物語の舞台は、「世界大炎上」と呼ばれる、世界の半分が消失する未曾有の事態が起きた世界。その大火災の引き金となったのは、突然変異で誕生した炎を操る人種「バーニッシュ」だった。
一部の攻撃的なバーニッシュの面々は、「マッドバーニッシュ」を名乗り、放火と犯罪を繰り返す集団と化す。
黒いスーツに身を包んだ、マッドバーニッシュたちが起こす火災を鎮火すべく結成されたのが、対バーニッシュ用消防隊「バーニングレスキュー」だ。
ガロ・ティモスは、念願叶いバーニングレスキューの新人隊員となった、燃える“火消し魂”を宿した熱き男! マッドバーニッシュが引き起こす悲劇の炎を消すため、消火武装装甲「マトイ」とともに、現場に駆けつける!!
『髑髏城の七人』シリーズや『五右衛門ロック』、『蒼の乱』など、劇団☆新感線で、数々のアクション活劇を生み出してきた中島らしい脚本。
その脚本に乗りに乗り、コテコテの映像に仕上げてきた今石が、“上乗せ上等”という従来のスタイルを捨て、新たに挑んだ映像表現とは?
企画立ち上げから、二転三転したストーリーづくりなどの制作秘話、そしてファンの間で話題となった「ガロとカミナがそっくりな理由」を、今石と中島が語る。
[取材・構成=中村美奈子]
プロメア
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2019年5月全国ロードショー
■『キルラキル』終了後、すぐに意気投合した劇場アニメの制作
――TRIGGERが劇場アニメの制作プロジェクトを発表したのは、2017年の夏にLAで行われたアニメエキスポでした。そもそも、劇場アニメの企画が立ち上がったのは、いつ頃でしたか?
中島かずき(以下、中島)
2013年に『キルラキル』が終わったところで、「次はできれば劇場で」と2人で話したところからです。最初は、『レ・ミゼラブル』のゾンビ版『レ・ゾンビラブル』をやろうと一所懸命プレゼンしましたが、「キョトン……」とされて。
今石洋之(以下、今石)
僕もミュージカルがやりたいって言っていたら誰にも賛同されず……。でも、そこからわりと早い段階で、中島さんから「炎」というテーマが出てきました。
中島
そこらへんで「世界大炎上」のイメージとキーワードが浮かんだので、半年から1年後には、企画をまとめて今石さんに持って行ったんですが、そこからが長かった。
今石さんが、僕が書いた最初の本を破るのは毎回恒例なんだけど、『天元突破グレンラガン』(以下『グレンラガン』)、『キルラキル』と2回続けて破られたから、今度は僕が最初に破ってやろうと思って。
でもダメだったね(笑)。
今石
1回、固まりかけたんですけどね。
――具体的にどんな部分が、再考になったのでしょうか。
中島
『プロメア』は、人類とバーニッシュが対立する構図が軸になっているけれど、それをストーリーでどう展開し、見せていくのかと考えたときに、主人公をどちらの立場にするか、で二転三転しましたね。
僕が最初出したアイデアは、主人公は“火消し”でもバーニッシュでもない、ごく普通の少年が成長していく話だったんです。
でも、ある程度時間をかけて描けるTVシリーズと違って、2時間くらいの劇場作品と考えると、設定をシンプルにする必要がある。そこで、まずは“火消し”を主人公にした脚本を書いて、自ら破って。
次に出たのが、バーニッシュを主人公とした案でしたが、今石さんが途中で「やっぱりバーニッシュが主人公じゃダメだ」とまた破って。
ぐるっと1周回って、やっぱり“火消し”を主人公にすることになりました。
――その理由は?
中島
お客さん目線になったときに、一番感情移入しやすいキャラクターを主人公に据えるべきだという、考えですね。
この作品は、まっとうな困難にぶち当たり、その困難を打破する主人公の話にしたかったんです。
バーニッシュだと、どうしても抑圧されて半分悪いほうになってしまう。
そうではなく、ストレートで、冒険活劇的な、まっとうな主人公でやったほうがいいよねと、落ち着きました。
今石
アイデア段階から変わらなかったのは、特殊な炎を操るバーニッシュと、その炎を消すのが使命の“火消し”という、2つの軸です。
両者の対立をより明確に見せるために設定をシンプルにしていった結果、主人公の年齢を青年まで引き上げ、職業として火消しを行う、バーニングレスキューという設定に繋がっていきました。
――先日公開されたばかりのPV第2弾の映像を観ると、レスキュー隊ということで、災害救助ロボのようなものが登場していましたが、今作はロボットものなのでしょうか。
今石
僕は映画をやるとなったときに、とにかくストレートなアクション映画をやりたいと思ったんです。ガロが使う“マトイ”は、ロボットというよりパワードスーツという設定です。
基本的にはアクション映画の中のひとつの要素としてメカが出てくる、という感覚です。僕がアクションの見せ方としてこだわったのが、そこですね。
中島
やっぱり、炎を操る突然変異に人類が対抗するには、武装装甲が必要だろうということでできた設定です。
――その“マトイ”を纏うガロが、『グレンラガン』のカミナに似ていると、ネット上で話題になっているのですが、なにか含まれた意味があるのでしょうか?
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【関連記事】今石洋之×中島かずき新作アニメ「プロメア」、キャラが「グレンラガン」カミナに似ていると話題
今石
他人のそら似です! (笑)。
まあ今回、僕がわりと直球でものを作ろうという意識でやっている影響ですね。
『グレンラガン』もそうだったんですが、自分で企画を立てて主人公を描くと、だいたいあの髪型になるんです。
それをキャラクターデザイナーが、「それはちょっと……」と下を向かせたり、片側に流したりして、ちょうどいいあんばいに仕上がります。
中島
今回は火事場に行くので、現場には常に上向きの風が吹くんですよ。
上昇気流が発生すると、当然、髪の毛が上がる。炎に近い襟足は熱くなるから、刈り込むでしょう。
そう考えて描くと、”火消し“はこういう髪型になるんです。だからカミナとは違う。「職業髪」なんです。
僕はそうやって、キャラクター会議の時に熱弁しました。
今石
「職業髪」ってすごいな。今、初めて聴きましたよ。そんな設定だったんだ(笑)。
中島
……嘘です、今思いつきました(笑)。
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