「そばへ」"初監督"と"初キャラデザ"の石井俊匡×秦綾子、どう魅力的なキャラ作った?【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「そばへ」"初監督"と"初キャラデザ"の石井俊匡×秦綾子、どう魅力的なキャラ作った?【インタビュー】

オレンジが制作したオリジナルショートアニメーション『そばへ』。今回は石井監督とキャラクターデザインを担当した秦綾子さんにインタビュー。

インタビュー スタッフ
注目記事
PR
『そばへ』インタビュー 石井俊匡×秦綾子
『そばへ』インタビュー 石井俊匡×秦綾子 全 10 枚 拡大写真
丸井グループが製作、東宝映像事業部が企画をし、オレンジが制作したオリジナルショートアニメーション『そばへ』。

「雨」をモチーフに、丸井グループが掲げるテーマ「インクルージョン」を美麗な3DCGアニメーションで表現している。



連載第1弾:石井俊匡監督と主演・福原遥さん、第2弾:東宝の武井克弘プロデューサー、オレンジの和氣澄賢プロデューサーの対談に続き、今回は石井監督とキャラクターデザインを担当した秦綾子さんにインタビュー。

石井監督は秦さんの絵のどこに魅力を感じ、キャラクターデザインとして起用したのか? また秦さんは初のキャラクターデザインにどのように取り組んだのかなど、作品の内幕を聞いた。
[取材・構成=山田幸彦/撮影=小原聡太]

『そばへ』インタビュー特集
>第1弾:丸井グループ×東宝×オレンジ「そばへ」 石井監督&福原遥が明かす、制作秘話と見どころ【インタビュー】

>第2弾:話題の企業PRアニメ「そばへ」丸井グループの“インクルージョン”をどう表現? 東宝&オレンジPが語る

■今回のタッグが実現した経緯は?


――最初のお二人の出会いは『未来のミライ』とお聞きしました。石井監督は助監督、秦さんは作画監督として参加されています。

石井:『未来のミライ』の制作が始まる前の2016年、スタジオ地図の忘年会ですね。細田監督とも初めてそこでお会いしました。

:そうですね。私はもろもろのデザインが決まる前、石井さんよりも先にスタジオに入っていました。

――『未来のミライ』制作時、おふたりはどのような形で関わっていましたか?

:もうひとりの作画監督の青山(浩行)さんを中心に石井監督とやり取りをしていました。

石井:作画監督の青山さんが秦さんに向いていると思うカットを提示して、それを参考に僕が秦さんにカットを依頼する。で、原稿が上がったらチェックして……というやり取りがメインでした。

――当時、石井監督は秦さんの絵にどういう印象を持っていましたか?

石井:くんちゃんといったキャラや、各カットの修正原画を見ていたわけですが、思ったよりも筆致が濃くて。

:けっこう荒い絵で描いているのでびっくりしたと思います……(笑)。

石井:そこが意外でしたね(笑)。『未来のミライ』のあとCMを制作したのですが、そのとき秦さんに原画で入ってもらい、レイアウトから描いていただいたんです。その絵がすごく可愛くて素敵でした。
キャラクターのシルエットや動きも気持ち良かったし、原画の一枚一枚が生き生きしていた。絵にすごく説得力を感じたんです。

そこから時を経て、『そばへ』の監督としてスタッフィングをする際に、ぜひ仕事をご一緒してみたいとお声がけした形です。

『そばへ』インタビュー 石井俊匡×秦綾子石井俊匡監督とキャラクターデザイン秦綾子さん

――今回、秦さんは初のキャラクターデザインです。石井監督は、何を期待して秦さんにお願いしたのでしょうか?

