「ニンジャバットマン」で海外からも注目、“神風動画”水崎淳平氏が明かす15年の歩みとアニメ制作のポリシー 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「ニンジャバットマン」で海外からも注目、“神風動画”水崎淳平氏が明かす15年の歩みとアニメ制作のポリシー

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」第1弾。神風動画の代表であり、「ニンジャバットマン」の監督でもある水崎淳平氏へのロングインタビューを行った。

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「ニンジャバットマン」で海外からも注目、“神風動画”水崎淳平氏が明かす15年の歩みとアニメ制作のポリシー
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日本のアニメを知ってもらいたい



――今度はスタジオの代表ではなく、監督としての水崎さんに質問をさせてください。『ニンジャバットマン』の監督として、主に海外のアニメファンに伝えたかったことはなんでしょう?

『ニンジャバットマン』を作る時に、すごく強く、一番意識したのは日本のアニメを知ってもらいたいということですね。日本のアニメってこうなんですと。勢いとかノリとか空気とかっていうのは英語の文化圏の人に無理に合わせようとするのではなく、日本アニメの色んな良さを紹介していくような構造にしましたね。

日本の原作がハリウッドで映像化されるケースが増えてます。けっこう大胆にアダプテーションされている作品も多いなと。さて今回、バットマンを預かりますという時に、同じように「郷にいれば郷に従え」という意識がありました。

せっかく日本に来てくれたのであれば、土足であがっていいですよではなく、バットマンに対しても厳しめにいこうと。他のキャラクターも英語を話しませんし、バットモービルや通信システムで勝とうとするんですけど、それではダメだというくだりになっています。やはりその時代の日本のやり方で戦ってもらう。「郷にいれば郷に従え」というのがストーリーのテーマにもなっていると思います。

DCコミックスさん、ワーナーブラザースさんにも任せてほしいと言いました。日本という国で全力でアニメを作るから待っていて欲しいと。大事なバットマンをしばらく預かりますが、失礼なことはしませんよとお伝えし、アニメを制作しきってお返ししました。あれを許してくれたDCさんは寛大ですね。

アナハイムのワンダーコンで『ニンジャバットマン』を全編上映したときに、(ファンに)怒られるんじゃないかと思っていたんです。でも、ここで笑って欲しい、盛り上がって欲しいという箇所がこちらの意図とまったく一致していたんです。バットマンって長い歴史があって色んなバットマンがあるんですよ。実はとてもユーモアがある作品なんです。だから、『ニンジャバットマン』に盛り込んだユーモアがちゃんと伝わったんだという嬉しさがありました。

素晴らしいアイデアとは



――この取材企画の前に「日本のアニメクリエイターに何を聞きたい?」という事前アンケートを海外アニメファン300名に対して行いました。その中で一番多かった「素晴らしいアイディアはどのように生まれてくるのか」という質問にお答えください。

アニメを作っている人は素晴らしいアイディアだとは必ずしも思っていないんじゃないのかな。作り手の価値観や「自分はこれが素敵だと思うこと」を恥ずかしがらずにドンと出したものが、結果的に受け手にとって素晴らしいものになるんだと思います。

あとはお客さんの状況や目線を意識してアイデアを生むようにはしています。YouTubeで流れるのか、劇場で観るものなのか。例えば『ポプテピピック』だと少し難易度の高いネタを仕込むと、ネタを知っている人と知らない人の間でコミュニケーションが生まれますよね。だから『ポプテピピック』のオチがない部分をより濃くしてやろうと。見た人がツッコミ役で、そのツッコミをSNSで共有してもらうような映像にあえてしてますね。

それと僕はモチベーションという単語を禁止しているんです。モチベーションは高くて当然なんです。それが才能です。そういう人じゃないと向いてないんですよ。モチベーションを求める人はアニメ作りに向いてないと思います。アニメは作り手がドライブしていかないと面白くはならないんです。


スピルバーグは僕を大人にさせてくれない



――海外のクリエイターで影響を受けられた方はいますか?

まず、ミュージックビデオ出身で『エターナル・サンシャイン』の監督ミシェル・ゴンドリーさん。ミュージックビデオから長編映画まで羽ばたいていくドリームのある過程はもちろん、作品がいいんですよ。『Come Into My World』とか。シンプルなアイディアなのにずっと見ちゃうんですよね。

あとはブラッド・バードさん。『アイアン・ジャイアント』は素晴らしいと思っていて。もともと『ザ・シンプソンズ』を担当されていて実写映画『ミッション:インポッシブル』の監督までやられるのも凄いなと。元々『ザ・シンプソンズ』がすごい好きだったんです。

あとは、本当にベタなんですけどスティーブン・スピルバーグ監督。小学校1年時に僕の父親が近所の友人みんなを連れて『E.T.』に連れて行ってくれたんです。『E.T.』は大ヒットしましたけど、うちの町内はさらに『E.T.』がブームになりました。あの雰囲気とか世界観。ヒヤヒヤするし怖いんだけど夢もある。『E.T.』の絵はたくさん描きましたね。『E.T.』の顔のしわとか。ちょっとずつ影響を受けてて。『ジュラシック・パーク』や『マイノリティ・リポート』とか。
僕を大人にさせてくれないのがスピルバーグ監督。『レディ・プレイヤー1』にガンダムが出てきた時、あれは小学校1年生に戻りましたね。

ガラパゴスな日本のアニメの魅力を楽しんでほしい



――最後に、世界のアニメファンに一言お願いします

水崎
日本のアニメは高い水準を今のところ保っている状態ですけど、これが維持されるかどうか。ちょっと危惧している部分があるんですよ。日本のアニメ業界にパワーがなくなってしまうのではないか。

その中で「日本のアニメはまだやれる」っていう強いところを世界のファンにも届けなければ、というすごい強い思いがあって、そこはもしかしたら『ニンジャバットマン』の中で「意地」みたいなものが出ちゃったんじゃないかとも思っています。

僕はガラパゴスという言葉が好きなんですけど、日本は島国ですし、これまでの歴史も含めて変わった持ち味を持った国だと思うんです。国境もないですし、国際協力に必ずしも慣れていない。上手ではない。

でも、ガラパゴスはいつまでも面白いと思うんです。だから国際基準にあまり振り回されすぎずに、僕らは僕ららしく真面目に作品を仕上げていくことが大切だと思います。

世界のアニメファンの方々に、またあのチームの作品が見たいと言われることがあれば、ぜひご期待に添いたいですね。
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