「さよならの朝に約束の花をかざろう」岡田麿里監督インタビュー ファンタジーの世界で“親子”を描いた理由とは 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「さよならの朝に約束の花をかざろう」岡田麿里監督インタビュー ファンタジーの世界で“親子”を描いた理由とは

劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』より岡田麿里監督にインタビューを敢行。緻密な心情描写でときに視聴者の心をえぐり、多くの共感を得てきた岡田麿里が描く“親子”とは。母親をどのように捉え、監督として映像に落とし込んだのか、話をうかがった。

インタビュー スタッフ
『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA 全 6 枚 拡大写真
■石見舞菜香さんの声を聴いて「見つけた」と思った

――多彩なキャラクターたちはどのように生み出していったのですか?

岡田
物語の中にいくつものラインがあり、そのライン上にいるキャラクターが自由に動いていくことで、結果としてマキアとエリアルの物語に重なっていくような作りにしたいな、と。もともと、何気なく起こった些細な出来事が後々に影響を与えていくといったものが好きなんですが、TVシリーズはオリジナル作品であっても、その話数ごとにパッケージ感が必要になって来て。分かりやすさを求めると、どうしても一本筋になってしまう。
それに加えて群像劇になると、一人のキャラクターにどれくらい時間を割くかで随分と印象が変わってしまいます。監督をやらせていただけることで、今回は脚本家として参加する作品よりもキャラクターの動線を自分で管理できるなと思いました。

――特に思い入れのあるラインや、生み出すのが難しかったキャラクターは?

岡田
一番難しかったのはやっぱりマキアとエリアルです。本当の親子ではなく、見た目のバランスもどんどんいびつになっていく。葛藤もそのぶん特殊になっていくのですが、それでも普通の親子に起こる感情や、大切に思う誰かと触れあうことでうまれる感情と、自然にリンクできるところはないかと探しました。そのバランスはすごく難しかったですが、書いていてやりがいを感じるものでもありました。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
――マキア役の石見舞菜香さんの演技はいかがでしたか?

岡田
最初にオーディションでお声を聴いたとき、オーディションシートに「見つけた」と書いたのを覚えています。すると、オーディションに参加したスタッフ皆が「見つけた」と思っていたみたいで、ちょっと盛り上がりましたね。
マキアは少女らしさを残しながらも、長寿ですから人生経験も重なっていき、大人の女性の感覚も付随してほしいキャラクターでした。純粋さと潔癖さだけでなく、芯の強さみたいなものが欲しくて、石見さんはそのバランス感が素晴らしかったです。
オーディションのセリフに、マキアが子どものエリアルに対して怒るシーンがあったのですが、それがとても良くて。その怒りは、エリアルに怒りたいというよりも、自分がいっぱいいっぱいになってしまう苛立ちなんですよね。オーディションに参加された他の声優さんは、セリフそのものがキツめだったので、キャラクターを救う意味でちょっと調整をして可愛く振ってくださったりしていたんです。でも石見さんは、「同じように怒られた経験があるんじゃないか」と思うくらい自然で。
制作現場にも一度、足を運んでくれて、キャラクターデザイン・総作画監督の石井百合子さんとも話してくれて。アニメは絵と声がひとつになって一人のキャラクターになるので、おかげですごく生きたキャラクターになりました。

――エリアル役の入野自由さんは、『あの花』では主役の宿海仁太(じんたん)役を担当されていました。今回のキャスティングはどういったお考えからだったのでしょうか?

岡田
本作はファンタジー世界なので、設定的にはありえないんですけど、気持ちは現実と地続きなものを描きたかったんですね。そういう意味でマキアは気をつける必要がありましたが、エリアルのほうは本当に普通の男の子であり、そこは絶対にズラしたくない点でした。
内に入っていきがちな、繊細さをもった普通の男の子の声って誰がいいんだろうと思うと、私の中では入野さんで。正直、書いているときからイメージはしていました。とはいえ、入野さんはじんたんのイメージもやっぱり強くて、「どうしよう……」と悩んだんです。でもオーディションで演技を聴いたら、「やっぱり入野さんだ」と思ってしまいました。入野さんの繊細さや、ちょっとやんちゃな感じが絶妙で、聴いた瞬間からエリアルがそこにいました。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
――先ほど篠原副監督やキャラクターデザイン・総作画監督の石井百合子さんのお話が出ましたが、キャラクター原案の吉田明彦さん、コア・ディレクターの平松禎史さんらは初めて一緒にお仕事をされたとうかがいました。このお二人はどういった経緯で参加されることになったのですか?

岡田
吉田さんはもう、ホントにファンだったので(笑)。田中将賀さん(『あの花』『ここさけ』でキャラクターデザインを担当。本作にも参加している)もファンだと言っていましたが、私たちの世代は吉田さんのキャラクターにどうしても惹かれるものがあって。また今回は劇場アニメということで、キャラクターはシンプルに、時代に左右されないデザインを求めていたので、吉田さんはピッタリでした。そこに石井さんの優しさや繊細さが合わさり、お二人の男女差がうまく合致するんじゃないかと思い、原案をお願いしました。
平松さんはもともと、憧れのクリエイターでした。今回は、制作スタジオのP.A.WORKS代表でラインプロデューサーも務めてくださった堀川憲司さんがお声がけをしてくれて。堀川さんが現場プロデューサーをするのは本作が最後なので、今までご一緒されてきたクリエイターさんの中で思い出深い「この人は」という方を集めてくださいました。メインアニメーターの井上俊之さんも本当にたくさんのシーンを描いてくださって、本当に恵まれた作品だったと思います。皆さんの堀川さんへの信頼を感じました。

――平松さんから岡田監督に贈られたアドバイスなどがあったら教えてください。

岡田
平松さんは作家性で現場を引っ張ってくださる方で、一緒に「これがいいね!」と盛り上がってくださる感じでした。平松さんは作品に対してとても真摯な方で、すごく勉強になりました。監督としてわからない点や実務的な面は、副監督の篠原さんに教えていただきました。制作の過程で、「こうしたい」というアイディアがスタッフからどんどん生まれてくるのですが、やはり現場に負担が掛かってしまって。そんな時も、篠原さんが支えてくださいました。
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《奥村ひとみ》

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