■こだわったのは、2時間でスッキリ気持ち良くなる爽快感
――今のお話のように、お2人は毎回、いろいろ意見を交わしながら企画を固めて行くそうですが、今回の企画決めの中でもっとも難航したことはなんでしたか?
中島
脚本ですね。2時間という限られた枠の中で何を書くのか、というところでずいぶん話し合いました。
今石
やっぱり映画は一発勝負。TVシリーズだと、話数を積み上げつつ、お互いの理解を深めながら作って行くことができるんですが、映画はここで一発決めておかないと後がないので。
そういう意味で、2人で全部きちんと話しておこうと。
中島
最初にも出ましたが、今回やろうと思ったことが「W主人公の男2人がガチバトルをし合うこと」だったので、それをどういう形で描くのがベストかをずっと探っていた感じです。
今石
僕は演出的な立場から、2時間の中でどういう風に、楽しくなる部分を置いていくか、一番気持ち良いポイントをどこに持ってくるかなど、テンポ感やエモーショナルな部分のボリュームとバランスに気をつけました。
それでいて、ストーリーを成立させていくという点で、かなり練りました。
――お2人の作品のおもしろさは、まさにそのエモーショナルコントロールとラストのカタルシスの大きさにあると思います。だからこそ、2時間という限られた時間枠の中で、どうお客さんに気持ち良くなってもらうかということで、脚本の練り上げに苦心したということですね。
それでいくと、中島さんは「劇団☆新感線」で舞台脚本を手がけているぶん、書きやすかったのでしょうか?
中島
最初はそう思っていたんですが、大切なのは今石さんとどうやるか。
今石さんと組んだTVシリーズでは、とにかくアイデアをどんどん膨らませていって、どれだけ乗せるかという方向でしたが、今回はその逆で、膨らませたアイデアをどれだけ削るかだったんです。
だから、合い言葉は「我慢しなきゃね」でした。
今石
だいぶ我慢しましたよね。
中島
僕が我慢して我慢して、アイデアを研ぎ澄まして作ったものの上に、さらに今石さんがどれだけ「乗っけているか」が、『プロメア』の見どころです。
「それで出たのがこれかよ」「手癖じゃないのか」と言われそうな感じもありますが、研ぎ澄まして研ぎ澄ましたら手癖になりました、ということで(笑)。
でも、どうしてもちょっとした所で「手癖」が出ちゃうんですよ。そこは自分で「あーあ、書いちゃった」と思いながらやっていました。
今石
いやもう、最高に研ぎ澄まされた「手癖」ですから(笑)。
■直球のアニメスタイルとカートゥーンを融合させた、新スタイルの試行
――今作は「炎」がテーマということで、「炎」の表現としてこだわったことはなんでしょうか? メインビジュアルやPVを見ると、普段目にしている赤や青の炎ではなく、蛍光イエローや紫など、変わった色味で表現していますね。
今石
今作ではCGを多用しているので、CGと作画の両方で成立するエフェクト表現を考えたときに、「シルエットだけでも勝負できるぐらい、シンプルなもの」という考えに行き着いたんです。脚本と同じですが、足し算ではなく引き算で考えるという方向性ですね。
描きこんだり過剰にしたりするのは楽ですが、やはり劇場アニメへの挑戦ということで、新しい表現をしたいと思ったんです。
『グレンラガン』の後に作った『パンティ&ストッキング withガーターベルト』では、カートゥーンっぽいタッチを活かした画づくりをしたので、『プロメア』では、カートゥーンのシンプルで削ぎ落とされたスタイルに、『グレンラガン』や『キルラキル』の直球アニメのスタイルを融合させて、新しいスタイルを成立させてやろうという狙いもあります。
シンプルな情報で「炎」を表現するには、現実に近づける写実方向に比べて、知恵を使わなくてはいけないし大変なんですが、すごくやりがいがありました。
中島
PVを見ると一目瞭然ですが、スタイリッシュな絵面になっていますよね。
■引いても引いてもあふれ出る今石×中島カラーを劇場で楽しんで欲しい
――バーニッシュのデザインも、アメコミヒーロー的なカッコ良さがあります。今回の企画を最初に発表したのがLAということで、制作するうえで「世界の目」を意識したことはありましたか?
中島
主人公の名前をカタカナにすることですね! “燃尽”(モヤシツクス)とかじゃなく(笑)。
今石
『キルラキル』のキャラクター名の翻訳が、すごく大変だったことを踏まえました。漢字で書いたからこそ意味が出るというのを、日本語を母国語にしていない方に理解して頂くのは大変だろうという。
――キャラクター名もシンプルに。『プロメア』の制作キーワードは、まさしく「引き算」ですね。
中島
我々に「引き算」という言葉があったのかと!
