「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.11 オレンジ
世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。
全インタビューはこちらからご覧ください。
オレンジ代表作:宝石の国、モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ




「視聴者の視点に立った、ハイクオリティなCG制作」をモットーとするCGアニメーション制作スタジオ、オレンジ。
設立者の井野元英二氏は、フリーアニメーションディレクター時代からCG制作を手がけ、日本のCGアニメーションの草分け的存在だ。
その武器は、『創聖のアクエリオン』や『.hack//Quantum』など、多くの作品でCG監督を務めた経験から培われた、「セルなじみの良いCG」のクオリティの高さにある。
しかし、オレンジが目指す映像表現は、「なじみの良さ」で終わらないという。
その志を体現した作品『宝石の国』は、国内外で高い評価を受け、名実ともにオレンジの代表作となった。
『宝石の国』を越え、さらに進化を続けるオレンジの過去と未来について、代表の井野元英二氏、和氣澄賢プロデューサーに話を伺った。
[取材・構成=中村美奈子]
■CGでしかできない表現へのこだわり

――井野元さんが、CGアニメーション制作会社オレンジを設立したのは、2004年5月ですが、設立のきっかけはなんでしたか?
井野元英二氏(以下、井野元)
それまで私は、10年ほどフリーランスで3DCGを手がけていました。TVアニメシリーズの仕事は、『ゾイド-ZOIDS-』(1999~2000年)から関わり始め、『ジーンシャフト』(2001年)で1作品のCGをほぼひとりで制作するという、限界を超えた物量をこなした時に、個人の限界を悟ったんです。
そこで、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002~2004年)の後、『創聖のアクエリオン』(2005年)の制作にあたり、少人数でもいいから組織としてやろうと思い、会社を設立しました。
ちょうどその時代のアニメは「CG=ロボットもの」という風潮があり、戦闘シーンも多くて、制作にかなりの労力を費やしていました。
その労力をなんとか減らしていかなければ、将来的にアニメ制作でやっていくのが厳しくなるだろうという予感があったんです。
その一方で、今後はメカものアニメが、どんどんCGに切り替わっていくだろうとも感じていました。当時は、まだ手描きのメカ作画も多かったですが、制作現場で「どんどんメカを描ける人が少なくなってきている」という話も散々耳にしていたので、これは商売になるだろうと思っていましたね。
――日本のCGアニメ創世記から、CG制作に携わってきた井野元さんならではの先見の明ですが、設立当初はどんなスタジオにしたいと考えていましたか?
井野元
「やるからには品質重視」と「CG制作としての立場を確立すること」です。
これは現在の制作現場でも同じですが、作画さんのコンテをそのままCGに置き換える仕事は、会社としてやりたくないという反骨精神みたいなものですね。
もちろん、アニメーターさんの作画には参考にすべき点がたくさんあります。だからといって作画さんの表現に沿ったものだけを作っているだけでは、CGがダメになっていくという危機感がありました。
CGと作画は違います。だから作画の手法がそのまま通じませんし、CGの動きは紙では描ききれません。
しかし、当時はCG制作がアニメの現場に入り始めた頃で、カットの制作方法も会社によってバラバラ。発注する側もCGの知見が乏しいので、「CGだったら、もうちょっと違う表現が可能ですよ」とこちらが提案しても、意見が通りづらかった。
結果、作画の手法にならわざるを得なくなるんですが、そうするとCGの特性を殺すカットになってしまう。それは、あまりやりたくないんです。
だから、許される範囲内で、アクションをつけたり芝居をつけたりしていました。私が手がけた作品は、どれも作画の指示通りにやった試しはほぼないと思います(笑)。
→次のページ:『宝石の国』で変わった制作体制