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なぜポリゴン・ピクチュアズは、3DCGアニメ業界の先駆者になれたのか? 創業35年の歩みと展望を聞く

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第5弾は、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹プロデューサーにインタビュー。いまも挑戦を続ける同スタジオのこれまでの歩みと今後の展望を訊いた。

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なぜポリゴン・ピクチュアズは、3DCGアニメ業界の先駆者になれたのか? 創業35年の歩みと展望を聞く
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『シドニアの騎士』の挑戦 そして『亜人』から『GODZILLA』まで


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

――『シドニアの騎士』の作品選定はどういったかたちだったのですか?

守屋
まず知り合いをつたって講談社さんに相談しました。講談社さんからは「ポリゴンは『トランスフォーマー』や『スター・ウォーズ』のアニメシリーズを作っている実績があるから、日本の深夜アニメに参入するなら、SFロボットものを第1弾にするのが視聴者は分かりやすいよね」というアドバイスをいただきました。
ポリゴンとしても「世界で受け入れられる作品を作りたい」というのがあって、海外でも人気の弐瓶勉先生のマンガ作品『シドニアの騎士』をアニメ化するのがベストだという判断になったんです。

ちなみに当時アニメ化の許諾をいただくために、「セルルックCGで深夜アニメのシリーズ作品を作るのは初めてなのですが、ポリゴンを信じてアニメ化を許可してください」という無茶な話を、原作者の弐瓶先生にもしたんです(笑)。
シドニアで副監督を務めた瀬下寛之さんや、プロダクションデザイナーの田中直哉さんが休み時間に描いてくれた、大量のシドニアのスケッチをご覧いただき、なんとか熱意を伝えてアニメ化の承諾をいただきました。

――『シドニアの騎士』では、日本で初めてNetflixで配信をしたことも話題になりました。

守屋
2012-13年当時、日本の一般的な2Dアニメ作品の海外ライセンス販売の金額は、あまり高くありませんでした。Netflix ジャパンもAMAZONでの配信などもなかったころで、各国での日本アニメの売り先はほぼ決まっていたんですね。

『シドニアの騎士』は、当社も出資し、アメリカのセールス窓口を担当することになっていました。
ポリゴンはアニメのライセンス活動の実績もない代わりに、しがらみもない。そこで、これまでと違ったアプローチをして、大きなマネタイズができないか検討しました。
そして「アメリカではNetflixという配信サイトが凄く伸びているらしい。これまでの常識にとらわれずにアプローチしてみよう」という話になったんですね。

このときは、それまでに培ったアメリカの人脈が生きました。何人かを経由して、Netflixの方と会って直接話をできるチャンスを得たんです。
そうしたら担当者は僕らが制作した『トロン:ライジング』をよく知っていて、「これからアニメに力を入れていきたいし、ポリゴンの制作クオリティは信頼している」と言ってくれました。
こうして『シドニアの騎士』は、Netflixが欧米地域をまとめて契約した第1弾のアニメになりました。

――『シドニアの騎士』の後に『亜人』の制作と続きます。

(C)桜井画門・講談社/亜人管理委員会

守屋
シドニアは制作途中でしたが、キングレコードさんや講談社さんにシドニアの試作映像をご覧いただいたところ、感動してもらえまして、『亜人』の話につながったんです。
『亜人』は場面転換の多い現代劇のロードムービーで、CGで描くには大変な作品です。でも、日本アニメでは新参者の我々ですから、シドニアだけで終わらせないように連続でリリースしていく必要があり、なんとか社内を説得し制作をすることになりました。

一方、『シドニアの騎士』シーズン2の監督作業で忙しかった瀬下さんにもお願いして、総監督になってもらいました。
瀬下さんとは「世界各国で支持されるように、ドキュメンタリータッチのサスペンスアクションとして描くのがいいんじゃないか」といった作品コンセプトの相談をしましたね。
いわばアメリカのTVドラマ『24 -TWENTY FOUR-』シリーズのような緊張感のある雰囲気のアニメにしたかったんです。

――2014年には、宮崎吾朗監督の『山賊の娘ローニャ』も制作していますよね?

守屋
『シドニアの騎士』を制作中のころ、スタジオジブリから連絡をいただきました。元ジブリで『もののけ姫』などの美術監督を務められた田中直哉さん、また、『ハウルの動く城』などのデジタル作画監督を務められた片塰満則さんが当社にいたこともあって、スタジオジブリの鈴木敏夫さん、宮崎吾朗さんに声をかけていただいたんです。
宮崎吾朗さんが「CG作品にチャレンジしたいので手伝ってほしい」と。当社としてはジブリ的なタッチをCGで表現するのは難しそうだけれど、『亜人』のとき同様、「とりあえずチャレンジしてみましょう!」と制作を決めました(笑)。

本作は「制作協力:スタジオジブリ」となっていますが、実際、プロダクションデザインなどジブリさん主導で進めています。今思えば、スタジオジブリと他のスタジオが協力して作られた作品は日本でも多くないので、思い出深い作品になりましたね。

こうしてシドニアも含めて、2012~14年ごろには、日本のセルルックアニメーションシリーズをほぼ同時に3本作ることになったわけです。
さらに弐瓶勉先生原作の『BLAME!』の制作が決まり、『シドニアの騎士』をご覧いただいた東宝さんが声を掛けてくれて『GODZILLA』三部作の制作も決まりました。

(C)2018 TOHO CO.,LTD.

守屋
短期間で日本的なセルルックCG作品制作が、当社のアニメーション事業の軸になったわけですが、過去に『プーさんといっしょ』がきっかけとなって、海外TVシリーズを多く制作させていただいたように、『シドニアの騎士』きっかけで多くの作品に携われるようになって本当に良かったですね。

守屋
そういえば去年、セルルックCGで嬉しかった話がありました。元ポリゴンのスタッフがピクサーで働いているのですが、「ピクサーの試写室でポリゴンが制作した『BLAME!』をセルルックCGの勉強に放映したい」と相談してきてくれたんです。
「僕らがピクサー作品と同じものを作るのは難しいけど、逆にピクサーが作れないポリゴンの特徴は何か」と考えることは何度かあったので、この出来事はヒントになりました。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

「コミックやアニメなどの日本で培った文化を制作マインドに持っていて、かつグローバル意識の高いCGスタジオ」という立ち位置は、世界各国の制作スタジオの中でポリゴンのひとつの特徴と考えており、これからも強化していきたい点ですね。

→次のページ:誰もやってないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信
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