でもやっぱり、盛りたがり精神が出てしまうんです。特に後半に漏れ出ちゃって(笑)。
そのあふれ出たセリフをまた、クレイ役の堺雅人くんが、真面目に大見得切ってやってくれているんですが、すごく良い感じなんですよ!
――今回、キャスト陣も注目ですよね。堺雅人さんをはじめ、ガロ役の松山ケンイチさん、リオ役の早乙女太一さんは、いずれも劇団☆新感線の舞台出演で馴染みがある面々です。PVでは、ガロが歌舞伎の見栄切りのように口上を述べてポーズをとるシーンもありますが、舞台俳優さんの起用は劇場を意識してのことでしたか?
今石
それよりも、芝居ができて、中島さんのセリフをカッコ良く読める人がいいなと思ってのことです。
中島
僕は秘かに、やりたいなと思っていました。役者さんたちとは親交がありますし、僕のリズムもわかってくれているという安心感もあって。
脚本の上がりが早かったので、さすがに当て書きとまではいきませんでしたが、クレイを書くときに、堺雅人くんのイメージが湧いていたんです。
だから、クレイの声は堺くんがいいなと思っていたので、松山くん早乙女くん共々、第一希望が通ってうれしかったですね。
実は松山くんは、今石アニメが大好きなんですよ。
初めて会ったときに「『グレンガラン』見ました!」って、うれしそうに話してくれて。
太一くんは、普段ボソボソとしゃべる感じの子なんですが、実はすごく声が良い。だから、リオ役はハマると思っていましたが、予想以上でした。
今石
本当に。第一声で「リオがしゃべっている!」と思いましたね。
中島
ひと言しゃべっただけで、宿業を背負った人の声が出ていました。だからこの3人は、僕たちの作品を、僕達がこの人に演って欲しいと思ったメンバーです。
――そんな『プロメア』の特徴をひと言で表すと?
今石
若林(広海)プロデューサーが言っていたのは、「スーパーリットメガアクションレスキューヒューマンドラマ!」でしたっけ? メチャクチャ熱い人間ドラマという意味らしいです(笑)。
中島
長いよ! 「ヒューマンドラマ」が言いたいとしたら、ずばり「人間大炎上ドラマ」、縮めて「にんじょう」ですね。
今石
引き算しすぎですよ(笑)。
――最後に、久々のお2人のタッグ、しかも劇場アニメということで、期待しているファンにメッセージをお願いします。
今石
ただただ、観て気持ち良くなって欲しいです。ベタですが、全部が見どころです。
「引き算」で削ぎ落としたからこそのフル活劇になっていますし、そういう意味では見応えも十分だと自負しています。
うんざりするぐらいこだわっていますので、そこは信用して、ぜひ劇場に観に来てください。
中島
『プロメア』はある種、我々の総決算でありながら、次のスタートでもあると思っています。
初めての人も楽しめるし、過去の作品のファンの人なら「待ってました!」という部分と新しい部分両方が楽しめますので、ぜひ老若男女、ペットさんも連れてきていただければ。映画館にペットは無理ですけど。
今石
そうなんです、今回は完全に全年齢向けです。
中島
『キルラキル』みたいに「ハレンチ~!!」ということはないです。大丈夫です。
そして、引いても引いてもあふれ出る「過剰さ」というものを、劇場で堪能してください。
映画『プロメア』
【キャスト】
松山ケンイチ 早乙女太一/堺雅人
佐倉綾音 吉野裕行 稲田徹 新谷真弓 小山力也 小清水亜美 楠大典 檜山修之 小西克幸
【スタッフ】
原作:TRIGGER・中島かずき 監督:今石洋之 脚本:中島かずき キャラクターデザイン:コヤマシゲト 美術監督:久保友孝 色彩設計:垣田由紀子 3DCG制作:サンジゲン 3Dディレクター:石川真平
撮影監督:池田新助 編集:植松淳一 音楽:澤野弘之 音響監督:えびなやすのり タイトルロゴデザイン:市古斉史
アニメーション制作:TRIGGER 製作:XFLAG 配給:東宝映像事業部
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
【キャスト】
松山ケンイチ 早乙女太一/堺雅人
佐倉綾音 吉野裕行 稲田徹 新谷真弓 小山力也 小清水亜美 楠大典 檜山修之 小西克幸
【スタッフ】
原作:TRIGGER・中島かずき 監督:今石洋之 脚本:中島かずき キャラクターデザイン:コヤマシゲト 美術監督:久保友孝 色彩設計:垣田由紀子 3DCG制作:サンジゲン 3Dディレクター:石川真平
撮影監督:池田新助 編集:植松淳一 音楽:澤野弘之 音響監督:えびなやすのり タイトルロゴデザイン:市古斉史
アニメーション制作:TRIGGER 製作:XFLAG 配給:東宝映像事業部
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG