持ち主であるカタリナが、もはや天然過ぎて「ヒーロー(ヒロイン)」にまで到達している。そんな新しい「天然のヒーロー(ヒロイン)」としての彼女の魅力をこちらでご紹介します。

まずは、カタリナの義弟・キースとの出会いのエピソード。カタリナは、クラエス家の後継ぎとして引き取られてきた少年キースを、義姉として全力で可愛がります。

しかし仲良くなってきた頃に事件が発生。キースは、魔法でカタリナに怪我を負わせてしまい、責任を感じて自分の部屋に閉じこもってしまいます。

そこへ、カタリナは斧を持って登場。前世の乙女ゲームで、キースの孤独な過去やその後の引きこもり生活を知っている彼女は、助けるなら今しかないと瞬時に悟り、ためらうことなくキースの部屋のドアを斧で突き破ります。

「ごめんなさい!」
そして、カタリナは自分の不注意をキースに謝ります。
これまで、いつも自分が悪いと責め続けてきたキースの心に、謝罪の言葉が響きます。それは誰かが言ってあげなくてはならない言葉でした。それをカタリナは無意識に言うのです。
あなたは悪くない!
こうしてキースは再び心のドアを開いたのでした。

そしてもう一つ、乙女ゲームの正式なヒロイン、マリア・キャンベルとのエピソード。
カタリナは、魔法学園の裏庭で貴族令嬢たちから嫌がらせを受けていたマリアを助けます。いじわるな令嬢たちを追い払い、地面に落ちてしまったマリアの手作りお菓子を味見(全部)して、マリアの手に手を添えて口説くシーンは、それだけで恋に落ちそうですが(私はこのシーンで心の中で黄色い悲鳴をあげた)、問題はマリアを2回目に助けたときです。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』PVカット(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
カタリナは、またしても貴族たちから嫌がらせを受けているマリアに遭遇します。
「あんたは『光の魔力』を持っているから、特別扱いされているんだろう?」そう言ってマリアに迫る貴族たちの前に飛び出したカタリナは、もう一度彼女をかばいます。
「私たちはマリアちゃんが『光の魔力』をもっているから一緒にいるんじゃない。マリアちゃんが好きだから一緒にいるのよ!」
そう言って、再び悪漢どもからマリアを救うカタリナ。
これまで、平民の世界では貴族の隠し子じゃないかと指をさされ、魔法学園では平民のクセにとイジメを受けてきたマリアの瞳から涙がこぼれます。

1度目に助けたときは、ひょっとしたら貴族のきまぐれだったかもしれません。しかし2度目に助けたときカタリナは、この学園は完璧な実力主義だから平等だ、そして特別だからとかではなく、あなたは私の友達なのだとマリアに言うのです。

貴族でも平民でもなく、自分のことを対等に思ってくれる人がここにいる。「光の魔力」を発動させて以来、マリアに初めて自分の居場所ができた瞬間でした。

■全く新しい「天然のヒロイン」、カタリナ・クラエス


以上、さまざまな要素からカタリナの魅力について見てきましたが、最後にまとめると外見の「ギャップ」の破壊力の強さ、ただの「天然」じゃない内面の面白さ、そしてそれらを合わせた男女限らず憧れてしまう「ヒーロー(ヒロイン)」感ということになります。

そして、そんな「天然のヒロイン」カタリナの新しいところは、彼女は天才ではない「凡才」だということです。
これまでアニメで描かれてきた天然系ヒロインたちは、何かしら秀でたものがありました。例えば『けいおん!』の平沢唯だったら天才的なギターの才能であったり、『ちはやふる』の綾瀬千早だったらカルタを続ける努力の才能だったり。

しかし、彼女はあくまで中身はただの庶民。勉強だってそんなに得意じゃないし、魔法だって「土ボコ」しか作れません。大好きなお菓子だって作ったことはなさそうです。天才なのは木登りぐらいでしょうか?

そんな姿形が違うだけで、私たちと同じようなただの一般人の彼女が、英雄的行動を見せたときは、まるで奇跡的な瞬間を目撃しているように見えます。
やっぱり人間は外見じゃなくて中身なんだなという、ごく当たりまえ感動ですね。

なのでもちろん、彼女は能力的にはなんの後ろ盾もありません。
これが『とある科学の超電磁砲』の御坂美琴なら、ある程度安心して見ていられるのですが、魔法能力ほぼゼロの彼女が後先考えずに飛び出して行くのを見ていてると、危なっかしくて冷や冷やしてしまいます。

この娘は本当に素敵だけど、誰かが見守っててあげないと、いつかやり過ぎて自分から破滅してしまうかもしれない。
カタリナ・クラエスは、そんな守ってあげたいし守られたい、全く新しい「天然のヒロイン」なのです。
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《曙ミネ》

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