美少女、SF、カンフー…アニメファンの“好き”を3DCGで描く「斗え!スペースアテンダントアオイ」の挑戦【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

美少女、SF、カンフー…アニメファンの“好き”を3DCGで描く「斗え!スペースアテンダントアオイ」の挑戦【インタビュー】

文化庁平成30年度 若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2019」より、『斗え!スペースアテンダントアオイ』を手がけたケイカにスタジオインタビュー。由水桂監督と山中友実子プロデューサーに若手育成と作品の見どころについて話をうかがった。

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『斗え!スペースアテンダントアオイ』(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019
『斗え!スペースアテンダントアオイ』(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019 全 14 枚 拡大写真
文化庁の支援により行われる若手アニメーター等人材育成事業は、2010年度の「プロジェクトA」に始まり、翌2011年度から2014年度にかけて「アニメミライ」の名称で継続してきた。
2015年度より「あにめたまご」と名称を変更しつつ、毎年オリジナルアニメ作品の制作を通じて国内の若手アニメーターの育成を行っている。

2019年も4つの作品制作プロジェクトが選出された。そのうちの1つが3DCGスタジオ・ケイカとグリオグルーヴによる『斗え!スペースアテンダントアオイ』だ。

本作の制作と若手育成の中核を担ったのが、ケイカの代表取締役社長であり3DCGアーティストの由水桂監督だ。
ゲーム『リッジレーサー』シリーズのオープニングムービーやイメージキャラクター・永瀬麗子を生み出したクリエイターだが、近年はTVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』に原画として参加するなど作画も手がけている。

今回は由水監督と山中友実子プロデューサーにインタビューを行い、本作の魅力と制作上の新規性、本プロジェクトで若手アニメーター育成をどのように行ったのか、お話を伺った。
[取材・構成/いしじまえいわ]

【「あにめたまご2019」スタジオインタビュー】
>第1回(Flying Ship Studio):「あにめたまご」で3DCGクリエイターが2Dアニメを学ぶ意義とは? 「キャプテン・バル」監督&Pに聞く【インタビュー】
>第2回(WIT STUDIO):「メカトロウィーゴ」が“あにめたまご”でアニメ化! その舞台裏と見どころは? 益山監督×岡田Pが明かす【インタビュー】

>あにめたまご2019 アニメ!アニメ!特集ページ

『斗え!スペースアテンダントアオイ』


『斗え!スペースアテンダントアオイ』(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019

【ストーリー】
宇宙旅行が可能となった未来、ケタケア航空では己の肉体を武器にするハイジャック対策のため、対格闘戦用保安要員としてのスペースアテンダントを採用。そのひとり武蔵野葵は、武術以外はまるで能無しの、自称“ドジでノロマでちょっと可愛い亀ちゃん”!? そしてようやくローカル・ラインからインターステラー(恒星間線)へ配属された矢先、彼女は「ボクの歌は人を不幸にするんだ」と漏らす謎の少年客ライカと知り合うのだが……。
[取材・構成=いしじまえいわ]

■対象年齢=自分!で生まれた『アオイ』


由水桂監督、山中友実子プロデューサー由水桂監督と山中友実子プロデューサー

――由水監督は3DCGやゲーム分野で特に実績のある方という印象なのですが、今回どうしてオリジナルアニメ作品を手がけることにされたのでしょうか?

由水監督
元々僕はゲーム会社でオープニングムービーなどのストーリー性のある部分の演出を担当していたんですが、根源的な欲求としては“映像を作りたい”というのがあったんですね。
それで独立してケイカを立ち上げることになりました。

最初は主にゲームCGを手がけていたのですが、神山(健治)監督の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』オープニングの演出やミニアニメ『ズモモとヌペペ』の監督など、徐々にアニメのお仕事が増えてくるようになりました。
個人的にもアニメは好きなので、今回こういう形でチャレンジしてみよう、という運びになりました。

由水桂監督
――アニメに対する興味関心は深い方でしたか?

由水監督
自分では「普通に好き」くらいだと思っていたのですが、後々人に聞いてみると相対的にはけっこう好き、みたいですね(笑)。

山中P
いえいえ、けっこうなアニメオタクだと思いますよ。

――確かに本棚にも『トップをねらえ!』の設定資料やアニメーターの磯光雄さんの画集などが並んでいて、アニメ好きであることが伺えます。

山中P
その本も仕事用というよりは趣味の本ですね。

由水監督
昔から持ってる本を仕事場に置いてあるだけですね(笑)。

由水桂監督、山中友実子プロデューサー
――本作のビジュアルにも作り手の好みが大きく反映されているように感じました。キャッチーで魅力的なキャラクターたちですが、本作の対象年齢はやはり深夜アニメを見るような若者向けということでしょうか?

由水監督
正直に言いますと、対象年齢というのは今回設定しませんでした。
「あにめたまご」は若手育成が目的であって、ビジネス的にターゲットを決めてそこに向けて作品を作るという必要がありません。
ですから、今回は自分たちが楽しんで作れるもの作るということをメインに考えました。

普段から“ゼミ”と称して週1回1時間ほど企画や映像の勉強会を開いているのですが、通常業務の中だとどうしても仕事優先になってしまうんです。
だから作品制作を通じて若手の勉強ができる「あにめたまご」のコンセプトは非常に魅力的でしたし、数年前から3DCGスタジオも参加できるようになったということでエントリーさせてもらいました。

――本作の企画についてはどのような形で出来上がったのですか?

由水監督
以前、東京国際アニメフェア(AnimeJapanの前身)に毎年ブースを出させてもらっていて、そこに作品企画もいくつか持ち込んでいました。
今回オリジナル作品を作るにあたってそれらを掘り起こして協力会社のグリオグルーヴの
プロデューサーさん等に見ていただいた結果、「これだ!」となったのが今回の作品です。他にもっと真面目な企画もあったんですが、これが一番冗談みたいな企画でしたね(笑)。


上記2枚、東京国際アニメフェア当時のキャラクター案

――宇宙で、カンフーで、異星人で、フライトアテンダントさんで……と、みんなが好きなものの集合体みたいな作品ですよね。

由水監督
ジャッキー・チェンも『ガンダム』も好きでしたから、僕が好きなもの全部入りの「これが僕にとってのアニメだ!」という作品かもしれませんね。

『斗え!スペースアテンダントアオイ』(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019

――それは若手のみなさんにとっても、でしょうか?

由水監督
今回企画を練り直すにあたって、宇宙という舞台設定やフライトアテンダント3人が活躍するというストーリーはそのままですが、細かい設定や演出面は、出来る限り若手メンバーのアイデアを採り入れました。

山中P
例えば宇宙人たちのキャラクターデザインは、若手のアイデアをベースに、作画監督がブラッシュアップさせてつくりあげたものです。今までになかった新しい作り方でした。

ケイカスタジオ風景。作業中の若手アニメーターの方々。

由水監督
今回異星人のキャラクターが多数登場しますが、それらのベースデザインは全部若手のオリジナルですね。また色彩設計も若手に全部やってもらいました。
「あにめたまご」はアニメーター育成が主眼ではあるのですが、キャラクターデザインや設定などそれ以外のことも経験してほしかったので、企画の段階から巻き込んで参加してもらいました。

そもそも我々はいわゆるアニメ制作のワークフローが分かってなかった、ということもあります(笑)。
手探りでやらざるを得なかったわけですが、ノウハウがなかったからこそ自由にできたとも言えるかもしれません。

『斗え!スペースアテンダントアオイ』(C)ケイカ/文化庁 あにめたまご2019



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《いしじまえいわ》

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