「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.8 サンライズ
世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。
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1979年に誕生、以来40年近くにわたり続く『ガンダム』シリーズは、日本のアニメ界を代表する作品だ。ガンダムを生み出したのは、東京都杉並区上井草に本社を持つサンライズである。
設立から46年、これまでに数え切れないほどの傑作を世に届けてきた。近年は『ラブライブ!』シリーズや『コードギアス』シリーズなどのヒット作がある。『ガンダム』シリーズも『ガンダムビルドダイバーズ』や『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』などさまざまに展開する。
2018年夏には、数々の映画を世界的大ヒットに導いてきたLEGENDARYとのハリウッド実写版企画も発表され世界を沸かせた。
そんなサンライズは、どうやって作品を生みだし、作るのか。『テイルズ オブ ジ アビス』、『犬夜叉 完結編』、『機動戦士ガンダムUC』、『ガンダム Gのレコンギスタ』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』等、多くの作品を手掛けてきた執行役員IP事業本部第1企画制作部ゼネラルマネージャーで、第1スタジオのプロデューサーでもある小形尚弘氏にお話を伺った。
サンライズとはどんなスタジオなのか? その強さの秘密は? そして今後ファンとどうやってつながっていくのか?
[取材・構成=数土直志]
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■企画誕生! サンライズアニメはこう生まれる
――サンライズの立ち上がりからお話いただけますか。
小形
もう40年以上の歴史があるスタジオですから、その変遷はとても複雑です。
僕の入社はちょうど『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』をやっていた時期、1997年で20年ぐらい前になります。
最初は創映社として1972年に設立されて、その後1976年に日本サンライズとして事業拡大しています。日本サンライズからいまのサンライズになったのは1987年です。
その後、1994年にバンダイナムコグループ、当時のバンダイグループの一員になったのは大きな変革だったと思います。
――最初の作品は?
小形
最初は東映動画さんや東北新社さんから受託した作品が多かったのですが、自社オリジナル作品の最初となるのは1977年の『無敵超人ザンボット3』ですね。そして1979年に『機動戦士ガンダム』が放送開始しました。
――それ以降、現在まで数々の作品を生みだし続けています。そうした企画はどうやって立ち上がるのでしょうか。
小形
企画や作品の成り立ちにはいくつか種類があるんです。まずガンダムといったバンダイナムコグループの重要なIPの映像化です。マーチャンダイジングや映像ビジネスをグループ全体でどう展開していけるかが肝なんです。
最近は『ラブライブ!』シリーズのようにグループ外の会社とも連携する企画もありますし、あとは原作もの。
たとえば『犬夜叉』では小学館さんや読売テレビさんと一緒にやっていく。スタジオのプロデューサーが次の作品をどう作っていけるのか、タッグを組むクリエイターがどういう作品を目指したいかをすり合わせながら企画していってます。
――ガンダムの話がでましたが、ガンダムというよく知られたコンテンツで常に新しい企画を出していく苦労はありますか?
小形
長く続いているので、伝統は大事にしないといけません。ただそれだけだとお客さんの年齢がどんどん上がっていってしまい、若い人たちが入りづらくなってしまう。
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(以下、『オルフェンズ』)や『ガンダムビルドダイバーズ』(以下、『ビルドダイバーズ』)は、昔から応援してくれる人たちを大事にしつつも新しい切り口で展開したことで、若い世代の方々にも受け入れていただいています。
一方で『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』(以下、『UC』)だったり、11月に劇場公開した『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ) 』(以下、『NT』)は、どちらかと言えば昔からのファンを大事にした作品を目指しています。
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――小形プロデューサーが直接手がけた作品でいえば、『UC』がとてつもないクオリティで驚きました。なぜこんなすごい作品が可能になるのですか?
小形
『UC』はイベント上映という形で始まったのですけど、ガンダムOVAの血塗られた歴史というか(笑)。
僕が入社した時で『Endless Waltz』、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』。その前は『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(以下、「0083」)。錚々たる面々によるハイクオリティな作品があるからこそのプレッシャーがあります。クリエイターも、制作も下手なものは出せないと。
――そうした心意気がいまのガンダムブランドを支えて続けているわけですね。
小形
そうですね。『0083』は今みてもすごいなと思います。とても普通では描けないし、しかも当時はセル画でやっていたんですから。
――新しいオリジナル企画、最近では『ラブライブ!』もそうですし、2006年から続く『コードギアス』も。ああいった企画は、どうやって生まれるのですか?
小形
「サンライズはオリジナルの作品を作る会社だ」と先輩からずっと教わってきて、自ずとみんなにそのDNAが染みついている。
オリジナル作品の企画から制作までできて一人前のプロデューサーという気概はありますね。オリジナル作品の権利を持ってビジネスをしていくのはサンライズならではの特徴だと思うんです。
――プロセスとしてはプロデューサーが企画を立てて、会議に出すのでしょうか?
小形
そういう場合もありますし、監督やクリエイターからこういうのがやりたいというのもあります。
逆にクリエイター側にも、サンライズなら自分のオリジナル作品をやれる可能性があると思ってもらえるのは大きいはずです。
――もうひとつ大きなジャンルとして原作ものがありますね。
小形
実は原作ものはハードルが高いんです。ただサンライズが原作ものをやる時は、そのまま100パーセント再現するではなくて、何かしらプラスアルファを入れて、サンライズらしい映像化をしろという教えがあります。
例えばプラスアルファでアクションに力をいれましょうとか、ストーリーのこの部分を掘り下げましょうとか。自分たちのオリジナル物を組み立てるのと同じような方法論で制作しています。
マンガでの描写とアニメーション映像での描写は違いますので、その違いを大切にして原作者さんや編集サイドと話をしながら、その中でサンライズのオリジナル性を出せるように意識しています。
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