「トイ・ストーリー4」1作目から24年…当時不可能だったが、CG技術の進化で表現可能となったものとは?【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「トイ・ストーリー4」1作目から24年…当時不可能だったが、CG技術の進化で表現可能となったものとは?【インタビュー】

7月12日から公開される『トイ・ストーリー4』。誰もが完結編だと感じた前作から9年が経った今、なぜ続編を世に出そうと思ったのだろうか。ジョシュ・クーリー監督とマーク・ニールセンプロデューサーに制作の舞台裏を伺った。

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『トイ・ストーリー4』(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『トイ・ストーリー4』(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 全 8 枚 拡大写真
7月12日から公開される『トイ・ストーリー4』で描かれるのは、『トイ・ストーリー3』のその後の世界。

アンディのもとを離れ、新たな持ち主ボニーを見守るウッディとバズたちの前に、手作りおもちゃのフォーキーがやってくる。ことあるごとに自分をゴミだと主張するフォーキーは、ついに脱走してしまう。連れ戻しに出かけたウッディは、かつての仲間であるボー・ピープと再会することに。数々の出会いがウッディの心を動かし、物語はひとつの結末を迎える――。

誰もが完結編だと感じた『トイ・ストーリー3』から9年が経った今、なぜ続編を公開することになったのだろうか。また『トイ・ストーリー』の公開から24年が経ち、映像技術が進歩したからこそ可能になった表現とは。
制作の舞台裏を、来日したジョシュ・クーリー監督マーク・ニールセンプロデューサーに伺った。
[取材・構成=ハシビロコ]

■続編があるなんて思いもしなかった



「私自身、『トイ・ストーリー3』で物語が完結したと思っていました」

そう語るのは『トイ・ストーリー4』生みの親のひとり、ジョシュ・クーリー監督
。本作で初めて長編アニメ映画を手がけたクーリー監督は、ピクサーに入社する前から『トイ・ストーリー』シリーズのファンだった。
それだけに、『トイ・ストーリー4』の制作が決まったときにはとても驚いたという。

「まさか自分が監督としてかかわるなんて、夢にも思いませんでした。オファーを聞いて、続編を作るのはなぜか、という疑問が浮かんだほどです。『トイ・ストーリー3』が素晴らしい終わり方だったので

ジョシュ・クーリー監督
ジョシュ・クーリー監督
もちろん『トイ・ストーリー3』はウッディとアンディの物語の完結編といって相違ない。プロデューサーのマーク・ニールセン氏は、『トイ・ストーリー2』も『トイ・ストーリー3』も完結編という意識で制作していたという。

『トイ・ストーリー4』制作の発端となったのは、脚本のアンドリュー・スタントン氏。実は『トイ・ストーリー3』制作中から、続編のアイデアを密かに温めていた。しかしそれを知るのは何年も後のことだったと、ニールセン氏は語る。

「スタントン氏は私たちに、『ウッディの物語はまだ続けられる』とアイデアを伝えてくれました。ボー・ピープを再登場させて、新しい環境に置かれたウッディの物語を描くというのです。面白いアイデアだと感じ、続編を制作することにしました。『トイ・ストーリー4』はいわば、ウッディの物語の完結編です」

■ボー・ピープはもともと強いおもちゃ



『トイ・ストーリー4』のポスターが公開されたとき、久しぶりに登場したボー・ピープに驚いた人は多いだろう。

前作の『トイ・ストーリー3』でアンディが手放したおもちゃの中に含まれていたボー・ピープ。しかしその別れが映像として描かれることはなく、セリフの中で別の場所に行ったことが語られるに留まった。
『トイ・ストーリー4』では、いよいよその別れの真相が明かされる。

そもそもボー・ピープは初代ヒロインでありながら、前作までで映像に登場した時間は6分程度しかない。そんな彼女をなぜ『トイ・ストーリー4』のキーパーソンにしようと思ったのだろうか。
クーリー監督は何度もシリーズの映像を見直しているうちに、ボー・ピープに強さを感じたと語る。

「ボー・ピープはこれまで目立った活躍シーンがないキャラクターでしたが、精神的な強さを兼ね備えていました。これまでもウッディはなにか問題が生じると、ボー・ピープに相談していたでしょう。彼女はいつもウッディを導いていたのです」


『トイ・ストーリー4』に登場するボー・ピープは、これまでのような「家の中でウッディを待つおもちゃ」ではない。過酷な環境に置かれても自らの手で運命を切り拓く、サヴァイバーとしての側面が描かれている。
こうした立ち位置が決まるまでには長い時間がかかったと、プロデューサーのニールセン氏は明かす。

「ボー・ピープが『トイ・ストーリー4』で重要な役割を果たすことは最初の構想から決まっていました。作品のコードネームが『ピープ』だったほどです。ただ、制作中に彼女のキャラクターはどんどん進化していきました。持ち主がいない迷子のおもちゃ、という立ち位置にたどり着くまでに、実は3年半ほどかかったのです」

マーク・ニールセンプロデューサー
マーク・ニールセンプロデューサー
前作までで語られたように、おもちゃは子どもに遊ばれなくなることへの恐怖を抱えている。そんな状況をはねのけて生き延びたボー・ピープがウッディにどのような影響を及ぼすのか、ぜひ注目してほしい。

■徹底的な研究から生まれたボー・ピープの表現


『トイ・ストーリー』の公開から24年が経ち、映像技術が進歩したからこそ可能になった表現がある。たとえばボー・ピープはポーセリンという陶磁器で作られているおもちゃだが、以前はその質感を表現することが難しかったとクーリー監督は語る。

「当時は技術的な問題はもちろん、ボー・ピープの制作にあまり時間をかけることができなかったため、陶磁器らしく見せることが困難でした。それほど重要な立ち位置のキャラクターではなかったこともあり、ウエストから上のカットしか作られていなかったほどです」

しかし『トイ・ストーリー4』では、顔や腕など身体の一部を大写しにする、クロースアップという手法を積極的に用いた。



表情も前作までとは比べ物にならないほど細かく動き、心情がより深く伝わってくる。画面に耐えられる絵を作るため、監督たちはボー・ピープの原材料であるポーセリンを徹底的に研究し、3DCGに反映させたという。

「ポーセリンには光が反射する部分と吸収される部分があるので、角度によっては透明に見えます。また、時間が経つと表面の下の部分が劣化してくるグレージングという現象も見られます。こうしたポーセリンならではの特徴を映像にどう落とし込むかを考えました。ポーセリンを実際に割ってみて、断面を観察したこともあります」

「陶磁器はもろい部分だけでなく、強い部分も持っていることがわかりました。だからこそアクションもできますし、さまざまな環境に適応することができるのです。ただ、さすがに高いところから落ちると割れてしまうので、ボー・ピープ自身が材質を意識した動きをするよう心がけました」

強さを兼ね備え、環境への適応力も高い陶磁器。こうした素材の特徴も、ボー・ピープの内面に反映されているのかもしれない。


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《ハシビロコ》

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