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「ニンジャバットマン」で海外からも注目、“神風動画”水崎淳平氏が明かす15年の歩みとアニメ制作のポリシー

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」第1弾。神風動画の代表であり、「ニンジャバットマン」の監督でもある水崎淳平氏へのロングインタビューを行った。

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「ニンジャバットマン」で海外からも注目、“神風動画”水崎淳平氏が明かす15年の歩みとアニメ制作のポリシー
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“妥協は死”に込められた想い


神風動画の座右の銘「妥協は死」。出された湯呑にもこの言葉が彫られていた

――スタジオ立ち上げから一番大変だった時期はいつでしょうか

水崎
今は監督というポジションでみんなに経験や場を与える立場にいますが、自分が最前線に立っていた頃ですね。

世間的に認められていないアニメ制作の手法を全面に押し出そうとしていたので、自分自身が一番多くCGカットを担当している状態。その作業量の半端なさというか。21日間、体を横にして寝なかったときもあります。

その当時、アニメーションを使ったあるミュージックビデオの仕事で「ここを乗り越えると神風動画の立ち位置が変わるぞ」というターニングポイントがあったんです。
その作品の中で最後の最後、ワンカットだけ諦めた部分があるんですよ。普通の人が見ても誰も気づかない部分なんですが。致命的なミスというものではなく、最高品質で書き出すだけだったんですが、本当に倒れかけていたんで、そのまま通してしまったんです。普段は絶対にやらないんですが。

でも後々、色んな機会でそのカットを見るたびに、ソワソワしちゃうんですよ。僕にしかわからないんですけど、もう少し綺麗にできたなと思ってしまう。それを見るたびに気が弱くなっちゃう。堂々といけなくなってしまう。誇りをもってみんなで作ったものなのに、そこだけ後ろめたさを感じてしまう。

「あ、これは死んだな」と。妥協したものは死ぬんだなと。「妥協は死」という言葉には、妥協するなという意味でも、妥協するなら死ねという意味でもなく、作品を死ぬまで背負う覚悟がありますか?という意味が込められていますね。


満たされた人が描く個性を見たい


水崎
ワーストカットのボトムアップという話が出たんですけど、日本のアニメ業界全体に対しての見方も同じで「日本のアニメ業界はこうである、これが常識である」という考え方はイヤなんです。

(編集部注:日本ではアニメーターの低賃金や労働環境が社会問題として取り上げられることが多い)

神風動画のスタッフみんなが必要とする環境は揃えよう。必要になる金額は制作時にもらい受けよう。ここは決めています。神風動画では夜中まで残っているスタッフはいませんし、タイムカードを切った時間で残業代もつきます。当たり前のことですが、これを普通にしたいと思っています。

ちゃんと食べて、楽しんで、親孝行して、休みを取って好きな作品、漫画や映画を観ることができる満たされた人が描く個性で、日本のアニメがどう変わるかを見ていきたいと僕は考えています。

絶対の正解なんてない



――どんな経験から、そのような組織作りを考えるようになっていったんでしょう?

水崎
どう作用しているかわからないんですけど、僕ずっと引っ越ししていたんですよ。親が自衛隊で、4年に一度ぐらい転勤が必ずやってきて、小学校も2箇所、中学校も2箇所変わっていて、色んな地域を見てきた中で気づいたことがあるんです。

大人って絶対正解ではないなと。小学校ごとにやり方も違う。中学校の時もそうです。同じ教科でも考え方の違う先生がいて。でも、どこも先生は絶対正しいと言って従っている。もしかして、理不尽なことって大人によって与えられるのかなって見方をするようになって。そこに組織づくりの理想を考えるベースがあったかもしれません。

上の人間はどうあるべきかとか。自分も理不尽の元凶になっている場合があるかもしれないとか。そうならないようにどうしたらいいか。ずっとずっと模索しながら、会社を育ててきました。

だから他の人と大きな違いは、いわゆる故郷がないこと。故郷に帰るっていう意識がないんです。僕は”ここ”に帰るがないからこそ、”ここ”が欲しかったのかなって。このスタジオはそんな場所なのかもしれません。
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