「進撃」「カバネリ」WIT STUDIO取締役が明かす、ハイクオリティなアニメをつくり続ける秘訣【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「進撃」「カバネリ」WIT STUDIO取締役が明かす、ハイクオリティなアニメをつくり続ける秘訣【インタビュー】

アニメーション表現で、受け手の想像を超える映像を生み出し、未体験の感動を提供するというヴィジョンを掲げるWIT STUDIO。その共同創業者/取締役である中武哲也氏に話を伺った。

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■素朴でパワーのある作品が自分たちの強み


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――どういうスタジオにしようという話があったのでしょうか

中武
自分たちがどういう作品が向いているのかみたいな話を和田としていて。こつこつと調べ物をして、こつこつと描き上げていくような作品が向いていると。
当時はそれを素朴でパワー系な作品作りと呼んでいました。

『戦国BASARA』もそうですが。心と心のぶつかり合いで、気合が上回ったほうが勝つという特殊な勝負のシステムでして(笑)。
しっかりと人間の動きを学習したりとか、いわゆるスポーツからイメージを膨らませて作画にしたりとか、そういう調べ物ができる作品というのが向いていたんですね。

もともと浅野恭司は『攻殻機動隊』をやっていたし、和田丈嗣は『PSYCHO-PASS』もプロデュースしていますが、基本は地味でも着実に進めていく作品づくりをやりたいなって。
そんな中で『進撃の巨人』ですよね。これはWIT STUDIOにとても向いているなと感じる原作でした。

――そのときから『進撃の巨人』は荒木哲郎監督で、このチームでというのは固まっていた?

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中武
はい。『ギルティクラウン』の主力チームと一緒にやりたいと思っていました。
浅野恭司と門脇聡さん。後に『甲鉄城のカバネリ』のキャラクターデザインをやっていただく江原康之さんだったり、アクションアニメーターの今井有文さんだったりですね。

ただ最初のシーズンの制作は大変でした。
いわゆる動画・仕上げというのが2Dアニメーションだと非常に重要なポジションになるんですけど、当初はそこのインフラがなかったんですよ。

故に最終画面を仕上げるときに修正が乗り切らないとか、そういうことが多くあって、そこが大変苦しかったですね。そこはもうスタッフを本当に苦しめてしまいました。
あの時のことを思い出すと今でもぞっとします。

最近はWIT STUDIOの、いわゆる動画セクションがようやく安定してきて、リテイク対応の作業がうまく回るようになり始めた時期なんですよ。
だから、まだまだですけど、前よりもみんなの理想にしたいフィルムにちょっと近づいてきてるんじゃないかなと思いますね。

■魂を揺さぶる作品を


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――制作環境など力を入れている部分を教えて頂けますか?

中武
例えば、ワンフロア。ワンフロアで制作チームとクリエイターチームが一緒に仕事できることで、コミュニケーション上のズレ
が少なくなるんです。感情のもつれとかもそれによって解消されたり。「なんだよ、あいつ、頑張ってたのか」「じゃあ、しょうがねえか」みたいな。

クリエイターは結構年上が多くて、制作進行の人たちは結構若い人たちが多くて。
制作進行って大変なんですよね。手数も多いし、知らないことも多いし、ひと回り上の人と仕事しないといけないし、何十人もの大人と仕事をしないといけなくて。
だから頑張っていることが理解されやすい環境が大事になってきますね。

作画人材の育成に関しては浅野恭司たちが力を入れています。原画採用と、動画・仕上げ採用とで役職を分けて募集をしています。
原画採用に関しては、最初は研修期間がありますが、即、原画マンとしての職務に就くということになり新しいトライです。

原画と動画・仕上げの特性というのがたぶん別々であるということを前々から作画チームは思っていて、これを実験的にやってみるということですね。

これによってフィルムの最後、いわゆるリテイク対応、そこの部分で動画・仕上げチームが大活躍するんですよ。
これがなかったら安定したフィルムに絶対ならなくて、もう危険(涙)。みんなのおかげで画面が成り立っていますね。

安定した品質の作品を出したいですし、その前提としては、魂を揺さぶる作品を開発すべきだという考え方でやっていますね。

■原点はベルセルク


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――創作の現場に進んだ中武さんの原体験について聞かせてください

中武
アニメやマンガは子供の頃からよく見ていましたね。
そういえば三浦建太郎先生の『ベルセルク』。読み切りのマンガがあってそれを熱中して読んでいましたね。お小遣いをもらえるようになってから単行本も買いました。
のちに『剣風伝奇ベルセルク』という名前でアニメ放映されますけど。

大人になって『ベルセルク』のスタッフリストを見ると、本当にすごいスタッフなんですよ。
馬越嘉彦さんがキャラクターデザインをやっていて、松原徳弘さんと千羽由利子さんが総作監をやっていて、村田和也さんが演出。1話は鶴巻和哉さんが演出をやっているみたいな。
ローテーションが超すごいんですよ。あれも『進撃の巨人』のように大変だっただろうと思うんですけど、フィルムとしてはやっぱり素晴らしくて、やっぱり自分の根っこに残ってますね。骨が太い作品は耐久性があるっていう。

僕は高校を卒業して、新聞を配りながら専門学校に入ります。
多くのクリエイターさんの話を聞きつつ、自分のやりたい職種を模索するタイミングで、映像制作が面白かったんですね。
自分でネタを撮って自分で編集して音楽を入れたりとか。しんどいけれど楽しいですよね。

そこから映像制作がいいかなって思いました。
アニメプロダクションを選択したきっかけは、先輩からの「お前は向いているんじゃないか」という言葉でしたね。たぶん僕の心が傷つかなさそうだと思ったんじゃないかなと(笑)。

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――言い換えるとタフであると(笑)。

中武
そう。タフで前向きですね。
そこから Production I.Gに入って、最初は『サーヴィランス』というゲームのタイトルで入って。
そこからすごいアニメーターの原画を連発で拝んでしまったんです。江面久さんというビジュアルエフェクツという役職で、押井守監督の作品をよく担当している方なんですけど。

ラッシュチェックで江面さんが撮影した銃を撃ち放つカットがあまりにも凄すぎて、「絵ってこんなにすごいの?」って。まさに絵が動いてると。あれはインパクトがありましたよ。
最初にいいものを見せてもらって、どんどんアニメ制作への欲求が高まっていくきっかけになりましたね。

そして松竹徳幸さん。本当に繊細な線で画面をかっちり決め込む能力があって、松竹さんじゃないと出せない画面というのがあります。
さらに岡村天斎さん、西村博之さん。非常に卓越した日本を代表する演出家と、若い頃からお仕事させてもらったのは大きな財産ですね。


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