■雨への徹底したこだわり
――今回の制作スタジオは3DCGアニメを制作されているオレンジさんですが、石井監督へオファーがかかったときのご心境は?
石井
3DCGのアニメはいろんなスタジオが作ってはいるけれど、まだ手探りな部分もあります。そういう段階の内に携われるのはとても面白そうだと思いました。
そんな中で、「これ、良いじゃん!」という表現を見つけられれば、大きな収穫になるなと。
オレンジ作品の『宝石の国』などは業界でも評判でしたから、「それを作っているスタジオはどんなものなのだろう?」と興味津々で現場に入りました。
――オレンジの作品は非常にセルに近い質感のルックが特徴的なので、これまでのキャリアでセルアニメがメインだった石井監督としても違和感なくCGの世界に入れたのでしょうか?
石井
おっしゃる通り、自分もセルに近い感じでフィニッシュするというイメージで現場に入ったのですが……アプローチは全く違いました(笑)。
そんな中で、結局セルにもCGにもそれぞれ強みと弱点があることを知っていき、「無理にセルに寄せる必要もないんだな」と気づくことができましたね。
制作中は試行錯誤の連続だったのですが、もしまたCG作品の制作に携わる機会があれば、今回の経験を活かしていきたいです。
――本作のモチーフである「雨」を3DCGで描くうえでこだわられたポイントはなんですか?
石井
とにかく綺麗に見せようというのが大前提にありました。CGスタッフもかなりこだわったところです。
水の表現で使用される流体シミュレーションは、そのままだと現実の物理法則に則った仕上がりになるのですが、もうちょっと印象的に見せられるように、水たまりから跳ねる水などを派手な方向に調整してもらいました。
とはいえ、雨周りの全てを派手にしたわけではなく、最初の傘が雨に打たれているカットなどは、雨の嫌な感じを出せないかなと思って、細かく雨が落ちる表現にしました。
空き缶に水滴が当たる音もしっかり入れてありますので、耳を澄まして観ていただけるとより楽しめるかなと思います。
あとは、スローモーションになるカットでは3Dならではの奥行きを加味したり、リアルな表現と誇張したアニメ的な表現の良いとこ取りをして、雨にいろんな意味を含ませることができたかなと。
――クレジットにはモーションキャプチャー関連の表記がありましたが、モーションキャプチャーの演出に携われたのは初めてでしょうか?
石井
初めてでしたね。演者さんに「演技、こんな感じでお願いします!」とお伝えして動いてもらったのですが、タイムシートで時間を測ってチェッカーで動きを見るというセルアニメの工程とは全く違いました。とても難しかったですね。
最初のうちはモーションキャプチャー後、どう映像に落とし込まれていくのかもピンと来ていなかったので、どんな動きを撮っておけばいいのかを選別するのも大変でした。
タダではないので、演者の方に軽い気持ちで「これも撮っておいてください、あれも撮っておいてください!」というわけにはいきませんからね。
傘の妖精さんが階段を駆け上がるカットなど、現実離れした動きのほうが合うと思ってアニメ的な表現に調整したところもあるんですが、ラストに登場する紗友の動きなどは、モーションキャプチャーを活かして彼女の元気さを表現できたと思います。
→次のページ:石井監督が次に見てみたいのは、意地悪なCV福原遥キャラ?