「ぼくらの7日間戦争」大人VS子どもの対立構造は現代にそぐわない。“令和のぼくら”の敵とは? 監督×脚本【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「ぼくらの7日間戦争」大人VS子どもの対立構造は現代にそぐわない。“令和のぼくら”の敵とは? 監督×脚本【インタビュー】

中学生たちが廃工場に立てこもり、大人への爽快な逆襲劇を繰り広げるベストセラー小説『ぼくらの七日間戦争』が、初のアニメーション作品として生まれ変わった。

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『ぼくらの7日間戦争』(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
『ぼくらの7日間戦争』(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会 全 9 枚 拡大写真

■今の“ぼくら”の温度感を持った6人のキャラクターの誕生


現代の感覚で物語を楽しみ、共感を呼ぶ。だからこそ、観客の感情とリンクするキャラクターづくりには、細心の注意を払ったという。

村野「物語のスタート時点で、『これはぼくらだよね』と中高生に思ってもらえるような温度感のキャラクターを6人そろえる必要がありました。
実は、シナリオづくりに着手してから完成稿になるまで、1年以上かかっているんです。その間にそれぞれの役割もどんどん変わっていって。その中で唯一、主人公の守だけはキャラクター性が変わりませんでした」


主人公・鈴原守は、学校ではいつもひとりで歴史に関する本を読んでいる、目立たない存在だ。唯一の拠り所は、同じ趣味を持つ仲間が集うチャット。隣に住む幼なじみ・千代野綾に密かな想いを寄せているが、学校で彼女と話すことはほとんどないという設定だ。

村野「綾の親友・山咲香織やクラスメイトの阿久津紗希は、最初から名前はありましたが、途中で役割が大きく変わりました。
また、守のクラスメイトでクラスの中心的な存在である緒形壮馬や、紗希に無理矢理参加させられた弁護士志望の秀才・本庄博人は、初稿の段階では存在していませんでした。理由は、物語で扱おうとしていた事件が、最終稿とは別のものだったからです

でも扱う事件が決まり、今の子どもたちにとって『こんな子いるよね』という温度感を探った結果、現在の人間関係のバランスに自然と落ち着いたんです」

大河内「キャラクターの変化で大きかったのは、それぞれが抱えている隠しごとと、願望とのバランスでした。物語は主人公の視点から入るので、最初から観客に明かされている隠しごとは、『好きな子がいるけれども告白できない』という守の気持ちです。
ほかの5人の隠しごとは、守を通して、物語の中で少しずつ明らかになっていく流れになっています。実はキャラクターのネーミングには、監督のこだわりがあるんですよ」

村野「守は、その字の通り、自分たちの場所を守る子です。名前の響きから連想される、少し強いかもしれないけれども内向的な印象が、結末に向かうまでに大きな変化を遂げる。
その変化は、僕の願望も入ったある種ファンタジーになっているかもしれませんが、みんなとの絆や関係を守る主人公であったらいいなと思い、名前をつけました」


こうしてできあがった完成稿に、監督は絵コンテでさらにブラッシュアップを重ねたという。そこで活かされたのは、村野監督が尊敬し師事する、『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』、『忍たま乱太郎』の総監督・芝山努氏の教えだった。

村野「コンテでは、文字で表現しきれなかった部分を拾う調整をしました。キャラクターが今どう思い、何を考えて行動しているのか、心が動いた瞬間のリアクションを丁寧に拾っていこうと思って。
セリフに関しても、自分がこの場にいたら、せいぜいこんなことしか言えないだろうというリアルラインに乗せるようにしました。映画的で憧れるようなセリフではなく、いっぱいいっぱいな登場人物達に自分を重ねて、恥ずかしく感じれるくらいの温度感を目指しています。

芝山さんからは、『お客さんと同じくらい、ちゃんと自分も楽しんで作れ』と教わりました。90分の映画を作っていて、どこかのポイントでお前が飽きて作っていたら、お客さんもそこで飽きるからと。
だからきちんと自分で、5分10分置きに「楽しいな」とのめり込めるポイントを作りながら、映像を作っていくものだよと言われたことを、守っていきたいなと思いながら制作を進めてきました。できたかどうかは、これが初めての監督作品ですのでわかりません(笑)」

大河内「監督は、言いたいことはきちんと伝えてくれますし、こだわりたいポイントについてもちゃんと説明してくれるので、僕は一緒に仕事をしていてとてもやりやすかったです」


最後に、映画の見所と合わせてファンへのメッセージをもらった。

村野「『ぼくらの7日間戦争』というタイトルを使わせていただいていますが、現代風にアレンジしている分、原作とはちょっとした違いがあります。
でも、原作の精神性や、物語に込めている想いを我々もリスペクトしていますし、原作と同じ『ぼくらの』シリーズの最新作という形で制作し、きちんとその形になったと思っていますので、原作ファンも実写映画のファンの方も、もちろん全然知らないという方も観に来ていただけるとすごくうれしいです」

大河内「村野監督と仕事をしてみて、改めて原作の魅力のすごさに気づかされました。学校では顔を合わせているけれども、実は中身を全然知らない人と、7日間立てこもって戦争するというのは、ものすごく楽しいことなんですね。

僕の青春にはなかったけれども、こんな青春を送ってみたかったと思うし、今高校生で『お前、いっしょに立てこもろうぜ』と言われたら、きっと行くと思います。
だから映画を観る約90分間で、『あるかもしれない青春』をたっぷりと楽しんでもらえたらいいなと思います」

『ぼくらの7日間戦争』
(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
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《中村美奈子》

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