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「ペンギン・ハイウェイ」スタジオコロリド初となる長編制作で見えてきた、“デジタル作画”の課題と未来

2018年8月17日に全国公開を迎える『ペンギン・ハイウェイ』より、石田祐康監督とキャラクターデザインを担当した新井陽次郎との対談で、作品制作を振り返ってもらった。

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「ペンギン・ハイウェイ」スタジオコロリド初となる長編制作で見えてきた、“デジタル作画”の課題と未来
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■「手描きとデジタルの混乱を避けるため、チェックの工程を減らした」(石田)


――コロリドは『アオシグレ』を経て『台風のノルダ』や各種CMを作ってきました。短編や中編を作ってきたことが、長編への下準備になっていたのでしょうか?

石田
それはあると思います。Stylosの使い方にも、データの扱い方にも、全てそれまで作品を作ってきた経験が全部活かされているわけですからね。

新井
デジタルとしては下準備だったと思うんですが、いかんせん紙が入ってくると、どうしても越えられない壁が出てきてしまって。

石田  
『ノルダ』の時はなだれ込むように、途中から「このカットは紙でやろう」ということがだいぶ発生してしまったんです。
今回はその時の経験も生かして、デジタルでやるパートとWIT STUDIOさんにお願いする紙のパートをはっきり分けるようにしたり、チェックの工程も3工程から2工程にして混乱を減らすようにしはしたんですが、紙で対応する部分の規模感が大きいのもあってさらなる苦労はありました。

――工程を減らすというのはどういうことでしょうか?

新井
『ノルダ』の時までは、レイアウト→ラフ原画→原画の3工程でそれぞれチェックを入れていたんです。ただそれだと時間がかかってしまうので、その後からは、レイアウトとラフ原画→原画という2工程にしたんです。

石田
『ノルダ』が終わった後に『パズル&ドラゴンズ』のCMをやって、そこで2工程にしていたようだけど、その中でこの方が良いと思ったんでしょ?

新井
そうだね。それに2工程でもできるという確信を得たので、それ以降はやっている感じです。


石田
今回、WIT STUDIO側の演出として亀井(幹太)さん(『冴えない彼女の育てかた』監督など)にお願いしています。
亀井さんと話した時には、「アニメ業界もある時から2工程が主流になってしまって、アニメーターからすると、レイアウトや動きを提案するチャンスが1回減ってしまっているので、正直ちょっとつまらない」という指摘もあって、それはそれで印象的なお話でした。

――チェックの量の問題と、アニメーターの挑戦のバランスをどうとるのか、ということですね。初めての長編作品で、物量についてはどうでしたか?

新井
物量は……淡々と向かい合おうと思っていました。『アオシグレ』のときは熱を持って、つねに燃料を燃やして立ち向かっているイメージがありました。
でも今回は、さすがにそうはできないことは最初から分かっていました。マラソンを走るような長期戦になるので、エネルギーの使い方を考えてやろうと話はしていましたね。

石田
そうですね、でも、そのペースを維持する中でも押さえどころを守るための配分を考える必要はありました。軽いチェックで済ませられるカットと、ヘビーで時間がかかるカットを組み合わせて、1日あたりに上げられるカット数をいかにクリアするのか。そのへんのバランスは結構気を使いました。
でも、よりよいものを作っていくためには、もっともっと僕達には獲得しないといけないものがあるとも感じました。拙いところは自分でも分かってしまう。業界の諸先輩方の作品を観てきた身として、自身の至らなさに恥ずかしくなる瞬間もあります。


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《藤津亮太》

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