■コラボで避けたいこと「説教はしたくない」
――作品の違いによるギャップを見せたいとのことでしたが、互いの世界観を壊さないために「これはやらないようにしよう」といったルールはありましたか?
大森:今回、『ゴブスレ』の令嬢剣士というキャラクターが登場し、彼女は今回のメンバーで一番未熟な冒険者かもしれないキャラクターなんですが、彼女に対して、説教くさいやり取りはさせたくなかったんです。そこは逐一くもさんに確認しつつ進めました。
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令嬢剣士
蝸牛:自分もクロスオーバーするときに、特定のキャラクターに対して「説教しない」ことと「上から目線にならない」よう気をつけています。あと一方が一方をひたすら褒めて持ち上げてしまわないようにとか。
とはいえ、ベテランなゴブスレさんから見ると、新人冒険者なベルくんは色々危なっかしく思えてしまいますし、ベルくんは教わったら素直に「はい!」って言いそうなので……(笑)。大森先生に、「こういうことを言わせても大丈夫ですか?」と確認しながら書きました。
大森:どのコラボシナリオでも言えるんですが、ベルは頼りなくて足を引っ張っても許されるキャラクターなので、その辺りは大丈夫ですよ。
蝸牛:ベルくんは、ほんと良い子ですよね。
大森:弱い部分を見せてもヘイトが貯まらないですし、弱いところからの逆転を上手く使えるキャラだと我ながら思います。
蝸牛:ゴブスレさんは自分なりに後輩の面倒を見ようとする人なので、ベルくんが素直に聞いてくれるからたくさん喋らせてもらえました。
大森:そこはびっくりしました。ゴブスレさんが今までに見たことないほど話しているので。
蝸牛:聞かれたら素直にしゃべるんですよ。聞かれないから黙ってるだけで(笑)。
大森:キャストの梅原裕一郎さんもビックリしたんじゃないですかね?
蝸牛:ゴブスレさんは主人公なのにセリフが少なくて、梅原さんには毎回申し訳なく思っていたんです。それに格好良く喋ってくださるのに、「ゴブスレさんは格好良くしないでください」となるのも心苦しくて。
大森:え、そんなお願いしているんですか? でも梅原さんだと何を言ってもカッコよくなってしまうのでは?
蝸牛:梅原さん自身、カッコよく芝居しようとは思っていないんでしょうけど、それでもカッコよすぎてしまうので「なるべく抑えてください」と、音響監督さんらがお願いしていることがありましたね。実際梅原さんの声は本当にカッコいいので。
大森:なるほど、それでああいうお芝居になっているんですね。ゴブリンスレイヤーさんらしさが出ていて、すごく良いですよね。
■タイトル決めで板挟みになった大森先生
大森:今回の作業で一番怨嗟の声を上げたのは、コラボのタイトルを決める時に運営さんとくもさんとの間で板挟みになったことです(笑)。最初にくもさんに提案してもらったタイトルは「神は骰子を振った」。これは第一話のタイトルに使用していますが、それをコラボタイトルとして運営さんに提案したら「うーん……」といった反応で(笑)。
蝸牛:その後、カッコいい横文字のタイトル案が送られてきたので、今度はこっちが「うーん……」となり(笑)、じゃあ「ダンジョンにゴブリンを求めるのは間違いじゃない」はどうですかと返事したら……。
大森:大反対されてしまいました(笑)。
――横文字のカッコいいタイトルはなぜダメだったんですか。
蝸牛:ダメというわけではなく、自分が少し前の海外SF小説やハードボイルド小説、ファンタジー小説のシンプルな題名や翻訳された和文タイトルが好きだからか、カッコいい横文字タイトルを付けられると「うーん」となるんです。逆中二病ですね(笑)
大森:でも運営さん側はカッコいいタイトルをつけたかったようで。
――それでどのように落着したのでしょう?
