■3DCGクリエイターが2Dアニメーターと学ぶ意義
――今回の制作プログラムで指導を受ける側になったのはどんな方々ですか?
沼口監督
弊社スタッフが5名、知人の紹介で参加してくれたフリーの方が1名の総勢6名です。
フリーの方は3DCG経験者ではなくアニメルックの作画が得意という社内にはあまりいないタイプの方だったので、若手同士相互に勉強になったようですね。
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――若手の方には今回どんな作業をしてもらったんですか?
沼口監督
通常の業務ですとアニメーターとモデラー、主に2つのパートに分かれて作業をしてもらうのですが、今回は全員に担当シーンを振り分け、そのシーンの全工程をひとりで担当してもらいました。
大まかに言うと、キャラクターを3DCGでモデリングし、アニメーションを付け、コンポ(※3)までやってもらうという一連の流れ全てです。
※3:コンポジット。各素材データを結合させたりエフェクトを付与したりする、2Dアニメでは撮影に近い工程。
――通常はアニメーターならアニメーションだけ、と完全に専門化しているんですか?
沼口監督
いいえ、まずはジェネラリストとして、全工程を一人前程度にはこなせるようになってもらいます。
そのうえで、アニメーター・モデラー等、スペシャリストとして、得意な分野をさらに先鋭化して伸ばしていく。という感じです。
――少し突っ込んだ質問になりますが、普段のお仕事で経験のある作業をするのでは、あまり「あにめたまご」ならではの実習経験にならないと思うのですが、その点はいかがでしょうか?
沼口監督
「あにめたまご」では日本動画協会さんが用意してくださった講義を受講することになるのですが、これがものすごくいい勉強になりました。
そこそこ3DCGに慣れているスタッフでも手で絵を描く経験は乏しかったりするので、絵が上手い他のスタジオの方々と一緒に絵を描くのは相当刺激になったようです。
最終的に画面に映る画作りという意味では、お客さんからすれば3DCGでも手描きでも同じですからね。
中島P
日本アニメーションさんやウィットスタジオさんの方はやっぱりすごい絵を出してくるんですよ。
そんな中で「手で鉛筆を握って絵を描く」という本当の基礎となる講義から学べたことは、かなり大きいんじゃないかと思います。
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――講義では作画の実技もあるのですか?
沼口監督
はい。ほぼすべての講義が実技ありの実践的なものばかりでした。
社内の勉強会だけではなかなかここまでのことは出来ませんので、こういった経験ができたのは純粋に「あにめたまご」のおかげです。
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「あにめたまご2019」実習の模様:公式サイトより
沼口監督
あと、1本の作品を作るのにこれだけ長く時間をとってくださることも他ではないので、時間をかけてひとつの作品を作れたこともよかったですね。
実務だととにかく締切に間に合わせて完成させないと、という発想になってしまうのですが、今回は演技や演出の意図を考えてしっかり取り組んでもらうことが出来ました。
海外のスタジオだと、デイリーチェックといって毎日アニメーターの席を回って、アニメーション監督がチェックする会社もあるという話を聞いたので、今回それを取り入れました。
教育担当でCGディレクターの薄井とも相談して、「どうすればいきいきしたキャラクターに見えるか」という観点からチェックとフィードバックを日々してもらいました。
あとはCGソフトに慣れていないスタッフにCGソフトの基礎から改めて教えたり、ディズニーのアニメーションの12原則(※4)をおさらいしたり、などですね。
※4:『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 ― The Illusion of Life ―』(徳間書店、2002、p.51)
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中島P
こういった密なコミュニケーションも実務の中ではなかなか出来ないので、これも「あにめたまご」の恩恵だと思います。
3DCGの小さなスタジオにもそういった機会をくれて、「あにめたまご」には感謝しています。
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