石井:「秦さんならこういうデザインを上げてくるだろう」と仕上がりを予想してお声がけしたわけではなく、「秦さんはどんなデザインを上げてくるかな?」と、ワクワクしながらお願いした部分が大きかったですね。

:『未来のミライ』の頃から、「石井さんが声をかけてくれたらどんな雑務でもやろう!」と思っていたのですが、まさかキャラクターデザインだとは……大変びっくりしました。
本作完成後、石井監督から「CMで描いたキャラが可愛かったんですよ」とお聞きして、そういう理由だったのかと。

石井:秦さんは「お世話になったので是非やらせてください!」という言い方をされていたのですが、「むしろお世話になったのはこちらの方なのに!」と思っていました(笑)。また別の形でご一緒できて、とても嬉しかったですね。

■ディテールにこだわったキャラクターデザイン


――キャラクターデザインにあたり、石井監督は秦さんにどういったオーダーを出されましたか?

石井:自分のイメージを簡単に書いてお渡ししました。自分の経験を反映させたものや、本編に織り込まれていない裏設定もけっこうありまして。

:裏設定、ありましたね。「男の子は野球部だったけど、今は引退して受験勉強中」とか。

『そばへ』場面カット場面写真

石井:ひと通り説明した後は秦さんにお任せしていました。そこから上げてもらった絵を見たら、まさにイメージ通りでしたね。
ストレートに可愛いし、なおかつ色っぽさもある。とても魅力的なキャラクターだな、というのが第一印象でした。

――秦さんは今回、初のキャラクターデザインですが、参考にされたデザインなどはありましたか?

:私がそんなにアニメを観ていないこともあって、いざキャラデザをお引き受けした段階では、どう描いていいかわからなかったんです。
なので『未来のミライ』で間近で作業を見ていた青山さんの絵を参考にさせてもらいました。

――デザインするうえで苦労した部分はありましたか?

:「擬人化」という概念をあまり考えたことがなかったので、傘の妖精はだいぶ苦労しました。
服装については、石井監督から「季節をあまり感じさせない服装」というオーダーがあったのと、雨のモチーフを表現できるように透明なポンチョを着せています。

『そばへ』場面カット場面写真

――ポンチョのデザインでとくに工夫したポイントは?

:シンプルなワンピースにしつつ、不思議な感じに出るように袖なしにしました。あとは傘の要素を取り入れることを意識しました。石井監督からは「傘のベルト部分を入れて欲しい」とオーダーがあって、尻尾で表現する案もあったのですが、よく見えない可能性もあるので、首のリボンにしました。

――デザイン画を拝見したのですが、かなり細かいところまで描き込まれていますよね。

『そばへ』設定資料設定資料

:短編ではあるのですが、普通のTVシリーズぐらい細かいところまで描きこんでいます。
あと、3DCG作品は初参加だったので、それが3DCGに合ったデザインなのか、試行錯誤しながらデザインしました。

石井:作画だったら見えない部分の設定はなくてもいいんですが、3Dアニメーションの場合、360度見えるように描くので、ディテールがあればあるだけありがたい。たとえば、靴の裏もそうですね。

:いろんな角度から見せなければならない3Dでは、たとえばツンツンした髪型は難しいんです。

――『あしたのジョー』の矢吹丈のような、二次元のウソで成立している髪型は難しいということですね。

石井:ああいったものは難しいですね。

――動きの面では、ポンチョのヒラヒラなど2Dだと難しい表現にも挑戦されていました。

石井:ポンチョの動き自体はそこまで難しくなかったのですが……今回、その素材が透明なことが大変でした。

――それはなぜですか?

石井:その奥が透けて見えてしまうからです。作画同様、簡略化できる部分を簡略化せずに見えるようにしておくのは、3DCGでも手間なんです。むしろ、詳細に作らないといけないので、2D以上に大変だったかもしれません。

たとえば、ロボットものにおける盾みたいなもの、あれがあると隠れている部分の作画は省略できるのに、透明だと意味がない(笑)。

――とても納得しました(笑)。

石井:ただ、ポンチョに関しては無理を言って良かったかもしれません。クロスシミュレーションで動かしたから、動きにも特徴が出て印象に残るんですよね。



→次のページ:アニメ業界に入った経緯、クリエイターとして追求したいことは?
  1. 1
  2. 2
  3. 続きを読む

《山田幸彦》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]