蝸牛:後で「『ダンジョン&ゴブリンズ』はどうですか?」と提案したら、それが通りました。
大森:あれは提案してもらって本当に助かりました。コラボのタイトルだけでこんなに揉めたの初めてでしたよ! もういっそ、くもさんと運営さんで直接会って話し合って! と叫びそうになりました。中間管理職というのもあれですが、大変さを思い知りました(笑)。
――今回のコラボビジュアルのポイントや気に入っている部分はありますか。
大森:自分は牛飼娘の一途なとこが大好きなので、この兜を抱えているイメージはキュンとしますね。
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牛飼い娘
蝸牛:イラストは基本的にお任せしているので、「ゴブスレさんにスタイリッシュなカッコいいポーズをつけないでください」とお願いした程度ですね。皆さん、主人公だから格好良くしようとしてくださるのですが、ゴブスレさんはそんな凄い動きとかできないので……!(笑)。
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ゴブリンスレイヤー
大森:でもくもさん、ゴブスレさんの、このガニ股のポーズは良かったんです? くもさんから頂いた参考画像をそのままお渡ししてイラストにしてもらったんですが。
蝸牛:ゴブスレさんはわりと「腰を深く落として構える」とかやってるので……(笑)。
あとまあこのポーズは、ウェブ版の頃から追いかけてくれている方々にはニヤリとして頂けるかな、と。
大森:なるほど(笑)。あと、桜花は『ゴブスレ』の重戦士をイメージしたビジュアルになっています。
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桜花
実は、最初に上がってきたイラストは、桜花がゴブスレさんの鎧を着たもので、「これ、桜花とゴブリンスレイヤーさんの話になっちゃいますよ!」と言って直してもらったんです(笑)。
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桜花のゴブスレ衣装 ラフ
思わず笑ってしまうほど、かなりいい仕上がりだったのですが、今回のコラボシナリオには合わないだろうなと。
■『ゴブスレ』劇場版の前日談でありTVアニメの後日談
大森:これまでいろいろコラボをやらせてもらいましたが、実は最初、コラボというものに抵抗感があったんです。二次創作は大好きではあるんですけど。
蝸牛:あれ、それ初耳ですね。ちょっと意外でした。
大森:『ダンメモ』最初のコラボの話をいただいた時、実はかなり渋っていました。
でも、『キノの旅』の時雨沢恵一先生とはよくお話させてもらう機会があって、時雨沢先生となら面白いものが作れるかもしれないと思って挑戦することにしたんです。
『キノの旅』なんてレジェンド級の作品を手がけられた先生との共作は緊張感も伴いましたが、お互いにアイデアを出し合いながら綿密にコミュニケーションを取りながらコラボシナリオをつくることができて。その結果、コラボに抵抗感がなくなったんです。
蝸牛:なるほど。そこから「ご飯食べよう! ところでコラボやらね?」につながったと……(笑)。
――では最後にあらためて今回のコラボイベントの注目ポイントをお願いします。
大森:今回のコラボシナリオは、令嬢剣士のエピソードを描く『ゴブスレ』劇場版の直前の時系列という体で書いていますので、それを踏まえていただくと一層楽しめると思います。
一番の見どころは、ベルとゴブリンスレイヤーとのかけ合いです。とても面白い異文化交流が見られると思うので、ぜひお楽しみください。
あと、今回ゲームスタッフさんの作り込みも凄くて、ガチャも演出パートも背景素材も素晴らしい仕上がりです。
蝸牛:昨今、また流行りだしているTRPGですが、ジャンルとしてはまだまだ弱い。だからその魅力を知ってほしいという思いで書かせていただきました。
大森先生から、劇場版の前日談という話がありましたが、同時にTVアニメの後日談でもあります。アニメで冒険者、パーティとして成長したゴブスレさんや女神官さんたちがどんな風に活躍するかを楽しんでいただけると幸いです。
大森:そのパッションがシナリオにも滲み出ていますよね。20話の予定が、ボリュームが増えて28話になってしまった時のディレクターさんとプロデューサーさんの顔が今でも忘れられません(笑)。
蝸牛:それは本当に申し訳ありません!(笑)
大森:迷惑をかけたぶん、少しでも貢献しないといけませんね。自分とくもさんは、何度もガチャを引かなくては!(笑)